6話 夕食
夕食ができたので3人で食べ始める。
「いただきます。」お姉ちゃんが聞きなれない言葉を言ったので、
「お姉ちゃん、何それ?」と聞いてみた。
「ん、何って?」
「今言った、いただきますとかってやつ。何をもらうの?」
「あぁ、この辺りでは言わないのかな?いただきますって言ってね食事や食事を準備してくれた人に感謝してこの食事をいただきますって意味だよ。」
「エマさんは、この辺りの出身ではないんですか?」
「はい、かなり遠いところから来ました。何年もかかるくらい離れてます。」
「えぇ~そんな遠くから来たの?歩いて来たの?」
「うーん、どうだったかなぁ。」
「自分で来たのに覚えてないの~?」と、私が笑ったらお母さんに失礼でしょって怒られた。
「まぁ、いろいろ事情があったんだよ。それより早くご飯たべよう。」
今度は3人で「いただきます。」と言って食べ始めた。
お姉ちゃんは食べたことが無いという麦がゆを最初に食べ始めた。口に入れた瞬間に固まった。
「どうしたの?お姉ちゃん。」
「あ、いや、マーサさん、もしかして調味料を忘れてたとか・・・?」
「調味料ですか?今日は鳥の血も無いので・・・」
「血?血をどうするんですか?」
「え?麦がゆに入れたいってお話では?」
「え?麦がゆに血を入れるんですか?」
「はい、少し生臭くなるのですが塩気がついてとても美味しくなりますよ。」
「塩を入れたりはしないんですか?」
「え、塩ですか?あぁ、この辺りでは塩は高級品でして・・・庶民の口にはほとんど入らないと思います。」
「そういう事ですか・・・」
少し考えたお姉ちゃんは、余ってるお椀がありましたよね。お借りできますか?と言って席を立った。
お椀をいくつか持って帰ってきたお姉ちゃんは席に座りお椀を自分の前に並べた。
「NaCl、NaCl」と呪文を唱えながら手を空のお椀にかざした。
するとお椀の中に白い粉の様な物が溜まっていく。
それはどんどん量が増えお椀に山盛りになった。
「魔法だー!」私は興奮して声を上げたが何が山盛りになったのか分からなかった。
「これは・・・何でしょうか?」お母さんが聞いた。
「塩です。使いやすい様に粉上にしてみました。」
お母さんが固まった。今日のお母さんはよく固まる。
「とりあえず、塩はこれ位あればしばらく持つかな。」と言って、余っているお椀を見たお姉ちゃんは少し考えて、良いアイデアが浮かんだらしく手をぽんっと打ってから、うまくできるかな?と言いながら呪文を唱え始めた。
「たしか・・・C12H22O11。」そう言って空のお椀に手をかざすと、また白い粉が現れた。
「塩?」と私が聞くと、「砂糖だよ。」と答えが返ってきたが聞いたことが無い単語だった。
「砂糖とはなんですか?」とお母さんが聞くと、お姉ちゃんは「いろいろ使えますが調味料の一つですよ。」と回答。
お姉ちゃんは塩と砂糖が入ったお椀をすっと私とお母さんの前に押し出した。味見しろって事かな。
私とお母さんはまず塩を一つまみ取り少し眺めてから口に入れてみた。
「しょっぱ!!」思わず吐きだしそうになった。
お姉ちゃんは私を見て、あははと笑っている。やられたっぽい悔しい。
お母さんは知っていたのか少ししか口にいれなかったらしく、ほうほうと味わっている。そしておもむろに麦がゆに手に残った塩をいれ口に運ぶ。
「美味しい・・・」お母さんがぼそっと言った。すぐに私はもう一度塩をつまんで自分のお椀に入れてみた。すぐに塩は見えなくなってしまったので入れた辺りの麦がゆをすくって食べてみた。あまりの美味しさにもう一口もう一口と食べたが2口目には塩の味はしなくなってしまった。もう一度、塩を取ろうとした時、お姉ちゃんからストップがかかった。
「砂糖の方も味をみてください。」
私とお母さんはそろって砂糖を凝視した。今度はひっかからないぞと思いながらさっきよりも少し少なめにつまみ口に運ぶ。
「甘い!!」お母さんと顔を見合わせた私はもう一度砂糖に手を伸ばす。
さっきよりも多めにつまんだ砂糖を口に入れ「すごく甘いよ!果物より甘い!」と叫んだ。
うんうんと頷いたお姉ちゃんは「麦がゆには砂糖も合うと思ったんだよね。」と言って、自分のお椀に少し砂糖を入れていた。
私も自分のお椀に少し砂糖を入れて食べてみた。
こんな食べ物食べたことがない・・・。ぐうの音もでないとはこの事だ。
この日は3人で甘いとしょっぱいを交互に楽しんだ。
夜、寝るときになるとお姉ちゃんは少し照れて抵抗したけど私がベッドに引っ張り込んだ。
お母さんは娘が二人に増えたみたいだと喜んでいた。




