喫茶店員の推察
夏の暑さが潜んで、冷たい風が紅葉を巻き上げる10月の下旬
最上柳太は駅の近くの喫茶店「陶木」にて外の景色を眺めていた。
周囲からも見て取れるほど彼の面持ちはどこか不安げであっただろう。
彼自身気付いていないのか定員に頼んだ際、心ここにあらずと感じさせた。
「はぁ…」
彼の口からはため息ばかりが流れ出ていく。
「どうしたんだろう…」
と彼の注文を聞いてから心配そうに見守る店員が一人、名は浜花実里という。
彼女は彼がなぜあそこまで不安げな表情を浮かべているのかを推察してみようと思い、ちょっとだけ彼を遠巻きから眺めていた。
「あっ」
そして彼女は気づいたのだ。
なぜ彼が心ここにあらずでいたのか。
「すっごいしかめっ面でコーヒー飲んでるわ…」
そう、彼は凄い形相でコーヒーをちびりちびりと飲んでいたのである。
「…フフッ」
その顔がなかなかに傑作だったため思わず笑みがこぼれた。
その日の喫茶店での彼女はずっと笑顔だった。
まぁ、眺めた時間が長引きすぎて後に店長の陶木さんに怒られたのだが…。