11話 ゴブリン
「フェリックス様、そろそろ目撃証言のあった山が見えてくるそうです。」
現地の案内人から報告を受けたフランツが話かけてくる。
「そうか、今回はゴブリンが5匹という事らしいが気を抜かぬように。」
「はい、小規模とは言え私は初陣ですので少し緊張します。」
「ははは、まぁ初陣は誰でも緊張するからな。少し肩の力を抜け。」
「フェリックス様も初陣では緊張されたのですか?」
「あぁ、緊張しすぎて頭が真っ白になったな。」私は肩をすくめる。
「今のフェリックス様からは想像できませんね。」フランツが笑う。
聞き耳を立てていた兵士達からも笑いが漏れる。
「何事も経験という奴だな。」
「フランツ様は後ろでどっしり構えていてくださればいいんですよ。戦うのは我々にお任せください。」兵士の一人から声がかかる。
「そうだ、フランツ。彼等は歴戦の兵士だ。よほどの事が無い限り彼等に任せておけば大丈夫だ。」
「ありがとう皆さん。ですが私も戦果をあげたいのですよ。」
「おいおい、従士の役目を果たしてくれよ。」
また周りから笑いがおきる。
そうこうしている内にゴブリンが目撃された山の入り口に到着した。
ここからは道は無く山を登る必要がある。
近くに馬車のための休憩広場があるので、そこに小荷駄を止めミーティングをする。
まず案内人に山の地理と状況を説明してもらう。
各自状況が頭に入ったら偵察を行う。地形から考えて5方向に偵察を出すことにした。
偵察はツーマンセルが基本であるため10名で偵察をする事になる。
今回は1小隊で作戦を行うため、小隊12名と小荷駄の護衛2名、そして私とフランツ、案内人の総勢17名だ。
ゴブリンの状況が分からないため 一応 野営の準備も行う。
山の中は鬱蒼とした森になっているので、振り回しにくい槍は置いていくように指示をだす。
必然的に偵察隊の装備はグロッセダインという大型の鉈になる。
手早く指示を出し準備を進めていく。
準備が完了し、いざ出発というところで兵士の一人から声がかかる。
「ゴブリンがいます!数は2・・・いえ7・・10以上います!」
まずい!数が報告の倍いる上に先手を取られる。
「全員、荷馬車まで下がれ!急げ!乱戦になる前に陣形を整えろ!横陣にて様子を見る!」
全員、全速力で小荷駄まで戻りゴブリンとの距離を取る。
もしゴブリンが10匹なら1匹に対して1人が抑えている間に後ろから残りの人数で叩けば勝てる。
10匹なら・・・
横陣でゴブリンの全容が見えるのを待つ。
次から次へとゴブリンが現れる。
20匹を超えたところで新たに指示を出す。
「円陣に変更!後ろを取られるな!小荷駄の護衛2名は弓を持って円陣の中から撃て!案内人!走れるか!?村まで走り領都から援軍を呼べ!」
フランツから20匹なら勝てるのでは!?と声がかかる。
「確かに20匹なら勝てるだろうがこちらの被害も大きくなる。それに・・・まだ増えるだろう・・・」
フランツが息をのむ音が聞こえる。
見込みが甘かった。
10匹見えた時点で全力で逃げれば逃げ切れただろう。
しかし、それではゴブリンの全容は分からなかった。
ならば待ち構えた場所が悪かったか。馬車の休憩広場で待ったことで自ら逃走経路を閉ざしてしまった。
いや、反省は後だ。まずは目の前の状況から抜け出さなければ・・・
ゴブリンの武器は石斧やぼろぼろのナイフだけ。
こちらは荷馬車の護衛が機転を利かせて全員に槍を渡してある。
無理に攻撃をしなげればリーチ差があるのでかなり時間が稼げるだろう。
「全員!無理をせず時間を稼ぐぞ!奴らのスタミナを奪え!」
「応!!」と返事が返る。
経験の豊かな兵士を貸してくれた上司に感謝を送る。
接敵してもすぐに戦闘は始まらなかった。
ゴブリンはこちらの様子を見ながら周囲を囲んでいく。
そして一匹のゴブリンが近づいたところに槍を打ち込んだのを合図に戦闘が始まった。
兵士達は槍で牽制してゴブリンが近づかない様にする。
それでも中には槍をかいくぐって近づくゴブリンがいる。
そんなゴブリンを小盾で叩き押し返す。
小荷駄の護衛も弓を撃つが前衛の間から撃つことになり射線が取れず当てる事が難しい。
隙を見せたゴブリンを3匹ほど倒したが戦闘は膠着し小競り合いが半刻続いた。
そうする内にゴブリンは増え40匹を超えた。
かなりまずい・・・勝ち筋が見えない。
兵士達もかなり疲労してきている。
そんな時フランツが負傷した。
ゴブリンが投げたこぶし大の石が頭に当たったようだ。
すかさず荷馬車の護衛がフランツを円陣の中に引っ張り込む。
フランツに追い打ちを掛けようとして近づいてきたゴブリンを袈裟切りにする。
フランツの容態が気になるがゴブリンから目を離せない。
考えろ。この状況を打破する方法を。被害を出さず・・・は無理か。なら最小の被害で・・・
兵士の声が思考を中断させる。
「子供だ!2人いるぞ!まずい奴ら気づいたぞ!」
よりによってこんな時に!近くの村の子供か!?
見捨てる選択肢はなかった。
気が付いた時には私は飛び出していた。
「うおおおお!!」
気合を発し目の前にいるゴブリンを1匹2匹と切り倒し子供に向かっているゴブリンを追いかけた。




