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大罪を犯すことが条件

「なん……だよ、これ!?」


 教がそう叫び声をあげる。


「凄まじいな」


 俺もつい、ぽつりとそう口にこぼす。

 そんな異質な光景。

 そこにはズラリと……見たことのある顔がズラリと並んでいる。


「さっきの男じゃな」


 狐日バベル、社長室でサファイアに滅茶苦茶にされた男の顔がざっと13……麻縄で首をくくられ無機質な表情のまま天井から吊られている。


「縄の数は24じゃな」


 サファイアの言う通り縄の数は24……だがそのうちの11本は狐日が吊られておらず枠が開いている。

 俺は吊られている狐日の体に触れる……死体の様に冷たい。


「……じゃが、死体ではないようじゃ」


 吊られている体の瞼を指で開け、そういうサファイア。


「そうか? 大分冷たいが」

「……少しスマホを貸せ」

「ほら」


 俺はスマホを渡す。

 するとサファイアはスマホのライト機能をONにし、開けた目に光を照射する。


「うむ、やはり死体ではない……光に目が反応しよるからな」

「縮瞳が起こってんだったら生きてるか……こんな有様なのに」


 どう見ても首吊り死体で体温も無く、筋肉も硬直している……だというのにこいつ等は生きている。

 光を当てた際の目の縮小がそれを証明してしまっている。


「ふーむ、しかしここも仏壇が無いな……これではショーケースをぶっ壊せんぞ」

「こんな死体置き場って感じなんだから、仏壇の一つや二つや三つぐらいあってもいいよな」


 まぁ、死体は一つも無いのだが。


「わーはっはっは!! そこまで知っていたのかい!!」


 拍手の音と共に、背後から先程も聞いた渋い声がする。


「君達は一体何者なんだい? 星守かい? それとも第三勢力か……答えてもらおうじゃないか、当然黙秘権なんてものは存在しないよ」


 後ろを振り向けば教の首を"左手"で掴んだ狐日がそこにはいた。


「……いつからいたんじゃ?」

「最初からだよ、君達がエレベーターを動かした時からずっとね」


 教は気を失っているようで、力なくうなだれている。


「見た所腕が治っているようじゃが……なぜじゃ?」

「わっはっはっは!! こちらは一つ質問に答えたんだ、そちらが次に答えてから聞くのが礼儀ではないかな?」

「……………いいじゃろう、質問は何じゃったか?」

「君達は一体何者か……だ」

「そうじゃな……儂はこっくりさんの作成者じゃ」

「ほう」


 自分のスーツのポケットに手を突っ込んだ狐日は、ショーケースに収められていた石像を取り出した。


「私の知る限りこいつは安倍晴明の遺物なのだがね……それの作成者となれば優に1000歳は超えていることになる。到底そんな様には見えないのだがね……お嬢さん?」

「『ケガレオトシ』に属しとるなら宇宙人の存在ぐらい知っとるじゃろ?」

「なるほどな……であればそこの畝観貿易のご子息様は協力者か」

「そういう事じゃな」

「これは驚いた、まさか畝観貿易と宇宙人が繋がっていたとはな」


 まあ俺が個人的につながっているだけなんだが。


「それではこちらも質問に答えてあげよう……なぜ左手が戻っているかという話だが、それはそこに並んだ肉人形達に関係している」

「ほう、興味深い話じゃ」

「私は人間を私の形に整えることが出来てね……当然脳味噌やらもコピーされるわけだからそれで生み出されるのは私そのものなのさ。当然洗脳対策で一部の情報は頭から抜いてあるのだがね」

「つまりあれか、儂が撃ったのは操られた奴で。与えられた情報も一部じゃった訳か」

「物わかりのいい宇宙人だ」


 拍手をしながらそういう狐日。


「ではこちらから質問……いや、提案だな」

「提案じゃと?」

「容易く受け入れられる様な提案だ……協力関係を結ぼうじゃないか」

「……信用は出来んな」

「圧倒的優位状態を保っているというのに、こうして対話をしているという点は感が見て欲しいものだがね」


 教の首を少し持ち上げて言う。


「いいじゃろう、少しだけ信用のパラメータを上げよう……それで一体何を求める」

「簡単な事さ……君達も知っているだろう、バードという奴を」


 口元に少しの笑みを浮かべ、狐日は言う。


「奴が目障りでね、だが私では奴を殺すことは出来ない」

「何じゃそんな事でいいのか、儂も奴はいつか殺すつもりじゃったから全然いいぞ」


 本当にいつまで閉じ込められたこと恨んでんだこいつ。


「じゃが儂らがここに来た理由は覚えとるか?」

「分かっているとも、協力をするんだ……当然脳味噌にするのはやめておこう」


 という訳で俺達は協力関係を結んだ。

 いろいろ言いたいことはあるが、サファイアがそうするというならそうしよう。

 ……しかし。


「そう言えば、俺も一つ聞いていいか?」

「何についての質問かな?」

「俺も教もAIこっくりさんを使ったんだが、何で典だけぶっ倒れたんだ?」


 偶々か、はたまた女性の脳味噌じゃなければいけないのか……俺に考えられるのはこのぐらいだ。


「ああ、聞きたいかな?」

「……………まあ、そうだな」

「企業秘密だが、特別だ」


 ……………こいつ、本質が多分サファイアと同じなんだ。

 教えたがりで説明したがり……天職が教師なタイプ。


「あの返答機を作る際にね、特定の条件を満たした」

「あれを使う際に条件なんざ無いはずじゃが? 持って呪文を唱えるだけじゃし」

「確かにそうさ、だがバグが起こってね……直接触らせるのと間接的に触らせるのでは齟齬があったらしい」

「その齟齬を消すためにその条件を満たさんといかん訳か」

「そういうことだ」


 つまりそうか……条件を満たす人間を自動的に収集するために魔術で気絶させ病院の経営数を増やしたという訳か。


「ふーん、じゃあその条件ってのは何なんだ?」


 俺は何気なくそう問いかける。

 狐日は少し考えたようなそぶりを見せた後、やはり笑みを浮かべながら答えた。


「人を殺すことさ」

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