風呂
廊下へと出て仏壇を見る。
手前か順に階段と扉が二つ。
「二階は後じゃ、まず一回から調べるぞ」
「オッケー」
手前の扉を開けるとトイレだった。蛇口をひねるが水は流れない。
便座を開けて中をのぞいたり、蓋を外したりしてみたが特に何もなかった。
「……まあここに無くて良かったわい、いくら何でも体がトイレに入っとるとか嫌じゃし」
無かったことに安堵したのかサファイアは次行くぞ、と言って次の扉を開ける。
「お、風呂じゃ」
扉に一目散に入ったサファイアのそんな声が聞こえた。
俺は扉へ手を掛ける前に仏壇を見る。
仏壇は廊下にちょうど収まるような大きさで、背の高さは俺以上だ。仏壇には複数の小さな引き出しがあったが、中には何もなかった。仏壇の中央には堂々と俺の顔ぐらいの大きさをした仏像が鎮座しており、こちらへとほほ笑んでいる。
「ふーん、これ大分いいやつだな」
仏像を手に取ってその精巧さに感心する。おじいちゃん家の奴ほどじゃないが、これもなかなかだ。
「何しとるんじゃ、早こい!」
「ああ、悪い悪い」
せかすサファイアの声に反応し、俺は仏像を元あった場所に満杯の水が入ったコップを置くかのように戻した。昔仏壇で遊んでたらおじいちゃんに滅茶苦茶叱られたのでこういうのは丁寧に扱うようにしているのだ。
扉を開け、右に曲がると大きな空間があった。
広い脱衣所だ、洗面台がありその隣には洗濯機があった。そして洗面台を正面に据え、右手を見ればもう一つ扉があり少し開いている、隙間からはシャワーと浴槽が見えていた。
つまり脱衣所は90度傾けたLの形になっており、ちょうどキッチンの裏側に浴室があるわけか。
「おお、この洗濯機乾燥機付きじゃぞ」
「へえー」
俺は洗濯機をベタベタと触り、中に入ったりしているサファイアを横目に洗面台を調べていく。洗面台の蛇口の隣にはうがい用のコップと、隣には三本の歯ブラシと歯磨き粉があった。次に鏡部分の扉を開ける、小物を置けるようになっており中には櫛や目薬、まだ未使用の歯ブラシが四本。
「ないな、そっちはどうだ?」
「見つからんの」
洗濯機を蹴っ飛ばしそう言うサファイア。
「次は風呂じゃの」
そう言って風呂の扉を全開にする。
「……思っとったより狭いの」
ポツリとサファイアが呟いた。
「そうかぁ? 十分広いと思うが?」
「うーん、そうかの?」
うちの家のやつより大きい。
浴槽なんか俺が大の字で寝そべることが出来るほどの大きさだ……これで小さいならもう温泉でしか満足できないだろ。
「取り敢えず調べるかの」
「つっても何処調べんだ? 風呂桶ひっくり返してが何も無いぞ」
俺は手に持った桶を投げ捨てそう問いかける。
「換気扇とかかの、ほれ肩車じゃ」
「え、俺のこと持ち上げられんの?」
「何で儂が下なんじゃ、貴様が下じゃわ!」
「あ、そうなの」
俺はサファイアを肩に乗せる。
「ありそうか?」
「なさそうじゃ」
「じゃあ次は二階か」
「じゃな」
俺はサファイアを下におろす。
「……しっかし、ここめっちゃ暗いな」
「単純に電気ついとらんし、あと窓から光が入っとらんからなぁ」
風呂の入り口がある壁から見て左の壁に小窓が一つあるだけで、見えるのは後ろの家の壁だけで光は入っていない。入口の対面、つまり庭側に一つでも窓があれば光が少しは入るだろうに。
「ま、とりあえず次行くかの」
俺達が風呂から出ようと入り口へと目を向けた時、キーッとい音が聞こえた。
何事かと思い音の方を見れば、シャワーの蛇口がゆっくりと捻られていた。
少しすると、ジャーッという音と共にシャワーから水が出始めるが……しかしそれは普通ではなかった、赤いのだ。
「おいおい、お化け屋敷かよ」
「文字通りお化け屋敷じゃ」
「そういや本物だったわ」
俺は流れ出る真紅の液体に指先で触れ、臭いを嗅ぐ。
少し錆臭い匂いがする。だがしかし、水道が錆びているからこんな物が出ていると言うわけではないだろう……そもそも水は通っていないし、水はこんなにドロドロとしていない。
「こりゃ血じゃな」
俺が言わんとしたことをサファイアが言った。
「やっぱりかぁ、触っちまったよきったねえ」
「いや、何かもわからん状態で触るのはイカれとるぞ」
クッソ、脱衣所にタオルあったしそれで拭くか。
俺はそう決めて、シャワーの蛇口を閉める。そうすると流れは止まり何もでなくなった。
「うっし、次行くか」
「そうじゃの」