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クロ―ライトがやって来た

 ある日の朝だ。

 俺はフライパンで目玉焼きを二つ作っていた。ベーコンは既に焼き目を付けて、食パンはトースターでチンしてある。


「今日の朝ごはんは何じゃ?」


 呑気なサファイアの声。

 先程まで俺のパソコンでモンスターを一狩りするゲームをしていた癖して一丁前に聞いてくる。

 滅茶苦茶文句を言ってやりたいのだが、言っても仕方がないので素直に答える。ついでに言えば先程無くしていた500円玉を見つけたことで少し機嫌がいいのもある……今はポケットの中だが後で財布にしまわないとな。


「ベーコンエッグトースト」

「美味そうじゃな、はよ作っとくれ」


 そう言ってサファイアはソファーに寝転がりテレビをつける。


「ていうかパーツ集めどうするんだ?」

「何回リオ〇ウスを狩っても紅玉が出んからの、いったん諦めとる」

「討伐すんじゃなくて捕獲した方が確立高……ちげえよ、お前の体の話してんだこっちは」

「あぁそっちの話かの」


 何でそこにモン〇ンの選択肢が混ざって来るんだよ。ゲームのやりすぎで馬鹿になってるぞ。


「悩ましい所じゃ、なんかダイヤモンドにベタベタ触られたと考えるとやる気が少し下がっとるんじゃわ」

「じゃあダイヤモンドが触ってない奴に行ったらいいんじゃないか?」

「今見っけとるのがほとんどダイヤモンドが作ったやつっぽいんじゃよなぁ……それ以外となると京都を出んといかんぞ?」

「それは面倒くさいな……だが俺的には早くセッ〇スしたいから早くパーツ集めないとダメなんだが?」


 まあギリギリ大阪ぐらいならパッといけないことも無いだろうから……そっち方面ならいいんだが。


「朝っぱらから気持ちが悪いのぉ貴様は、人間なのに頭の中に性欲しかあらんのか? それとも人間だから性欲しか無いのかの?」


 俺にあるのは性欲じゃなくて触手欲だ。

 ちょうど目玉焼きがいい感じになってきたところでピンポーンとインターホンが鳴った。


「ちょっと今手離せないから代りに出てくんない?」

「別に火を止めればいいじゃろ」

「あと少しでめっちゃいい感じなんだ……理想的な半熟だぞこれ」

「ほぉ、理想的な半熟なら逃す訳にはいかんな。儂が出よう」


 サファイアはインターホンに向かって言う。


「こちらサファイアじゃ、どちら様かの?」

「インターホンに向かってサファイアって言うのやめてくんない?」

「ふ、冗談じゃ……まだ出とらん、しっかり寸止めじゃ」

「なら良かっ――」

「――あ、指当たっとった」

「お前にはもうどんな些事も頼まない、一生寝っ転がってグーたらしててくれ」

「馬鹿にしおってクソが」


 というかこのやり取りも外に丸聞こえなのか、最悪だ。


『……あのー、もう喋ってもいいゲロか?』


 インターホンから伺うようにそんな女性の声が聞こえてきた。

 知らない声だ、少なくとも近所の人ではないな。


『ちょっと商売に来たゲロ』

「断ってくれ」

「いらん」

『ピッ。』

「じゃあちょうどいい感じの半熟になったし食べるか」

「そうじゃの」


 俺はベーコンエッグトーストを皿に盛り付けて机へと持って行く。

 ピンポーンと再びなるが……ガン無視。

 無視し続けていると連続で鳴るようになり、それでも無視をするとドンドンッと扉が叩かれ始める。


「……警察に通報するか」

「儂を見られると最悪貴様が捕まるが大丈夫か?」

「そこは姿を消しといてくれよ」

「……いや、貴様はぶっちゃけギリギリ犯罪者じゃし一度捕まった方が良いと思うんじゃ」


 そんな事を言っているとノックの音が止んだ。


「……俺がギリギリ犯罪者? 一度も法を犯した事無いが?」

「不法侵入器物破損」

「器物破損はお前だけだけどな?」

「あとキモイ」

「それは悪口でしかないだろうがよ」

「悪口以外に何があるってんじゃ?」

「なんだお前性格悪いぞ」

「そうゲロよブチ切は酷いゲロ、せめて話位は聞いて欲しいゲロ」

「「は?」」


 俺とサファイアに混ざって一人、先程聞いた声がした。

 ビックリして視線をそちらへと向けると、灰色のローブを纏ったやつが俺達と食卓を囲んでいた。


「あ、一応ゲロはお客さんゲロからお茶とか用意していただけると嬉しいゲロ」


 大胆不遜にもそう言って座り続けるその不審者は、ローブを脱ぐ。


「あぁ、貴様クローライトか」


 ローブによって隠れていた姿が俺達の眼前へと露になる。

 まず最も先に目に入るのは腐ったような緑色の肌だ。赤の目は蛙の様に瞳孔が横に細長く、髪は茶色でパーマになっている。それ以外は人間の顔と同様で、少々ほっぺたが膨らんでいるというぐらいだろうか。


「クロ―ライト?」

「商いをしなければ死んでしまう種族じゃ」

「名前はアマガというゲロ」

「で? クローライトが儂らに何の用じゃ、言っとくが金は無いぞ」

「アレェ? 今ゲロ名乗ったゲロけど聞かれて無かったゲロか?」

「まあこいつ性格悪いし気にすんなよアマガ」

「あんた人間にしてはいい奴ゲロな」


 アマガはゴホンと咳をして言う。


「ゲロがここに来たのは偉大なる九神(グレーターナイン)が一人、サファイアが自分の体を探しているという話を聞いたからゲロ」

「その名で呼んだな、殺す」


 サファイアが身を乗り出して対面に座るアマガを殴ろうとしたので、肩を掴んでそれを止める。


「それで?」

「はいゲロ。それでゲロはそれに協力したいと考えているゲロ」

「良かったじゃんサファイア、協力してくれるってさ」

「引き換えとして何かさせられるぞ、クローライトに無料という概念は存在せんし」

「それは当たり前ゲロ、ただですることほど無責任な事は無いゲロ……初等教育で学ぶゲロよ?」


 そんな概念学んだことは無いが……それよりも宇宙人にも学校って存在するんだ。


「それで? 儂らは何をすればよいんじゃ?」

「まあまず商品を見てくれゲロ」


 そう言ってアマガは口を大きく開けてその中に手を突っ込む。そうしてしばらくすると引き抜くと、その手には真っ黒な箱が握られていた。


「ゲロロロロ」


 ベチャッという汚い音と共にそれは机の上に置かれる。


「……最悪なんだけど」

「すまんゲロ」


 その箱をアマガが指でつつくとそこから波紋の様な模様が浮かび上がり、それは奇怪な幾何学模様をくみ上げていきそして開いた。


「ゲロが売りたい商品はこれゲロ」


 中には行っていたのは無数のディスクで、その内の一枚をすらりとした指で取り出し机の上に並べた。


「何なんだこれ?」


 何かのDVDだろうか、表面に何か書かれてないか確認しようと一枚に手を伸ばす。


「あ、それ触らない方がいいゲロ」

「ああ悪い、買って無い物触るのは悪かった」

「いやそうじゃなくて、そのディスクの裏面は光に当たるとその光を一万倍明るくして反射するゲロ。それ目に入ったら人間は最悪失明するゲロ」

「何て物出してやがんだてめえ!?」


 俺はすぐさま手を引っ込める。


「だから慎重に置いたゲロ……まあすぐなら治すことは出来るゲロから安心するゲロよ」


 笑いながら言うアマガ……絶対に治るとかそういう問題ではないと思うのだが。


「こちらはパーツがある場所の座標が登録されたワープディスクゲロ」

「ワープディスク? なんだそりゃ」

「名前の通りワープ装置じゃ。それを使えば設定されているポイントまで飛べるんじゃよ」

「めっちゃ便利じゃん」

「ただたまにバグって地面に埋まってそのまま死ぬとかあるぞ」

「誰が使うんだよそんなん」

「それは旧型のやつでこれは新型ゲロからそんな事起こらないゲロ……そもそもその事故だって人間の飛行機が落ちるぐらいの確率でしか起こらんゲロ」

「結構怖いけどそれ」

「ジャ〇ボ宝くじ当たる位の確率ゲロ、そんなの想定するのは宝くじ当たった妄想するのと同じ様なもんゲロ」


 そう言われると何も言い返せない、無敵のカードが過ぎる。


「値段は?」

「……それはそっち次第ゲロね」

「どういう意味じゃ?」

「そもそもゲロがパーツを見つけたのは偶然……というか商売のおまけゲロ」


 アマガは長い舌を出して言う。


「そもそもゲロは普段宇宙人相手に土地の売買していて、こういった物を取り扱うのは稀ゲロ」


 さらに続ける。


「先日土地を買ったゲロ、それがこれに登録されている場所ゲロ」

「ほう」

「しかしその土地には欠点があったゲロ……それは亡者が現れるという事ゲロ」

「亡者ぁ? なんだそりゃ」

「そこで死んだ者の亡骸が動き出すことを亡者化と呼び、その者を亡者と呼ぶんじゃ」

「へぇ」

「じゃが亡者に生前の記憶や意思なんざ無く大体はそこに突っ立っとるだけじゃが」

「そうゲロ、往々にして亡者は無害……現れたら悪臭を放つし見栄え悪いゲロから駆除するゲロが」


 なるほどな、ゴキブリとかハエみたいな扱いなのか。


「という事はその亡者を駆除してほしいという事かの? それぐらいじゃったら自分でやればいいと思うんじゃが?」

「いや、それが普通の亡者じゃ無いんゲロよ……だから頼みに来たゲロ」

「………………?」

「そいつらは生者を襲い、喰らうゲロ」

「という事は操っとるやつがおるって事か」

「話が早くて助かるゲロ……そしてその亡者を操る方法がサファイアの体という訳ゲロ」

「………………なぜ断言出来るんじゃ?」

「いや、この場所って山中の湖なんゲロけども……湖の底にその破片があったゲロ」


 そう言って再び口の中に手を突っ込むと、指先サイズのベタベタとした青色のそれを取り出した。


「ゲロロ……これがそれゲロ」

「何してくれとんじゃ貴様ァ!?」

「すまんゲロ」


 取り敢えずそのベタベタとしたものを机に置くのはやめて欲しい、掃除するのは俺なんだ。


「恐らく墜落した衝撃で割れた物だと思うんだゲロ、というのもそのすぐ近くに大きな穴があったゲロ……湖もその墜落で出来たものだと考えるゲロ」

「なるほどの」


 と、サファイアは頷く。


「つまりそれを持ちだした奴がいて、どうしてかそいつが亡者を操っとるからパーツを回収して止めて欲しいって事かの?」

「そう言う事ゲロ」

「……いいじゃろう、引き受けてやろう」


 その言葉を受けてアマガは手を前に突き出した……交渉成立という事で握手を求めているらしい。


「……いや、なんかべたついとるから握手はちょっと」

「酷いゲロ」

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