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神様のなりかた  作者: フルーツ牛乳
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17話 姫様独演会

「そしてフェリックス様は、無辜の民を傷つける事はあいならぬ!と叫ばれ一人、ゴブリンの群れに飛び込まれたのです!目の前に迫るゴブリンを一刀のもと切り捨てると、返す刀で2匹目を屠られました!しかし!既にエマ様とカルネ様の元へゴブリンが迫っています!フェリックス様は周りのゴブリンに目もくれず先頭のゴブリンめがけ風の様に駆けるのです!」


今は晩餐の席で姫様の独演中だ。

この娘は歌劇好きで特に英雄譚を好む。普通の女の子なら恋愛ものだろう?

茶室でエマとカルネに助けられた話をしたところ食いつかれ、事細かくインタビューされたのだ。

そして姫様の中で再構成された話をフライブルグ様と奥様に絶賛報告中だ。

かなり盛られている。


「その時です!カルネ様は、心正しき者よ、今ここで朽ちる事なかれ。と仰られ、魔法で近くにあった大岩を使いフェリックス様に覆いかぶさるゴブリンを打ち砕いたのです!」


カルネの顔が笑顔のまま引きつっている。


「エマ様は、悪しき者に正義の鉄槌を下しましょう。と両の手を空高くかざしました!するとどうでしょう、それまで晴れていた空には暗雲が立ち込め周囲が闇に包まれたのです!ゴブリン達が恐れおののき動揺を見せた時です!雲がカッとひかり一本の稲妻がゴブリンを貫いたのです!ゴブリン達をその光景をみて腰を抜かし倒れていきます!しかし!正義の鉄槌はそれで終わりません!」


エマは肉をくわえたまま目が泳いでいる。


「ははは、見事な英雄譚だな。フェリックスよ、報告よりずいぶん詳しい話だったがこの通りだったのか?」


「盛ら・・・脚色がされていますが概ね正しいかと・・・」


「わたくし、この話を伺ったときは感動してしまいました。いつか本にしたためたいです」


恥ずかしいのでやめて頂きたい!!


奥様が「ルイーサ、素晴らしいお話を聞けてよかったですね」と言って微笑んでいる。


「お父様!明日、エマ様達に魔法を見せてもらうのですよね?」


ちらっとフライブルグ様に視線を投げられた。あぁ、姫様それ以上はやめてください。


「わたくしも見に行っては駄目でしょうか?」


「う、うむ・・・まぁ、いいだろう」


この人、娘に甘いんだよなぁ。


「わたくしも良いですか?」奥様が乗ってくる。


「しかたないな。明日の朝食後、訓練場に来なさい」


奥様と姫様がやったあと声を上げる。

奥様と姫様の明日の予定が決まったところで晩餐はお開きになった。


翌朝、訓練場には訓練場が使えないことを知らなかった騎士達が集まっていた。

何があるのかと興味津々の様子で帰る気配はない。


「フライブルグ様、追い返しますか?」と聞いてみる。


「うむ、いや、皆魔法を見る機会等無いだろう。戦場でいきなり見る事になるより今見ておいた方が良い」


「承知しました。では始めましょうか。まずはカルネちゃんからだ。弓の的では威力が分からないか・・・」


そこで近くにあった小楯を持ってくる。木の板を2枚重ね周囲を鉄の枠で囲ったものだ。

ゴブリンの頭蓋骨を貫いたのだ。これくらいはいけるだろう。

小楯を訓練用の木人形に固定する。


少し離れてからカルネに合図を送る。

しばらく待っても何も起きない。

「どうしたんだい?」と声をかけると「飛ばせそうな石がない」と返事が返ってくる。

あぁ、訓練場はこけても怪我をしないように目につく石は全て取り除いている。

どうしようかと考えているとエマがレンガを持ってきた。


「カルネ、これくらいならいけるんじゃない?」


と言ってカルネの前にレンガを置く。


カルネが行きますと声をあげた瞬間、目の前からレンガが消えた。

木人の方から聞いた事のない轟音が鳴り響いたので、振り返ると小楯だった物とレンガの破片と思われる石が突き刺さった木人があった。

その場の空気が凍り付く。


「カルネ、初速は良いけどもっと引っ張る様に長く力をかけ続ければ威力があがるよ」とエマがコメントを始める。


「わかった」とカルネが返事をする。


え?今のでも威力が足りないの?

フライブルグ様は顔が引きつっている。

奥様と姫様はすごい!と喜んでいる。


可哀そうなのは戦場でこれを相手にしなければならないだろう騎士達の顔だ。

完全に血の気が引いてしまっている。


「ま、まだ威力はあがるのかね?」フライブルグ様がカルネに尋ねる。


「れ、練習中なので分からないですけど、ま、まだいけると思います」


フライブルグ様は少し考えてから近くの騎士に板金鎧を持ってくるように言う。

しばらくして騎士が板金鎧を持ってきて破損した木人形の前に置く。


エマが新しいレンガを置きながらカルネにアドバイスをする。


「イメージする時に声に出したり身振り手振りを加えるのも良いよ」


するとカルネは何度か手を振ったり押し出したりしながら考えた後、いきますと言った。

今度は見逃さない様に的になった板金鎧に注目する。

弾ける様な音が聞こえたと思ったら空中を舞う板金鎧が見えた。

板金鎧はそのまま空を飛び木人形に当たり跳ね返って地面に落ちた。


その場にいた全員で板金鎧に近づいて検分を始める。

その時、先ほど板金鎧があたった木人形が倒れた。

息を呑んでから板金鎧を見る。

すると板金鎧の胸にはレンガの形をした穴が開き、背中には砕けたレンガが突き刺さり、その形を変えていた。


「今のは良かったと思うよ」とエマがのんきな言葉をカルネにかけている。


「身振りを加えたのが良かったみたい」とカルネ。


他の誰も声がだせない。

当たり前である。

数ある鎧の中でも最も固い板金鎧に穴をあけるという事は、この攻撃を防ぐためには避けるしかないという事、つまりは裸で戦場にいろと言われているのに等しい。


しばらく固まった後、フライブルグ様は、はっとしてエマの方を見た。

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