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作戦会議

 正士の親父さん、相革という人はどうやら村長の幼馴染らしく……いろいろな事を知っていたようだ。


「なんでも村長の家には地下に続く隠し通路ってやつがあるらしい」


 正士は村長の家の見取り図を出しながら言う。

 なぜ見取り図なんかがあるのかというと、どうやら子供の頃そんな話を聞いて家に入った時に探索しまくったらしい……その記憶を引っ張り出して書いたようだ。


「一番可能性がありそうなのはこことこの部屋だな」


 そう言って指された場所は俺達が招かれた部屋と調理場だった。


「ちなみに理由を聞いてもいいかの?」

「俺が入れなかった場所だからだ……それ以外の場所では間取りに一切の矛盾が起こってない」

「クソみたいな理由じゃな、そんなの信じる事は出来んぞ?」

「俺は記憶力がいい、植物図鑑は全部暗記しているし大学で学んだことも全て覚えている……それはガキの時から変わらない記憶力があるからだ」

「なるほど、自分に瞬間記憶能力があると言いたいんじゃな」


 カメラアイってやつか、どんなものでも一度見た物や出来事を完全に記憶することが出来るっていう。


「だから自信を持って言える、それ以外の場所に矛盾は無い……ならこのどちらかのスペースで矛盾が起こるはずだ」


 絶対にAかBどちらかに間違いがある場合、Aに問題が無いならBにあるって考えるのはそりゃ当然か。


「それで何故儂らにその地下を調べさせたがる」

「憶測だがな……他の奴らは村長の家に地下室があるなんてことは知らないんだよ、プレイベートなんざ一切なくて秘密ごとなんて出来ないような村なのにだ……そんだけ必死に隠されてるんだったらそこに何かあるって考えるのは当然じゃないか?」


 ふむ、まあ確かに一理あるかもしれない。


「だから今夜そこの、どっちでもいい……隠し通路が無いかを調べてくれないか? それだけでいい、何もないなら内でもう片方がそうだという事が確定するしあったらあったで教えてくれたら、後で自分で調べる」

「いいじゃろう」


 サファイアは手を叩いて言う。


「やってほしい事はそれで全てじゃな?」

「そうだ……それで、教えて欲しい事ってのは何なんだ?」

「でっかい碧い水晶を見たことがあるかの?」

「………………いや、無いな」


 ……今少し、正士の目線が少し揺れた気がするな。

 気のせいだろうか?


「ほほう、ならいいんじゃ」


 そこでサファイアは話を打ち切って立ち上がる。


「見取り図は持って行くぞ? 良いな?」

「ああもちろんだ」


 俺達は正士の家を出る。

 空を見ればもうすでに赤に染まり、かなり長い事この村に来てから結構な時間が経ったのだという事をひしひし感じる。


「……貴様は先ほどの人間についてどう思った?」


 村長の家へと戻る途中サファイアはそんな事を聞く。


「う~ん、何だろうな……まあなんか嘘ついてるかなって感じ」

「儂もそう感じた……加えれば何かに怯えとるような印象を感じたの」


 俺も同意見だ、なんというかおどおどとしている気がする。


「とりあえず村長の所戻って調べるとするかの」


 俺達は空が暗くなる前に村長の所へと戻った。


 家に入ると食事をとるかと聞かれたのでサファイアに判断をゆだねた。


「いただこう」


 まあ不審がられても困るからそうする方がいいだろう。

 やはり食事は変な味がしたが、その味の正体がキューレットという事なのだろう。


「さてと、飯も食った事じゃしそろそろ調べていくかの」


 女中さんに食器を持って行ってもらった後、サファイアは言う。


「調べるったって何処を調べるんだ?」

「ほれ、そこに怪しい掛け軸があるじゃろ?」


 サファイアは掛け軸を持って裏側を見る。


「……まあ流石に裏に穴があるなんてことは無いか」


 この部屋にあるのは床の間に掛けられた掛け軸、隣にある床に接して設営された戸棚ぐらいなもので……他に調べられそうなものは何もない。


「まあじゃがしかしなぁ、現状間取りに矛盾がないんじゃよなこの部屋」


 そう、先程部屋の中と外の部屋の長さが違わないかを歩数を使って計測したのだが……何回測っても違いは起こらなかった。

 一応調べてみてはいるがこれだと隠し通路は調理場にあると考えるのが順当だろうか。


「何か理由を付けて入れてもらうかの?」

「理由って言ってもなんか思いつくか?」

「使ってる食材教えて貰いに行くとかじゃないかの?」

「警戒されないかそれ?」

「そうじゃよなぁ」


 サファイアは手に持っていた掛け軸の端を雑に手放す。

 掛け軸の軸棒が壁へと辺り、カランッという乾いたような音が聞こえた。


「……貴様、どう思う」

「小腹が減ったっていったらワンチャン通るんじゃないか?」

「こっちは音の話をしてんじゃわ」


 ………………?


「音って……さっき壁を叩いて空洞が無いか調べただろ?」


 結果は何も無し……というか広さになんの矛盾も起こっていないのだから空洞があるはずもないのだが。


「いや、空洞があるのは壁の方じゃない」


 そう言ってサファイアは先程まで持っていた軸棒を再び手に取り、軸先をクルクルと回してキュポッと取り外す。


「おま、やばいって……それいくらするか分かんねえだろ!?」

「やばいのはこの掛け軸の方じゃ」

「はぁ?」

「見てみろ」


 手招きをするのでしょうがないので掛け軸を見に行く。そうするとサファイアが軸先を見せて来る。


「これは……何だ」


 軸先には黒い糸が何本も繋がっておりちょうどそれは軸棒程度の長さだ。

 どうやら軸棒の中は空洞になっていた様で、先端は結ばれている。


「これは人の髪じゃな」

「うげぇきっも」

「そしてこれにはどうやら魔術がこもっとる様じゃな……廃墟の時に貴様が使ったやつと同じな」

「えっと、何だったか」


 確か、『オト・シケガレ』だったか?


「という訳じゃからちょっと唱えてくれんか?」

「何が?」

「何がって、明らかに怪しいもんが見つかったんじゃからパパッと唱えて何が起きるのか調べたいじゃろ」

「嫌だが?」

「何故嫌がる、現状使えるのは貴様だけじゃぞ? 儂はある程度力を取り戻さんと……筋力で言うなら山をぶん殴って崩せるレベルにならんと魔術は使える様にならんからな?」

「理由とか一つだろ、下手したら爪楊枝でオ〇れるようになるんだろ? それは人間として終わりだろうがよ」

「もう触手にモテたいって理由で死体を利用できる貴様は人間以下じゃ……尊厳なんざ今更誇示するでないわ」

「触手の為ならしたいぐらい触れるだろ普通」

「貴様の普通は人と違う事を心得ろ……ほらとっととやらんか」


 ちくしょう。

 結局いくら嫌がった所で俺がやるのに代りわないのだ。


「くっそ……ほら早く渡せ」

「素直でよろしい事じゃ」


 俺はきったねえ髪の毛を指先で掴んで言う。


「『オト・シケガレ』」


 体から何かが抜ける。


「性癖は?」

「触手」

「よろしい」


 正気のチェックも終わらし状況に変化が無いかを見る……しかし何も起こっていない。

 俺はしっかりと呪文を唱えたし、体から何かが抜けるのも感じたので失敗したという事はないだろう。


「ふむ……そこの戸の中にあったりせんか?」


 床に備え付けられた戸を開けてみるが中には何もない。


「……もしかして畳の下に空いていたりしてな」

「はっは、そんな訳ないじゃろ」


 あった。

 畳を全てひっくり返してみると床にぽっかりと、人が一人通れそうなぐらいの穴が開いていた。


「まじか」

「………………まあ見つかったからいいじゃろ、行くぞ」

「良くそんな躊躇なく行けるな……」


 サファイアが穴の中に飛び込み、それに続いて俺も飛び込んだ。

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