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邂逅

 蒼玉流星群、1000年前に流れそれ以来一度も流れていないが……文献には確かに流れたと書かれている。

 その流星に紛れて、京都の山中に一つの隕石が落ちたらしい。


「日本流星史だと全ての星がサファイアの様な美しい蒼色で、夜の間ずっと流れてたって話だな」


 一般的に知られていない蒼玉流星群だが、俺が知っているのはこの日本流星史という本を手に取ったからだ。祖父の家の倉庫で埃を被っていたのを俺が見つけた……作者は不明だが、ただ淡々と日本で見られた流星群を書き記されている物だった。そして現代では知られていない物もあったが、良く知られている物もあり、情報の正確性はあると考えるのが妥当だ。


「ほーん、じゃあその流星群の正体は儂の破片じゃな」


 そう言うのはサファイアと名乗る少女だった。

 つぶらな瞳は海よりも碧く、縦に巻かれた髪は空よりも透き通った蒼だ。服は山の中には合わない豪勢な青のドレス、靴も到底山を登ることのできない藍のハイヒール。

 身長はヒール込みで俺の首辺り……160センチと言ったところか。


「儂の本体はこの“核”なんじゃがな? 貴様ら人間が観測できとらんダークマターの一種で構成されたもんがこの核に付いとったんじゃよ、それが地球に落ちるときに全部はがれて散らばったんじゃな」


 そう言って目の前の隕石の上に座るサファイアは手でその核を叩く。

 はっきり言って普通の状況なら厨ニ病を疑うが、先程異常なものを見たばかりだったから信じるしかない。


 恥ずかしい話、俺こと畝観好汰(うねみこうた)は遭難していた、そして山の中を三日程さまよった頃だったか。

 真っ青な化け物と遭遇した。

 そいつは熊の様な見た目で、しかし足は蜘蛛の様な八本足。ギリシャ神話にアラクネってのがいるが、それの人間部分がクマになった様な存在だった。


 そいつと目が合った瞬間俺は死を覚悟し、必死に逃げた。

 背を追い続けられること約3時間だったか、日も落ち精神もすり切れた時だった。

 目の前に大きな石があり、暫くしてそれが自分の探していた隕石だと気が付いた。


 それを見つけ立ち止まったのが悪かった、後ろから迫る化け物に背を切り付けられ俺は隕石へと叩きつけられた。

 自分の命が消えるのをひしひしと感じた。

 少しでもその化け物から距離を取ろうとはいずり隕石に背を押し付けた時、サファイアが現れた。

 現れた瞬間サファイアはその青の化け物に手を触れると、化け物は粒子と化してサファイアへと吸い込まれていったのだ。


「つまりさっきの青いのは儂のパーツという事じゃな、どうやら勝手に意思を持って外敵を殺しとったんじゃろうな」


 五メートルはあるその石に座り、手でペチペチと叩くサファイア。


「……そう言えばそうじゃ、貴様何でこんな所に来たんじゃ?」

「………………え? 宇宙人に会いたかったから」


 隕石に乗って宇宙人がやって来るというのは、創作でも使われる割とメジャーな要素だろう。だからワンチャン現実でも隕石に宇宙人いないかなと思って隕石探しをしていたのだ。そして山で化物に遭遇した。


「ほう、じゃったらもう儂に会っとるではないか。なのになぜそう落ちついておる、目的の物を見つけられたのだから喜ばんか」


 そう言うサファイア。

 だが違う、違うのだ。俺が探していたのはこれではないのだ。


「……だってほらさ、宇宙人なのにうにょうにょしてないじゃん」

「………………は?」

「宇宙人って言ったら触手じゃないか、でもあんた見た目が完全に人間じゃないか……なんていうかガッカリっていうか、今からタコみたいな見た目になれないか?」

「病み上がりに無茶を言うでない」


 頭を抱えるサファイア。


「というか儂人間基準で大分可愛らしい見た目を今取っとるんじゃが、せめてなんかしらの感想を抱かんか。美少女じゃぞ!」

「いや、何というか女の子の見た目だと性的に興奮できない」

「なんつったんじゃ今?」

「だから、触手捕まえて『食道○通』とか『露○』プレイとか『○頂耐久』とかしようと思ったんだけど……探し直しだから」

「キッッッショいの貴様、今まで出会ったどんな生物よりも趣味がキショイぞ!!」

「そうか? 大分普通だと思うけどな?」

「だとしたら人間は一度滅んだ方がいいじゃろ!! 貴様が異常なだけなんじゃわ!」

「じゃあそう言う事だから、助けて貰ったのは感謝してるけどにょろにょろしてない宇宙人なら用はないんだ」

「まあ待て人間」

「バイバイ」

「『○○がま』とか『放○』とかしてやるから待たんかい!」

「いやだから人間には興味ないんだって」


 俺は一歩一歩隕石から離れる。

 人間に興味が無い、正確に言えば人間に対して性的興奮を覚えないというのが本音なのだ。


「儂の本来の姿はウニョウニョでニョロニョロな触手の――」

「――詳しく聞かせてもらおうか」

「貴様本当にキモいぞ、人間としてそれでいいのか」

「人間なんだから三大欲求には従うべきだろ」

「それは知性の無い猿がやる事じゃろ」

「じゃあ俺は猿でいい」

「人間の尊厳簡単に捨てるでないわ!?!?」


 それからごちゃごちゃとサファイアが何かを言っていたが、落ち着いたようで話を始めた。


「よいか、儂の本来の姿は無数の触手を持つ軟体生物じゃ。その体は地球に避難するときに散った青い奴で構成されとった」

「そうなのか」

「そして儂が完全復活、つまり触手の状態になるにはあの青いのを集めなければならないわけじゃな」

「じゃあ頑張って集めたらいいんじゃないか?」

「だが儂はここから動けないんじゃ、正確にはこの核からあまり離れることが出来ない」


 不便な体じゃ、と付け加えてサファイアは頭を抱える。


「じゃがしかしな、眷属がいると話が別じゃ」

「眷属?」

「要は手下じゃな、眷属がこの核を持って移動すれば制限は無くなるじゃろ?」

「……なるほど、つまり俺に眷属になれって言ってるわけだな」

「そう言う事じゃ」

「まあそうだな、条件次第じゃなってもいい……だが、俺はそんな大きい岩を動かすことは出来ないぞ?」

「ああそこは心配する出ない、小さい石に核を移すことが出来るんじゃ……一回すると暫く移せないんじゃがな」


 サファイアは手のひらサイズの石を手に取ってそう言う。


「それで、眷属になるかの?」

「条件次第って言ってんだろが」

「フッ、この天の川銀河の覇者に叶えられんことは無い……言ってみよ」

「じゃあ完全復活したら触手状態でセッ○スしてくれ」

「こいつストレートに性欲をぶつけて来寄ったぞ」


 マジにドン引いた顔で俺のことを見るサファイア。


「いや別にいいんじゃけども、ちょっとキモすぎるぞ貴様」

「そうか? 男なんてこんなもんだろ?」

「犬猫でももうちょっと繁殖以外の事考えとるじゃろ。流石人間じゃ、全知的生命体中で最も繁殖行為を行う生物なだけはあるの」

「繁殖だ? そんなもんの為に要求してんじゃねえ、ロマンだ、男のロマンなんだよ触手とセッ○スするのはな」

「そんな訳ないじゃろ、貴様は全銀河全世界全生物の雄に謝罪すべきじゃ」


 大きなため息を一つし、サファイアは持ち直す。


「よくもまあこのサファイア様にそんな要求出来たもんじゃな、普通宇宙の知識や魔術の知識を要求するじゃろ……じゃがよい。その条件で手を組もうではないか」

「じゃ、よろしく」


 そんなわけで、俺はサファイアの眷属になったのだった。

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