回収完了
そういえば作戦会議の時なんか言っていたな……親父が一月帰って来てないとかなんとか。
「早く解放しろ、今すぐに!!」
掴みかかりながらそう繰り返す正士。
「分かっている……約束だからな、解放しよう」
その言葉に安堵したのか正士は掴んでいた手を放すが……その瞬間男は口元に意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「ただしこの世からだが」
男はいつの間にか手に持っていた双頭の槍を器用に檻の間すり抜けさせながら投げた。
投擲された槍は正士の父親の腹を貫いて壁に突き刺さる。
不意のことで俺達も反応することが出来ず血が俺達へと飛び散り服に付いた。
「なぁ、は?」
目のまえで起こった事を飲み込むことが出来ないのか、正士は茫然としながらペタリと地面へ尻を付ける。
座り込んだ正士の顔面を男は蹴っ飛ばした、結果正士は壁へと勢いよく飛んでそのままピクリとも動かなくなる。
「………………なるほど、貴様最低な人間じゃな」
「最低だと? 人間ごときの尺度で私の事を計るんじゃない」
「……フ」
「何がおかしい」
「いや何も」
そんな事を言うサファイアの顔を見てみると……うっわぁ、滅茶苦茶馬鹿にした笑顔してる。
「貴様らがここに来た理由は当然我々の発生させている亡者の調査と抹消だろう……だがもう既に手遅れだ」
「どういう意味じゃ?」
「我々は既に亡者を操る必要がなくなったという事だ……なにせ今夜、この地に眠りし天戸臨比売が復活するからな」
「ほーう、この山にそんな奴が眠っとるとは驚きじゃ」
「星守である貴様等なら当然知っていただろう……白々しい奴だ」
「さてどうじゃろうな」
「ふん、どのみち貴様等はそこに居る以上どうすることも出来ん……精々指をくわえて神の起床を見てるがいい」
男は手をこちらの方へと向けると呟く。
「『アルマ・ウル・カルウカ』」
すると双頭の槍は男の方へと飛び戻り、それを手にし……もう片方の手で正士を持った男は食事場の方へと消えていった。
「………………結局星守ってのは何なんだ?」
「儂に聞かれても困るの、だって知らんし……とりあえずパーツだけ回収しとくかの?」
「そうしようか」
サファイアはパーツに触れる、するとそれは粒子となって取り込まれた、それと同時に支える物が無くなった死体がボトリと音を立てて地面へと落ちる。
「取り敢えずこれで目標は達成したわけじゃ」
「そうだな……どうする?」
「どうするって、貴様はどうしたい」
俺は地面に落ちたおっさんの脈を図ってみる……分かっていたことだが死んでいる。
「そうだなぁ……まずはこっから出たいな」
「しかしどうする」
「なんか物投げて仏像移動させるとかどうだ」
「当てるっていったっての、こっからじゃまったく見えんぞ」
「確かに完全に死角になってて見えないゲロね」
急にアマガが牢屋の中に現れた。
「そうじゃクローライト、貴様のワープディスクで移動できんかの?」
「別にできるゲロけど……そもそも何でこんな所にいるゲロ?」
「パーツの回収での、取り敢えず回収はしたから依頼は完遂じゃ」
「……本当ゲロか?」
「信じれんか?」
「冗談ゲロ……あんたがそんな嘘をつく必要がないゲロからな」
舌を出してそんな事を言うアマガ。
「で、そっちは何があったんじゃ? 儂らの前に現れたという事は何かが分かったって事じゃろ?」
「そうゲロね……あの湖、というか山にはあんたが飛来する前からアメトリンという奴が眠っているって事が分かったゲロ」
「あぁ、天戸臨比売ってやつがイコールでアメトリンって事か」
結構類似点のある名前だ。
「アメトリンってのはどんな見た目なんだ?」
「そうじゃな……狼とカマキリを足して2で割ったみたいな見た目じゃ」
「なんだ、触手じゃないのか」
聞いて損したな。
「であんたらはどうするゲロ?」
「何が?」
「いや、あいつらの邪魔するゲロか?」
あいつらっていうのは『ケガレオトシ』の事だろう。
「湖の奥の方では儀式をしていたゲロ、今からワープディスクで行けばまあ間に合うゲロね」
「どうやらあまり乗り気ではないようじゃが?」
「……湖の奥で見た物を説明するゲロね」
アマガは言う。
「ゲロは見たゲロ……湖に浮かぶ黄色と紫の幾何学模様を」
「幾何学模様か」
「あれの中に封じられた意味は恐らく起床ゲロ……恐らくサファイアのパーツがあった場所よりもさらに地下深くに眠っているゲロね」
「となると目覚めたらまずいかの」
「何でだ?」
「何でって当たり前じゃろ……地中から出てくるという事はその上にある湖は氾濫するじゃろうし何なら土砂崩れも起きるじゃろうな、何人死ぬか分からんぞ」
なるほど確かにまずそうだ。
「しかしクローライト、何故貴様が阻止に乗り気でないのかが分からん……買った土地が荒れるのはそちらとしても嬉しくないじゃろ」
「いやー、そうなんゲロけどね……面倒な奴らがいたんゲロよ」
頬を掻いてアマガは言う。
「水の中からチラリと森林の中を移動する奴らを見ただけなんゲロけどな、そいつらは儀式をしていた奴らとは違う組織ゲロね……恐らく星守の奴らゲロ」
星守、再び聞いた単語だが……その意味を俺達は知らない。
「すまんが星守ってのは何なんじゃ?」
「……あ、あんた1000年寝てたから知らんのも当たり前ゲロね」
「腹の立つ奴じゃ、とっとと説明せんか」
「そうゲロね、何というか名前通りこの地球っていう星を守ってる奴らゲロ」
「そんな奴らがおるのか」
「別に星守の大半の奴らはゲロ達にとって何の脅威にもならんゲロ……ただ一部、“極致”と呼ばれる神格級すら殺すことの出来る“可能性”をもった人間共がいるゲロな」
「………………そんな人間がおるとは信じられんが」
「あくまで“可能性”を持っているだけで99%勝つことは出来ないゲロな……ただ人間が1%でも神格級を殺すことが出来る“可能性”を持つというのは異常ゲロ、そして昔にその1%を引いた奴がいたゲロ」
「神格級を殺したのか……そいつはどんな人間なんじゃ?」
「最善最適最高のタイミングでクリティカルな1%を引き当て、神格級を殺した……現在の星守のリーダーゲロね」
「ほーう、因みに死んだのはどいつじゃ?」
「ターコイズってやつゲロな」
「ふむ、知らん奴じゃ」
「あんたが倒れた後の天の川銀河に来て幅を利かせてたやつゲロからな、あんたが知らんのも無理ないゲロ」
アマガは続けて言った。
「あいつらが来てるなら阻止されるだろうゲロからな……面倒な事はあまりしたくないゲロ。あいつらたまにゲロ達みたいなのに恨みを持ってる奴いるゲロから……錯乱して襲われでもしたらたまらんゲロ」
野良犬に襲われるのを避ける様な物ゲロ、とアマガは付け加えた。
確かに面倒くさそうだ、それに俺達の目標はサファイアのパーツの回収……その目標が達成されているなら別に帰還しても何の問題も無い。
それにアメトリンが復活したら大勢が死ぬというが、復活する可能性が低いならわざわざ俺達が行く必要もあるまい……むしろ興味本位で行って星守とやらの邪魔をしてしまったら本末転倒だ。
「他には何も見とらんのか?」
「そういえばなんか触手みたいなやつがいたゲロね」
「行こう」
俺はすぐさまアマガを掴んでワープディスクを出させた。
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