魔術のレクチャー
サファイアに魔術の使い方のレクチャーを受けた。
なんでも魔術とは宇宙がどうのこうのであれがこうだという事らしい……つまり理解できなかった。
「――とまあこれが魔術がどういう仕組みで成り立っておるかという話じゃ。次は……貴様、随分遠くを見ておるが理解は出来取るのか?」
「え、うん」
「なら言ってみろ」
「あの~あれだ。宇宙の法則が物理で多次元があれでこうなんだろ?」
「全く覚えとらんじゃねえか!」
サファイアはドンッと壁を殴った。
暫くこいつといて分かった事だがどうやらこいつは説明が好きで、理解をされないとイラつく性分らしい。
「くそったれじゃ貴様は、猿以下の雑魚人間め!」
「いや、こう何というかな……例えを出してくれればまだいいんだけどさ、こう分からんから全てが宇宙語に聞こえるんだわ」
「……分かった、貴様でも分かるように例えてやる」
サファイアは額に指を当て目を閉じる。
「そうじゃのぉ……ARって知っとるか」
「小学生の時に3〇Sについてたカードでめっちゃ遊んだから知ってるぞ」
「そうか、なら話が早いの……ARというのはCGというプログラムされた画像やらモデルという“裸眼”では見えない物を、スマホやらゴーグルといったデバイスを介して現実世界に“ある”ように見せる技術じゃ。そして魔術にこれを置き換えると、プログラムが魔術でデバイスが魔術への理解、そしてCGが魔術によって現実に起こる現象という事になる」
「なるほどな」
まあさっきよりは分かった気がする。正直宇宙の法則とか説明されても……馬鹿な男子高校なんかに理解できるわけがない。そもそも相対性理論が成り立たない世界って言われて想像なんか出来るかよ。
「というか最初っからそう説明しろよ」
「儂の説明が悪かったと言いたいんじゃな、殺すぞ貴様」
「冗談だごめん、だから中指を立てないでくれ」
頬は緩み、中指で怒りを表すポップな感情表現だが、額に誇張表現無く青筋が立っていた。本気の殺意を向けられている気がしたので素直に謝っておく。
「……ふん、まあいいじゃろう」
サファイアの額から放たれるビキビキという音が消え、立てられた中指も収められる。
「次は魔術の使い方じゃが……これは至極簡単じゃ。呪文を唱えるだけでいい」
「……えらい簡単だな」
「そうじゃ、魔術を使うだけなら簡単じゃ……何故なら本当に呪文を唱えるだけじゃから。因みにどういう理屈かというとじゃな」
「へえー」
「まさか興味が無いとは言わんよな?」
「いえ、ぜひお聞かせください」
「そこまで頼まれると説明せん訳にはいかんなぁ」
ちょっと面倒だなこいつ。
「貴様はパソコンの圧縮ファイルをダウンロードすることは出来るかの?」
どうやら最初からたとえ話で話してくれるらしい。
「何年パソコン使ってると思ってるんだ?」
出来るわ、と胸を張ってそう答える。
「そうか、では圧縮されたファイルを解凍することもできるな?」
「当たり前だろ」
「じゃあその一連の流れが魔術を行使するという事じゃ」
「………………は?」
「じゃ~か~ら~な! 他人の作った圧縮ファイルという魔術を探す、解凍して現象の引き起こし、これをしているのが呪文じゃって!」
「いや、意味が分からん」
「……圧縮ファイルをサイトからダウンロードしようと思うとじゃ、まずはサイトのURLがいるじゃろ。で、圧縮ファイルを解凍する際にその圧縮形式に沿った方法でデコードするじゃろ? つまりファイルを持って来るURLと、そのファイルの解凍方法の情報を持っているのが呪文じゃ」
「あ~あれか、ZIPファイルはWindowsで最初っから展開できるけど。RARのやつはソフトを入れないと回答できないみたいなもんか」
「まあそう言う事じゃな、圧縮方法が違うとそれに適したプログラムがいる訳じゃ」
なるほどな………………うん?
サファイアに説明されたことを思い出し、あることに気が付いた。なので素直に問いかけてみる。
「……ていうか、お前が唱えたらいいんじゃないか?」
「はぁ、儂がぁ?」
「いや、説明された範囲だと……お前が使えない理由が無いだろ、だって呪文を唱えたら出来るんだろ?」
「……あぁ、単純な話じゃ」
サファイアは急に落ち着いて口に出す。
「パソコンで色々するなら絶対に必須のものがあるじゃろ」
「……?」
「電力じゃ……要は儂には魔術を行使するための魔力が無い」
弱体化中じゃから……と付け加え、サファイアは微妙な笑顔をした。
「なんせ儂は今脳味噌が無いからな」




