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二人の警察

 村へと向かう途中、ガサガサという音が聞こえた。

 音のする方向を注力してみれば、男が二人並んで歩いていた。二人は警察の制服を着ており、恐らくパトロールをしているのだと見える。

 どうやらこちらへと気が付いたようで、こちらへと歩いてきた。


「ちょっといいかおまえ達、こんな所で一体何をしているんだ?」


 背が高いのと低いの、顔が怖い方と怖くない方……その怖い方の男が少し威圧するようにこちらへと問うてきた。


「………………えっとですね」

「儂ら現在遭難中じゃ、あんた等と出会えて良かったわい」

「え? どう――」


 急にこいつは何を言いだすのだろうと思って問いかけようとしたら、サファイアが思いっきし足を踏んずけて来た。


「山に登りに来たのはいいんじゃがなぁ、こいつが調子に乗って突っ走るせいで迷ってしまったんじゃよ」

「山登りだと……そのような事をする服装には見えないが?」

「そうかの?」


 俺もそう思う。

 だってドレスにハイヒールだぜ? 山を登るって恰好じゃねえよ。言いくるめようとしてるってのは理解したがちょっと言い訳にしては恰好が苦しすぎるな。


「まあ儂問題ないぐらい運動神経いいからの……食料とかも現地調達するつもりじゃったしな」

「ほう、山を登るにしては随分舐めた発言だ……運動神経が良いというのはどれくらいだ?」

「刃〇ぐらいじゃ」


 馬鹿じゃねえのこいつ。確かに親父が持ってたやつ読ませたけどさ……いやもう異常者を見る目でこっちを見てんだよ警察の人ら。


「はぁ? 貴様等疑っとるじゃろ?」

「いいや」


 呆れたようにこちらを見る警察の二人。

 もう引っ張ってくつもり満々過ぎる。


「……………………見とれよ?」


 サファイアがそう言うと少しだけ髪が動いた……様に見えた。

 それと同時、少しだけパキリッという地面の枝が折れる音がしたがそれ以外は特に何のアクションも起こらない。

 そして宣言してからサファイアは最初の位置から動いておらず……微妙な空気が俺達の間に流れた。


「……ついて来てもら――」

「――ほお、そっちの体格が大きい方が市鹿正樹(いちじかまさぎ)巡査で、ちっこい方が尾口網助(おぐちあみすけ)巡査部長というのか」


 相手は名乗ってもいないのに、そうサファイアは言う。

 気が付けばその手には黒い手帳、警察手帳が二つ握られており二人に向けて中身を見せていた。


「ッな!?」


 ちっさい方の男、尾口巡査部長が自分の胸元をまさぐるが反応的に無かったらしい。


「いつの間に?」


 そう問いかけてくる。


「人間なんてちょろいもんでな、注意の意識を一瞬でも別の事に移してやればその間には一切注意すべきもんには注意せん……マジックと同じじゃな、そんで後はその一瞬に純粋な身体能力で貴様等の警察手帳を奪った訳じゃ……大体胸の所に入れとるじゃろ?」


 そう言いながら二つの警察手帳をそれぞれへと投げ返す。

 いや、すっご……え? こいつこんなこと出来るの?

 マジで凄くてびっくりだ、いつもの口を開けばカプ〇ンの悪口しか言わないやつと同一人物とは思えない。


「ふッ、弟子ならこいつだけで十分じゃから取らんぞ?」


 そう言ってサファイアはしたり顔で俺のことを指さす。


「ベタな話じゃが山登りってのもこいつの修行のためなんじゃよ、山籠もりってやつじゃな」

「なるほど………………どうやら報告のあった不審者ではない様だ」

「ふふん」


 鼻を高くしながら上機嫌でそう息を吐くサファイア。


「だが怪しい事に変わりはないな……ついて来てもらおう」

「何じゃとぉ!?」

「馬鹿じゃねえのてめえ、普通に怪しすぎるんだわボケが!? いらん誤解をてめえ与えまくってんだよアホ!!」

「誰がアホじゃぶっ殺すぞ!?」


 そもそも大してなんも言われてない状況下で色々するなよ、言い訳してるみたいで怪しさ満点なんだわ。


 それから暫く警察の二人について二人が駐在している村へと向かった。

 その道中で報告にあった不審者というのが引っ掛かったので二人に聞くと、雑談程度だが話してくれた。

 どうやら山に遊びに行っていた子供が顔面真緑の女に話しかけられたようで子供が逃げてきたらしい、その報告を受けて駐在の二人が山の中をパトロールしているそうだ……つまり全面的にアマガが悪い。


 村はまあ、見た感じ想像通りの田舎といった感じで古い家屋がそこそこの数あった。

 最初に抱いた感想は雛〇沢だなぁで、正直少し感動した。


 そこの駐在所は石造りで、駐在が二人いるので当たり前なのだが二人は住めそうなぐらいの大きさだった。その建物の一室、というか牢屋の中に俺達は放り込まれた。


「いいか? 脱走しようとか考えるなよ?」

「しないし出来んわ!?」

「いや、さっきのを見るとなんか牢屋ぐらい壊せそうだし君」

「……いや~出来んよぉ?」

「………………本当か?」

「………………まあ、出来るじゃろうけど」


 市鹿と尾口にいろいろと言われながら足をバタバタとさせるサファイア。


「クソが、儂が何でこんな目に合わんといかんのじゃ!?」

「怪しいからだろ」

「しばくぞ貴様!? 第一なんで貴様そんな落ち着いとんじゃ!?」

「別に、暴れたらおなかすくじゃん」


 あと暴れたらなんか怪しく見えそうだし。


「どんな理由じゃ!?」

「いや、でも大人しくしてたらカツ丼食わしてもらえるかもしれないぞ?」

「……本当かの?」


 サファイアは駐在の二人に問いかける。


「いや、取り調べ中に食べ物って規則で上げちゃダメなんだよね」

「へー、あれって駄目なんだ」


 ドラマとか見たらみんなやってるからそう言うもんだと思ってた。

 何かサファイアは頭に青筋建てながらこっち見てるし……無視しよ。


「そうなんだよね、僕警察になったらあれやりたかったんだけど駄目なんだって知ってがっかりしたよ」

「それは残念ですね」

「……貴様敬語が使えたのか?」


 明日は槍でも降るのだろうかという表情でこちらを見るサファイア。


「俺のことなんだと思ってんの?」

「カス」

「本当にしばくぞ?」


 そんなやり取りを見てから尾口が俺達に向けて言った。


「さて、まあ君達は見ている感じ危険性は無さそうなんだけど……とにかく怪しいんだよね」

「何が怪しいんじゃ?」

「いやもう、まず聞きたいのは君達ってどういう関係なの?」

「え、セッ――!?」


 喋ろうとした俺の腹を隣に居たサファイアが肘でぶん殴った……いやまあ確かにやばいか、浅慮だった。


「師弟じゃ、もちろん儂が師匠じゃがな」

「いまそっちの子何か言おうとしてたけど?」

「正義の味方と言いたかったんじゃろ、こいつ仮面ラ〇ダーになりたくて儂の元に弟子入りしてきたしの」

「……一番好きなライダーは何かな?」

「………………………………ディケ〇ド」


 というかこれしか知らないから適当に答える。


「ふぅん、よく分かってるじゃん」


 尾口の中で俺は何かに合格したらしい、何か同志を見る様な目でこちらを見てくる。


「それで君は師匠っていうけど……その、何歳なんだい? 歳をとっているようにはまるで見えないんだけども?」

「女性に年齢を聞くのは失礼じゃろ」

「取り調べだぞ? 舐めているのか?」


 ずっと黙っていた市鹿が近くにあった机をたたきながらサファイアに向けて言う。


「……そうじゃのぉ」


 というかこいつ何歳って言う気なんだ?

 なんかサファイアとしての年齢を言うと余裕で1000歳とか超えるから言うわけないし、下手な年齢言っても嘘だと思われるだろ。


「79じゃ」

「俺達の事をかなり舐めているだろ?」

「いや本当じゃって、貴様等は雑魚じゃから歳をとるんじゃよ。鍛えれば歳なんざ取らんぞ?」

「おま、馬鹿」


 そんな人外設定言って通るわけないだろ。


「いやいや、貴様も別にルールに従っとるだけで牢屋ぐらいぶち破れるじゃろ? そういう風に鍛えとるんじゃから」

「え? うん?」


 目で出来ると言えと訴えかけてくるサファイア。しょうがないからそう答える。


「まあ、ビシバシやられてるから……出来る、かな?」

「へー本当かな? 出来そうな体には見えないけど」


 まあ言ってももやしだしな俺。鍛えてると言っても信じて貰えないだろうし、実際鍛えてないからな。


「じゃあちょっとやってみて貰っていいかな?」


 無理に決まってんだろクソが。

 ふざけやがってサファイアが、こうなるに決まってんだろうが……どうすりゃいいんだよ。


「儂の流派が最強じゃと証明するんじゃ」

「………………ッチ」


 しょうがないのでダメもとでやってみる事にした。

 ええいままよぉおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?!?


「すっご」


 そんな尾口の小さな声が耳に入って来た。

 俺がしたことと言えば柵を掴んで少し力を入れただけ、なのに発泡スチロールを曲げるかの如くぐにゃりと鉄の柵が曲がった。

 え? 何? 俺いつの間にこんなバケモンになっちまったの?


「………………一応、本当の事しか喋ってないっぽいね」


 ほとんど嘘だけども、尾口は何か納得したようで……どうやら非現実性を見せつけられると人間はバグるらしい。

 そんな時だった、こんこんっと部屋がノックされるのが聞こえた。


「ちょっと、一旦離れるね……牢屋出ちゃだめだよ?」

「出ませんよ」


 尾口は市鹿を連れて外へと出て行った。


「……え? どういう事なんだサファイア?」

「まあ、儂のパーツ回収してんじゃから儂の力も少し戻って来とるじゃろ? それに付随して貴様も強化されるってわけじゃ」

「いや、まだ少ししか集められてないのにこんな事出来るようになんの?」

「最終ゴールがつつくだけで星一つ壊せるレベルじゃぞ、当たり前じゃろ」

「マジか……マジで俺の体強化されてなかったらヤってる時潰れて死ぬじゃん」

「何で貴様は最終的に性に関連付けちゃうんじゃ本当」

「いや、触手が俺の主目的なんだから当たり前だろ?」

「まあ貴様はそういうやつじゃな、モ〇ハンをエロ目的で始めるような奴じゃ」

「最初は触手目的だけどやってるうちにハマっちまったんだよな」


 ていうか触手ッて感じのモンスターもほとんどいなかったし。


「お、戻って来たみたいじゃぞ?」


 部屋の前から足音がするが、それは二つではなく三つだった……二人以外に誰かが来たようだ。

 ギーッという音と共に部屋の扉が開かれた、そこに居たのは尾口と市鹿……そして老齢の爺さんだった。


「……どちらさんじゃ?」

「………………この村の長です」


 白いひげを生やした爺さんが口を開くとしわがれた声でそんな返答が帰って来た。


「ほれ尾口……早く鍵を開けてあげなさい」

「見北さんに言われたらしょうがないよね……て、もう牢屋ぶっ壊れちゃってるからそっから出ちゃっていいよ」

「……え? 俺達一応推定怪しい奴なんだけど……大丈夫なのか?」


 警察が村長の一存でそんなことしてもいいのだろうか?


「まあね、僕達はこの人には逆らえないんだよ」

「これこれ、そんな言い方をすれば誤解を与えてしまうだろう」

「ああ、すいませんね」

「ふん……俺達は元々この村出身なんだよ、そんで警察になってここに戻って来たんだ。その道を示してくれたのも爺さんなんだよ、だから爺さんが言うならそれは俺等の正義だ」


 そんな事を市鹿が言う。

 ……大丈夫かこの人ら、いやまあ出ていいなら出るけどもさ。


「これでお前達は客人だが、何かやらかしたら俺がとっ捕まえるから余計なことはするなよ?」

「これこれ、客人にそんなことを言うでない」

「悪いな爺さん、だが仕事だからな」


 俺達の事を出してる時点でもう職務怠慢だと思うのだが、まあ余計な事は言わない方がいいだろう。


「そうだ、お前さんたちは泊るところはあるのか?」

「いや、無いの……山籠もりする予定じゃったから」

「……今の山はやめておいた方がいい、私の家の一室を貸すからそこに泊まりなさい」

「……やめておいた方がいいとは何じゃ?」


 この見北って人亡者の事知ってんのか?


「あの山は熊が出る、そして何故かは知らんのだが最近動きが活発でな……相革というやつが対策を考えとるんだ、それに君達がクマに食われると相革に私が起こられてしまうのさ」

「なるほどの、なお言葉に甘えさせてもらおうかの」


 俺達は駐在所を出て村長の家へと向かった。

 村長の家は村長の家というだけあってかなり大きく、俺の家の三倍はある大きさだった。


「でっけえ部屋」

「貴様の部屋とは大違いじゃな」

「うっせえな」


 玄関付近にあったデカい仏壇の横を通りすぎ、連れられた部屋は和室で大体20畳ぐらいの客室。

 なんか大きな掛け軸とかもついてるし俺等に貸すにはもったいないぐらいの部屋だ……少しぐらい触ってもバレな、いややめておこう……汚したらまずそうだ。

 それがちょうど十二時ぐらいの事だったので、俺達は食事を食べるかと聞かれた。


「いただこう」


 そうサファイアが二つ返事で答えたので部屋で待っているように言われ、暫くしたらなんと盆にのせて持って来てくれた。

 まるで料亭にでもいるかのような気分になってしまう……後で金を請求されないか心配だ。

 出された食事は何というか、田舎って感じの味なのだろうか……食べたことの無いような不思議な味だった。不味かったわけでは無いのだが……田舎の味というのを食べた事が無いのでまあこんな感じなんだなという雰囲気だった。


「ふむ、まあ絶品という訳ではないし不味くも無かったがの……何というか懐かしい味を感じたというところじゃな」


 後でサファイアに感想を聞くとそんな感じの事を言っていた。

 田舎の味に対して懐かしい味と表現するのは良く分かるのだが、お前人間じゃないしそもそもここ出身じゃないだろ……どんな感想だよ。


 俺達が飯を食べ終わると、村を巡るのを女中さんに勧められた。なんでもとてもいい場所だから必ず気にいるとのことで、まあサファイアのパーツも探さないといけないわけなので俺たちは言われるがままに村を巡ることにした。


 なので進められたとおりにブラブラと歩き回って怪しい場所を探すことにした。

 と言ってもだが。


「皆目見当もつかんわい」

「だよなぁ」


 この村の規模は見た感じ大体2000人が住む村だ、一体家がいくつあると思っているんだという話で。全ての家に入って確認するなんざ無理だ……暫く滞在する事を覚悟しなくてはいけない、幸い村長は暫く止めてくれそうだったので寄生させてもらう事にする。

 何分ぐらい歩いただろうか、古い建物がそこにあった……小さい子供達が傍にある広場の様な場所でボール遊びをしていたので恐らく学校なのだろう。

 遊んでいた少年の一人がこちらに気が付いて、こちらへと近寄って来た。


「見た事無い人~、お兄さん達だれなの?」

「うーんと……えっとな」

「格闘家じゃ」

「あぁそう、うん格闘家」


 もうすでに設定を忘れてしまっていた、そう言えばそんな嘘をついていたな。


「格闘家?」

「そうそう、空手とかね」

「そうなんだ」


 純粋な子供なので疑われることも無く納得してくれたようだ。


「今は修行の途中で立ち寄っとるだけじゃがな」

「へー、じゃあお兄さん達も今日から僕達と家族なんだね」

「……どういう意味じゃ?」

「だって遊びに来た人は皆この鶴槻岳(つるつきたけ)を気に入って引っ越してくるんだ、村の人になったら家族でしょ?」

「………………まあ、引っ越すかどうかは知らんがいい村じゃとは思うぞ?」

「うん、そうだな」


 ニコニコと笑う少年だが……まあ、純粋なんだなっと思う事にした。


「そう言えばじゃが、この村で見といた方がいい場所とか知っとるか? 観光名所みたいなやつじゃ」

「う~ん……やっぱり神社かな?」

「お、それは何処にあるんじゃ?」

「えっとね、あっちの方」


 そう言って少年は俺達が歩いてきた方とは真逆を指さす。


「助かるの」

「うん、また今度遊ぼうね」


 そう言って少年は元々の集まりへと戻っていった。

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