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空を飛ぶと頭をぶつける

「……取り敢えず命に別状はないみたいだよ」


 医者と話終わった教がそう言う。


「原因不明の意識不明か」

「お医者さんが言うにはだけどね」


 原因不明……だが先程サファイアが言っていたことを考えるとあまりいい予感はしない。


「十中八九魔術のせいじゃな」


 サファイアは俺と教に向かって言う。


「………………この子は何を言っているの?」


 平静を取り繕ったような言葉、だがしかし言葉にイラつきが混ざっているのが分かる。

 当然だろう、肉親が倒れたというのにこんなことを言われれば誰だって腹が立つ。


「あ~、とな……こいつは、そう!! ちゅ、厨二病だからさ」

「貴様ぶち殺すぞ?」

「いや、だってなぁ?」


 信じるわけないだろ。


「……じゃったら一番簡単に信じさせる方法がある、ほれ復唱『ウル・フラ』」

「………………嫌だけど?」


 俺に軽率に呪文を唱えさせようとするな。


「ふざけるのも体外にしてくれないかな」


 壁を殴りつける教。


「病院でそういうのやめた方がいいと思うんじゃけど」

「君が言うなよ!!」

「……おいド変態」

「それは俺か?」

「それ以外に誰がおるんじゃ」

「………………なんだよ」

「貴様はあの面白い人間を助けたいと思うか?」

「まあ一応友達だからな」

「じゃあとっとと唱えるんじゃ」

「……畝君もふざけるのかい?」


 こいつ怒ると面倒くさいんだよな……もうとっとと唱えるか。


「『ウル・フラ』」

「ッふざけるのもた――」


 唱えた瞬間俺の体は宙へと浮かび上がり……そのまま勢いよく頭を天井にぶつけた。


「った! おいどうなってんだサファイア!!」

「浮かぶだけの呪文じゃし当たり前じゃろ?」

「………………っは?」


 驚いた様子で俺を見る。


「信じたか?」

「ど、どうなって……いやそんな、だって人が浮かぶなんてそんなバカな」


 目の前で本当に見せられると信じるしか無い様で、教は座り込んだ。

 信じてくれたのはいいんだけど、俺は一体どうしたら降りられるんだ? 人が通ったらひと騒ぎ起きるぞ?


「復唱『ウャク』」

「『ウャク』」


 ドサッと重力に従って俺の体が地面へと落ちる。


「再び聞くぞ、信じたか?」


 物を言わせぬ迫力で問いかけるサファイア。


「………………信じるよ」


 いつもの調子とまでは行かないが、少し持ち直した様子の教。


「わはは、どうじゃ儂のトークスキルは」

「トークスキルっていうか力技じゃね?」


 目の前で見せつけて信じさせるってなんか詐欺とか宗教の洗脳でもやられてるだろ……それが俺達の場合事実ってだけ。


「はぁ? ワシが何故宙を飛ぶ魔術を貴様に唱えさせたと思っとんじゃ?」

「何でだよ」

「そりゃあ当然決まっとる、人間は須らく空に憧れを持っとるからじゃ」


 自信満々にそう言うサファイアだが、正直納得は出来ない。


「ふふふ、納得がいかんようじゃが……しかし考えても見ろ、人は昔から空に意味を持たせるじゃろ? 星の並びとかいう唯の偶然に意味を付け名前を持たせ、秒速11kmの鉄塊を空へ飛ばし、もっと言うなら天気一つで一喜一憂する、正直バカじゃと思うが事実じゃろ? これはもう人間の性なんじゃよ、じゃから儂は宙を飛ぶ呪文を唱えさせたという訳じゃな……信じさせやすくするために」

「へー」


 言わせとこ。


「理解できたのならそれでいいんじゃ」


 そんな俺達のやり取りに教が割って入った。


「いろいろ言いたいことはあるし、聞きたいこともあるんだけど……信じたんだからまずは姉さんに起こった事を教えて貰ってもいいかな?」

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