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ダイヤモンド

 そちらへ目をやれば一人の女性がこちらを見ていた……身長は俺より少し高いぐらいで大体185ぐらいだろうか。

 アーモンドの様な瞳は朝の月の様に白く煌めき、肩で切り揃えられた髪は夜闇に純白を彩っている。身に纏う白のスーツは街灯によっていっそう白さが強調されており、履いているパンプスも同様だ。

 

「友達?」

「友達ではなく知り合いじゃ、あんなのと友達とか」


 ものすごい表情で吐くようなジェスチャーをするサファイア。

 そんなサファイアを見てこちらへとその女は歩いてくる。


「酷い物言いであるのよサファイア。一応私は友達だと思っているであるのよ?」

「貴様に友達と思われとるとは心外じゃ、即刻考えを改めるがよいわ」

「ふふふ、そんな事言っちゃって。照れ隠しであるのは分かっているのであるわよ?」


 サファイアはこちらへと顔を向けて指で頭をつついてその手をパーにする。


「……現状お前がカスなだけだけど大丈夫か?」

「何じゃと貴様ぁ!?」

「……そちらの人間は誰であるのよ?」

「………………眷属じゃ」

「おぉ!! サファイアが眷属を作るとは珍しいであるのよ」

「そんな事はどうでもいんじゃわ」


 サファイアは話を切って言い放つ。


「儂の体使って何してくれとんじゃ」

「……どういうことだ?」

「今回の公園で起こった怪異、これを作ったのはこいつじゃ」


 ダイヤモンドを指さして言う。


「なんか脱出ゲームみたいになっとったのはの!! こいつが儂のパーツで空間を歪めてカスタムしたからじゃ!!」

「楽しかったであろうよね? いちいち細かいであるわよ」


 ダイヤモンドはにやにやと笑いながら言う。


「楽しいとかじゃないんじゃわ!?」

「他にもいっぱい用意してあるから探して遊ぶがよいわよ?」

「見つけたなら返せ!?」

「嫌であるわよ、そもそも千年も眠っていたサファイアが悪いであるわよね?」

「ぐきぎ、それを言われると言い返せんぞ」

「……そういやお前ってなんで千年前に流星群になったんだ?」

「……貴様は知らんでいい」

「サファイアちゃん縄張り争いに負けちゃったであるのよ」

「言うでないわクソ野郎が」


 サファイアは中指を立て眉を上げる。


「でも負けたのはサファイアだけじゃないであるよ?」

「……何じゃって?」

「あいつは圧倒的な力を持っていたであるからね、アレキサンドライトでも勝てず殺されたであるよ?」

「は? アレキサンドライトが殺された?」

「え? 知らなかったであるか? 相打ちしたであるよ?」

「すまん、アレキサンドライトって誰だよ」

「知り合いじゃ、そしてド変態じゃ」

「知り合いというか上司であるわね、ド変態なのはそうであるけども」


 そう言うダイヤモンドとサファイアは懐かしそうに頷き合っていた。


「私とサファイア……他に七柱を含めて他の生物からは“偉大なる九神(グレーターナイン)”と呼ばれているのであるのだけどもね、その上司的存在がアレキサンドライトであるのよ」

「まあこいつ等と一括りにされとるのは心底不快じゃし、そうやって呼んでくるやつは全員ぶっ飛ばしとったんじゃが……上司というか上位存在がアレキサンドライトって所じゃ」

「上位存在って事はお前らの神って事か?」

「その認識で正しいであるよ、私達を世界に産み出したのはアレキサンドライトであるからね」

「生み出したって、それだと神じゃなくて親じゃないか?」

「親とは少し違うんじゃわ……貴様に魔術を教えた時の話を覚えとるか?」

「触手が出せるようになる」

「違うわボケが!? 儂らがおった(魔術の産まれた)世界はデジタルで表現されとるってやつじゃ!!」

「ああ、言ってたなそういや」

「その世界そのものがアレキサンドライトの体であり、その世界の一部を切り取って儂らを作り上げたんじゃよ……じゃから創造主というのが正確じゃな」

「へぇ…………ん?」


 あれちょっと待てよ?

 今こいつその世界そのものがアレキサンドライトの体って言ったよな? でもアレキサンドライトが死んだって事は……こいつの居た世界無くなってるんじゃないか?


「今その……デジタルの世界はどうなってるんだ?」

「あるであるわよ? 死んだらなくなると考えたのであるのね?」

「ああ、違うのか」

「いや間違ってないであるよ。夢から覚めれば見ていた世界が消えるように、本来なら死ねば無くなるはずであるのよ」


 このアナログの世界ごと、と加えてダイヤモンドが言う。


「この世界はその延長線上、というか宇宙その物がアレキサンドライトの体……正確には脳味噌であるわね」

「へー、宇宙と脳って似てる似てるって言われてたが……本当に誰かの脳味噌だったんだ」

「人類最大の謎の一つ、宇宙についての答えを聞いてその反応はどうかしとるぞ?」

「それよりも求めてたものが存在してる事を知れたからな、宇宙の謎なんかより百億倍重要だ」


 別にワクワクしないわけじゃないが、触手と比べて興奮度が違う。


「だから心配する必要は無いであるわよ」

「でもさっき死んだって言ってなかったか?」

「正確には生き返ったというところであるわね」

「生き返るとか化物かあ奴は?」

「私達もそっち側であるわよ?」

「流石に死んだら死ぬわい」


 サファイアは鼻で笑いながら言う。


「それで? あ奴は今何処にいるんじゃ? パーツを集め終わったら見舞いにでも行ってやる」

「それが分からないであるのよ」

「………………はぁ?」

「いや、多分地球に居るであるのよ? 最後に受け取った“信号”が地球であったし、移動すれば分かるであるからね? でも正確な位置までは分からないであるのよ」


 頭を抱えながらダイヤモンドが言う。


「いろいろ暴れて存在をアピールしたであるけどあっちからコンタクトは無いであるし、ルビーやアメジストも探しているみたいであるが今のところ成果なしというところであるわね」

「ちょっとまて、アメジストはまだいいんじゃが……ルビーも来とるのか?」

「来てるであるわよ」

「儂が活動を開始したのは知っとるのか?」

「当然、偉大なる九神(グレーターナイン)は全員知ってるであるわよ?」

「最悪じゃ」


 青ざめながらものすごい表情でそう呟くサファイア。


「何がそんなにまずいんだ?」

「あいつらは全員カスじゃ、性格が終わっとる」

「そんな事無いであるわよ?」

「貴様儂の体で勝手に脱出ゲーム作っとるじゃろが!?」

「サファイアの体は空間に干渉するのにちょうどいい触媒であるのよ、しょうがないってやつであるね」

「本当頼むから死んどくれ」


 サファイアがダイヤモンドを指さし言う。


「こいつとアメジストはまだ話が通じるが、ルビーとエメラルドだけは無理じゃ。あいつらは話を聞かん」

「自己中であるものね」

「あいつらの中には自分しかないんじゃわ、他者という概念が存在しとらん……そんなのと会う可能性があるとか最悪以外の何でもないわい!」


 今までに見たことの無い表情をしながらそう言うサファイア。

 どんだけ嫌なんだよ。

 少し間をおいてダイヤモンドが口を開けた。


「じゃあ伝えないといけないことは全部伝えたであるから帰るであるね、それとそっちでアレキサンドライトを見つけたら報告するであるよ」

「帰る前に儂の体返すんじゃ……せめて使ったやつ全部教えろ」

「嫌であるわよ」


 ダイヤモンドの姿が少しづつ薄れ、夜の闇に紛れていく。


「まぁ頑張るであるわよ」


 そう言い残してダイヤモンドの姿は完全に黒へと溶けた。

 それから幾何の時間が過ぎてサファイアが言う。


「……儂もどっと疲れたわい、とっとと帰るぞ」

「そうだな」


 俺達は二人並んで駅へとむけて歩き出す。

 

「はぁ~~~~~~」


 夜の街にサファイアのそんなため息が響いた。

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