22話 露見
私の横に立っていたエマが答えた。
「私は雷を操ります」
「ほう、雷を操るとは聞いた事がないな。クヴァント卿、卿は知っているか?」
「いえ、恐れながら私は聞いた事がありません。雷を操るという事は天候を操れるという事ですか?」
「はい・・・いえ、雷球を作り出し、そこから稲妻を飛ばします」
「興味深い!雷は見た事はあるが遠くに眺めた事があるだけだ。間近で見れるのか。楽しみだ。カルネの方はどんな魔法だ?」
「は、はい!私は石礫を飛ばします」
「ほう、ハーフェン男爵と同じだな。どちらが強いのだろうか」
クヴァント様は少しむっとした顔で言った。
「魔法使いとは言え彼女はまだ子供です。ハーフェン男爵が負ける事はないでしょう」
「ははは、すまぬすまぬ、そう怒るな。ハーフェン卿は騎士5人と対等に戦える強者だ。卿の言う通り比べるものではなかったな。してカルネよ、其方はまだ幼い様に見受ける。その齢で魔法を操るとは、どの様な修行をしたのだ?」
「わ、私は、毎日お姉ちゃんに教えてもらってます。発生させる現象を正しくイメージするように言われています」
クヴァント様が反応する。
「石を飛ばすと念じるのではなく、現象を正しく、ですか?」
「は、はい」
殿下が「姉とはエマの事か?姉妹なのか?」と問う。
「はい、エ、エマお姉ちゃんの事です。でも、お姉ちゃんは本当のお姉ちゃんではないです」
「なにか事情がありそうだな。その辺りは気が向いたら教えてくれ。エマは人に魔法を教える事ができるのか?」
「多少であれば」
「私にも教えてくれるか?」
エマがじっと殿下の顔を見る。
「申し訳ありません。殿下は魔法を使う事はできません」
「見ただけで分かるのか!?」
クヴァント様がガタッと音を立てて立ち上がる。
「ど、どの様な方法で見抜くのだ!?それも魔法か?いや先ほど雷を使うと言っていたな。いったいどのように?」
「クヴァント卿、落ち着け。エマよ。詳しく教えてくれるか?」
話がいけない方向に進んでいる気がする。
フライブルグ様の方を見ると固唾をのんでいるのが分かった。
「ええっと、まず相手の顔をじっと見ます。そうしたら魔法が使えるか分かります」
「説明になっておらんではないか」
エマがうーんと頭をひねりだす。
「まぁ良い。エマは見れば分かるという事だ。魔法とはそういう物なのだろう?クヴァント卿」
クヴァント様は納得がいかない顔で「そのとおりです。ですが」と続ける。
「もし見ただけで魔法が使える者を選別できるのであれば、民に紛れた能力者を見つけ出す事ができます。その者達を集めれば強力な部隊を編成する事ができます。我が国の軍事力を飛躍的に向上する事ができます。」
「ふむ、確かにそうだな。エマよ、魔法使いとはどの程度いるものなのだ?」
「普段は他人の顔をじっと見る事はないので良く分かりません」
「まぁ、そうだな。では質問を変えよう。この部屋の中に魔法を使える者はいるか?」
「私とカルネとクヴァント様です」
殿下がフライブルグ様を見る。クヴァント様が魔法使いである事を伝えたか確認しているのだろう。
「私はクヴァント殿が魔法を使える事をエマに伝えておりません。誰かエマに伝えた者はいるか?」
誰からも返事はない。
「エマの力は本物のようだ。面白いな。これは父上に報告する必要があるか」
「至急、ご報告した方が良いかと」
「そうだな、だがまずは二人の魔法を確認するのが先だ。フライブルグ卿、いつ確認できる?」
「ただちに場所を準備いたします。明日までお待ちいただけますでしょうか」
「ここの訓練場では駄目なのか?」
「はい、エマの魔法は危険であるため広い場所が必要になります」
「分かった。準備を頼むぞ」
退出する時、フライブルグ様に尋ねてみた。
「訓練場で行う予定だったのではないですか?」
「エマが魔法使いを見抜けることがばれてしまった。取り込もうと争いが起きるのは確定だろう。ならば中途半端は駄目だ。力を示して退けるしかない」




