格闘戦において最強
「馬鹿め」
争いの火ぶたはそんなサファイアの一言で切られた。
サファイアがそう呟くと机が宙へと浮く。
足元を見ればサファイアが机を蹴り上げ銃からの遮蔽として機能させたようだ。
「ッ小癪な!!」
いつの間にか机の下に潜り込み狐日の懐へと潜り込む。
「なッいつの間に!?」
意識が別の方向に向くと、見なければならない物を見れなくなる理屈。あの警察官たちにやったのと同じものを再びしたのだ。
「間抜けが」
サファイアは銃を奪い狐日を地面へと踏み押し付ける。
ドンッと一発、重たい銃声が部屋に響き渡る。
「ぐぅう!?」
サファイアが狐日の左腕を撃ったのだ。
屈強な腕にテニスボールぐらいの大穴が開く。撃たれた腕を引っ張れば千切れてしまいそうなほどで、血の量はシャレになっていない。
「銃ってやつは結構殺傷能力が高くての、あんまし好きじゃないわい」
人間の血は体内に大体5~8リットル程度、大柄の男だからまあ8リットルだろうか?
そのうちの1.5~2リットルの血を失うとその人間は死ぬ、現在狐日は腕が切れかかっているので大体毎分400ミリリットル程度の出血量だろうか……処置をせず五分もそのままにすれば死ぬ計算だ。
「クっう」
「わっはっはっは、それ狐の鳴きまねかの? 中々似ておるじゃないか……で? どういう了見で儂に銃を向けた?」
目をガン開いて圧をかけるサファイア。
「喋るわけが」
「どうせ防弾チョッキ着とるじゃろ? 二発ほど胸に撃ってみるか……衝撃で血が出て死期が早まっちまうがいいじゃろ?」
「ッ待て」
……後三分半ぐらいかな。
ちょいと横を見てみると、教が青い顔をしながら俺の方を見てサファイアを指さしていた。
「……まあ、あいつああいう奴だし。狐日が死んだときは俺等共犯だ」
あいつはもうブレーキは効かない、効かせられない……行くところまで行くしかないのだ。
「いや、いやいやいや!?」
「取り敢えず誰も来ないように扉塞いどこうか……幸い監視カメラとか無いみたいだしって社長室だしあるわけねえか」
「待って待って!? 何でそんな落ち着いてるの畝君!? 君の従妹人殺そうとしてるんだよ!?」
「え? まあ殺されそうになったし、あいつの基準で殺してもいいルート入ったししゃーない。死んだら弔うからセーフセーフ」
「そういう問題じゃないよ!」
「それよりそのソファー扉の前に置いてバリケードにすんぞ……とっとと手を動かすんだよ」
サファイアの方を見ると、どうやらまだやっているらしい。
「ほーら、バンッバンッと」
二発また打つ……しかしそれは狐日の輪郭に沿うようにギリギリを狙って打ち込んだようだ。
「ふーむ、口が堅いな……もう面倒になって来たぞ」
「だったらとっとと解放しろ」
「おいちょっと、そこの菓子取っとくれ」
「え? これ?」
俺はキューレット入りの菓子をサファイアに渡す……それをすぐさま狐日の口に詰め込み無理矢理飲み込ませた。
「よしこれで喋るじゃろ……じゃ止血するか」
「最初から食わせたらよかったんじゃないか?」
「貴様恐ろしいこと言うな……人の自由意思を奪うなぞ気軽にしていい事ではないぞ?」
どの口が言ってんだこいつ、脅迫は自由意志を十分奪う行為だろ。
淡々と……サファイアは社長デスクにあったライターで傷口をあぶり、ついでにカーテンを千切って患部を覆って止血する。
その間狐日は狂ったように幸福そうな笑顔を顔に貼り付け、目からは滝の様な涙を流していた。違法薬物がダメ絶対な理由がよくわかるいいサンプルだ。
「もっと食わせとくか」
言ってサファイアは残っていた菓子を全て食わせる。
「じゃ、隠してること全部喋れ」
「はいぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! わかりましたぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
狂った様に泣き笑いながら狐日は話始めた。
実際狂ってはいるのだが。




