朝食
「よし、取り敢えずある程度の位置は掴むことが出来たぞ」
キッチンに立ち朝食を作る俺に向かってサファイアはそう言った。
昨日家に入ったばかりだというのに自然体でソファーに寝っ転がっている。
「何? やっぱ自分の体の位置が分かる能力あったりすんの?」
「……貴様は例えば自分の腕が切れたとして、その腕を感知できるのかの?」
「いや、宇宙人ならありそうじゃん?」
「まあ力を取り戻せば出来るがのぉ」
俺の前に座りそう言うサファイア。
「今は出来んから、インターネットを使ったわい」
そう言えばサファイアは俺の部屋のパソコンを家に着いてからずっと触っていた。
「ネットで分かるもんなのか? 電波でも拾った?」
「そんなわけあるかい! 都市伝説やら噂を集めただけじゃわ!」
「都市伝説ぅ?」
「疑っとるようじゃな……じゃが、貴様を追いかけとった儂のパーツがあったじゃろ」
「あのアラクネみたいやつな」
「あれは外敵から身を守るためにああいう形になったんじゃ、じゃから化物……UMAとかの情報を追えば見つけることが出来るってわけじゃな」
「へー」
俺は相槌をし、食パンを半分に切る。
「そして儂のパーツが変化するのは形だけではない、空間や概念という状態になることもあるのじゃ」
「……すまん、理解できないんだが説明してくれ」
「ほほう? 説明を望むか……ならばとくと聞くが良い」
これは特定の刺激を与えると帰って来る無条件反応の一種であり……という説明から始まり、そこからパーツが十四次元に与える力がどうこうで空間の歪みが特定パターンで計算になれると状況を見れば推測できるどうのこうので……マジで何を言っているのか分からなかった。
取り敢えず数学の話はしていたっぽいのでてきとうに返すことにする。
「ようは……数学の公式みたいなもんだな?」
「公式位は証明できるようになっとった方がいいんじゃないかの? 貴様高校生じゃろ?」
現在高校一年生、夏休みを謳歌中。両親ともに海外へ出張へと行き、家にいるのは俺とサファイアのみとなっている。
「ま、貴様なりの解釈を得れたのなら説明したかいがあるというものじゃな」
したり顔でそう言うサファイア。
「まあいいわい、取り敢えず行くぞ」
「どこへ?」
「とにかくついて来るがよい!」
「あー、じゃあちょっと朝食だけ取らせてくれ」
俺は卵をかき混ぜながらそう言う……砂糖も入れないとな。
「そう言えばさっきから貴様が作っとるのは何じゃ?」
「フレンチトースト」
「美味そうな響きじゃの、儂の分も作っとくれ」
「はいはい」
俺はオーブンにパンをもう一枚突っ込んだ。