14話 領都
もうすぐ、領都フライブルグに着くというところで荷車の上のエマが聞いてきた。
「あれ、これ小麦ですよね?今頃 実がなるんですか?」
「私も農業は詳しくないんだけど、これは冬小麦だね。初夏に刈り取りだと聞いたことがあるよ。」
「小麦は秋に収穫するものだと思ってました。」
「それは春小麦だねぇ。多分、別の場所で植えてるんじゃないかなぁ。」
「たぶん?」
「私は王都生まれの王都育ちだから、この辺りは詳しくないんだ。」
「あぁ、王都の憲兵隊でしたね。じゃあ領都に着いたらお別れですか?」
「そうだね。早く原隊復帰しないと居場所がなくなってしまうよ。」ははっと笑う。
「そうですか、せっかく仲良くなれたのに残念です。」
「ありがとう。君達が王都に来た時は声をかけてくれれば案内するよ。」
「わ、私にも声をかけてください!ぜひ私も王都の案内をさせてください!」
復活したフランツが声を上げる。顔が少し赤くなっている。分かりやすい奴だ。兵士からも生暖かい眼が注がれる。
しかしフランツは良いのだろうか。いくら可愛いといっても40匹のゴブリンを秒殺する相手だぞ。尻に敷かれる未来が目に見える。まぁ、恋は盲目だと言うしな。あまり考えてないんだろう。
「ありがとう!王都に行った時は必ず会いに行きますね。」
エマがにっこり微笑むとフランツはみるみる赤くなっていった。
エマちゃん、罪作りな子だよ。
そうこうしている間に領都の城壁が見えてくる。その大きさにエマとカルネは目を見開いている。
「見えてきたね。あれが領都フライブルグだ。」
近づくにつれ城壁はどんどんと大きくなっていき見上げる程の大きさになった。
城壁の周りには堀も作られており、かなり堅牢な城塞都市になっている。
二人の目は上から下に向き堀の底を見つめている。
「フランツ、手続きを任せていいか?」
「はい!お任せください!」
張りきったフランツが馬を飛び降り城門に走っていく。
しばらくして衛兵と思われる兵士とフランツが駆け戻ってくる。
「フェリックス卿、任務お疲れさまでした!それで子供を二名保護したと伺いましたのでいくつか確認と手続きをさせていただきたいのです。」
「任務ごくろう。保護したのはそちらの荷車の上の二人だ。それと身綺麗にした後フライブルグ様にお目通りしたいので連絡も頼めるか。」
「はっ!承知いたしました。では確認が完了しだい連絡を走らせます。」
衛兵が二人に質問を始める。
しばらく待つと衛兵は「ご協力ありがとうございまいた!お通りください!」といって敬礼をすると城門に走り去った。
「まずは兵舎に行って荷物をおろすよ。その後、風呂屋と服屋だな。」
「風呂って何ですか?」とカルネから質問がきた。カルネから話しかけられるのは珍しい。
「風呂っていうのは身体を綺麗にするところだよ。君たちも身体を拭いたりするだろう?そのためのお店さ。さっぱりするよ。」
「あの、領都で服というのはいくら位しますか?少し財布が心もとないのですが・・・」今度はエマが聞いてきた。
「あぁ、大丈夫だよ。軍の経費で落とすから私が出しておくよ。」
はっきり言って領主と面会するのに必要な服を平民が買えるわけがない。
ただでさえ服は高級品だし、それが貴族から不快に思われない程度の服となると平民の年収を軽く超える。
普通は平民に服を買い与えるために経費等使えるはずもないが二人は魔法使いだ。後の事を考えれば必要経費といえるだろう。
私とフランツは兵士達に荷物の片付けをまかせ、エマとカルネを連れて街に出た。軍の宿舎にも風呂はあるが二人がいるので風呂屋に案内するついでに自分達も風呂屋で風呂に入るつもりだ。二人とも初めての領都に興奮しているのかきょろきょろとしている。ただカルネが少しびくついているのが気になる。
風呂屋に着くと番台の女に「二人は初めてだから面倒を見てやってくれ」と言って多めに代金を渡す。
風呂から上がり店の外で二人を待つ。女の風呂が長いというのは本当だった。
二人が店から出てきたところで声をかける。
「さっぱりしたかい?」
「はい、サウナだとは思いませんでした。」
「サウナ?って何だい?」
「あ、私の故郷ではこういうお風呂の事をサウナっていうんです。」
「つまり、これ以外の風呂があるって事かい?」
エマが気まずい顔をしている。変な事を聞いただろうか?そう思ってフランツの方を見てみると真っ赤になって固まっていた。




