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永人  作者: 彪
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其ノ壱 絲口

 果てない大空に星々がきらめくよう-


 太陽は昇り、沈み続けて-


 海が時代を超越()えた舞踊で引き潮と流れが如く-


 地球はいつも透りに新たな土を耕し-


 ただし、我々は前進し続けねばならぬ。未永(みらい)が手招きするからだ。

 

 

 ごとごとーばちんーがあんー


 肉欲の暗然たる空を引き裂く眩いばかりのイナズマの閃光に照らされ、みつりんのさらに別のお祝いの夜であった。大洪水が地を襲い、密集した葉ノ間を通り抜けるのが不都合になってしまった。雨が葉を激しく打った為、視界は事実上存在せず、耳あてを被っていなかったら耳が焼けていたのであろう。しかし、コリアーは怯まなかった。天候の挑戦を楽しみつつ、熱意は耳に届いた総てをかき消してしまった。このような挫折には奇妙な美しさがあった。


 コリアーは木から木へと跳躍し、前方の喧嘩をよく見ようとし、方向感覚を失った男たちの必死の叫び声と颯々の音、それに弾丸が空気を満たしたが、静脈の血を揺さぶっただけであった。木の太い根の後ろに隠れて、うつぶせになり、小隊の残りが追いつくのを待っていたのだ。 俗事に過ぎないんだよ。


 「守宮(ゲッコー)、来い!」


 守宮(ゲッコー)は副司令官が闘いの喧噪の途中で呼吸(こえ)を聞く可能性が低いのを充分に分かってたので、それらの(ことば)を肩越しに投げかけた。 コリアーは、この遊撃の見通しに興奮し、目が眩むのに忙し過ぎたのだ。STELLARの支援に最初に関与し、HQでの諜報支援と機会の両方が与えられた機会であった。注目を集める任務は、よくやった仕事に対して充分に値する昇進をもたらす運命にあり、それが逃すことができなかった機会であった。


 密林の奥から微かな叫び呼吸(こえ)が聞こえて、コリアーはにやりと嘲った。 (カスガイ)はすぐに追いついたので、残りはそれほど遅れていない筈です。一時間か二時間でこれを終わらせることが出来るものであった。 これまでの他の全ての使命と同様に、この使命にも満足していた。 予定より早く帰れるということは、次の使命までに休む時間が増えるということだ。 然し、もっと重要なことに、これは軍事施設や宗教施設の壊滅だけを伴わない最初の物であったみたい。 ほぼ2年振りに一度だけ諜報支援を必要とする注目を集める任務を割り当てられたのだよ。 今日は良い一日のように感じて、コリアーはすぐに、おしゃべり好きの友人に怒鳴り返したことだ。


 「アルファ!」


 「行政(エックス)(オー)進行、覆ってくれ!」


 「任せてよ」


 葉ノ騒めきと枝ノ折音(おりおと)が密林の一帯に、忍び声で囁き交わす。(カスガイ)は葉から出てきた(とき)の自到来を告げたよう。正真正銘の密林の化物(いきもの)なんだった。 されども、コリアーに自然な迷彩を賞賛するほど、時間を与えられなかったのだよ。位置を通り過ぎる前に、静かにうなずきし、一発回答に転向した銯は、最前線での地位を取り戻した。 コリアーは銃尻を鎖骨にできるだけ力強く押し付け、遥か彼方に向けて発砲してやがった。ぼんやりと銯が十字砲火に勇敢に立ち向かおうとした(とき)、小枝が折れる音が鳴り響いた。


 (なんという大胆不敵な態度であろう)コリアーはその部分を最も賞賛したことだし。(また共に仕事ができると、嬉しく思うんだぞ)


 「待て! レンフレッドよ、あいつ...」と『ルミス』は大声で叫び、葉っぱから跳び出した。 ルミスは急いで斥候兵の横に膝まずいた。


 「あいつはかなり深く打たれたんだ。包帯が必要だろう。」


 ルミスは脚を転がし、ボロボロのズのボンから血液が出まくって、恐ろしい切り傷を見せた。恐らくルミスの内腿の周りの筋肉を細断した漂流した(から)からだった。


 「後方衛生兵は一体どこだ?」


 「かれらとの最後の連絡は『PIT』の近くでした。今は戻って再編成する時間ではないです」


 「クソ、なぜ今は」


 コリアーは状況を嘆き、規約に基づいて、戦闘力を維持する為に最後の知られるチェック・ポイントに撤退する必要がありましたが、コリアーは絶対にやりたくないことであった。兜を片手に、副武器とした銃を準備万端整えて、司令部に戻って通信を開始した。


 [七心(セブン・ハーツ)、パパ-・インディア-・タンゴ、通信チェック]


 相手側が完全に沈黙していた。


 [七心(セブン・ハーツ)、パパ-・インディア-・タンゴへ、了解?]


 ビリビリッー


 [進み続けろ]


 「なるほど、それが意外だったぞ。 しばらく待っててな、レンフレッド」コリアーは傷口の真上に銃口を向けて発砲し、引き裂かれた皮膚を通り抜ける発光の糸ノ束を解き放ってやがった。


 糸がぴんと張ると、周囲の空気が不可思議な勢力に溢れ出し、パチパチと音を立たせ、簡易に元に戻り、疵の痕跡を残しもしなかった。それが相変わらず(いた)の無い技術であり、織り銃が何度も役に立ったからだ。


 「ありがとう、コリアー、君が相変わらず命の恩人だな」とレンフレッドが言った。


 レンフレッドの声は安堵したようなものであった。


 「お前と同様に、俺も自分の役割を果たしているだけだな。残りは俺たちに任せてくれ」とコリアーは、前のチェック・ポイントに戻るよう後方部隊に合図を送りつつ、温もりの微笑で答えた。


 「ホントに大丈夫なのか?俺たちがいなくちゃ、お前らたった4人になるだろう」


 コリアーは少しの間立ち止まり、側で断乎として不屈不撓の身構えで立っている他の2人に視線を向けた。


 (クリフォード… パーシヴァル…)


 コリアーは自分の(からだ)に沸き上がる武勇を感じてきた。同志供の顔の決定的表情で揺るぐことが出来なかったのであった。コリアーは拳をキツく握り締めた。


 「まあ、選択肢はないよな?」とコリアーはニヤリと嗤い出しに言って。


 「俺たちのことはもう充分だろう。まず自分のことを心配してくれよ。この織り銃は出血を一時的に止めるのしか出来ねぇよ。ゆっくり休んで回復して、また戦場で会おうぜ。」


 レンフレッドは目を輝かせて微笑み、銯が先に進むよう同志に呼びかけて、コリアーはレンフレッドが立ち上がるのを助け、前線の後ろ、安全に連れ去られるのを見守った。


 「お前がいつでもそうだったよね?俺ら自身の新緑の戦士だ」と彼は茂みを出て叫んだ。


 それはコリアーが長年聞いたことがなかった敬称であり、その名声と名誉に浸っていたより古き良き時代の懐かしい反響であった。しかし、階級が半分になった今、兵士たちの決意は高まるばっかりであった。無駄な時間はなかったのだ。


 「さあ、行くぞ」

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