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5:共生か寄生か


「《燃えよ(イース)》」



 薙ぎ払われた木の根の一撃を軽く躱し、動く切り株型のモンスターに至近距離で魔法を叩き込むと、切り株が燃えて消滅するのに合わせて本日何度目かのレベルアップの表示が現れた。

 なんだかんだ1時間くらいは戦っているので、レベルも相応に上がる。


 戦闘の合間合間にちょこちょこ確認してたけど、ステータスは差分表示ができるようなのでここで一度レベル1から比較してみよう。

 減った空腹度を回復するために《燃えよ(イース)》で焼いた猪肉を食べながらステータスを開く。



――――――――――――

 PN:ロダメア=アレキサンドラ

 LV:1→10

 種族:ティムシーカー

 職業:魔法使い(4)

 HP:100→110

 MP:50→203+20

STR:10→11

VIT:10→11

DEX:10→18

AGI:10→14

MND:10→14

LUC:10→18

――――――――――――



「やっぱ上がり方極端だな……」



 魔法特化な種族の時点でわかっていたことだけど、MPだけ異様に伸びている。次点でHP……いや、初期値が違うことを考えるとHPは十分の一、MPは五分の一すると比較できる?

 ……って考えるとHPは実質11でSTRやVITと同じ上がり幅か。これもしかして最低値だったりしない?

 体力と耐久力が最低値って紙装甲すぎてシャレにならない気がする。

 ちなみにMPの+20は職業ボーナスらしい。つまり今のMPは223。


 いくつか魔法も増えているのでそっちも確認する。

 魔法使いの職業レベルが上がったことで会得した水属性単体魔法の《ウォータースプラッシュ》と風属性単体魔法の《ウィンドスパイラル》。そしてレベルアップとは関係のないところで会得した、《燃えよ(イース)》の上位版と思しき《万象燃えよ(ファヴラ・イース)》。



「上位版なら相応に強いんだろうけど、今は《燃えよ(イース)》で事足りてるからなぁ」



 雑魚敵への攻撃手段としては少し過剰になると思うので、まだ《万象燃えよ(ファヴラ・イース)》は使ってない。MP消費量で威力が変わる以上、上位魔法を手に入れたからといってすぐにそっちに乗り換えるというのはあまり効率的ではなさそう。上手く使い分けられればいいんだけど。


 使い分けといえば、ここまで戦ってみて《燃えよ(イース)》は《ファイヤボール》に比べて威力が高い分距離に応じたダメージの減衰がキツいっぽいことがわかった。

 どちらかというとインファイトの方が得意なので《燃えよ(イース)》を多く使いそうな気がする。インファイトならもっと良い構成ありそうだけど……まだその辺りの特化とかは考えなくてもいいか。まだ基礎職だし。


 猪ステーキの最後の一欠片を口に放り込んで、近づいて来たモーヴフラワーに《ファイヤボール》を放つ。声に出してないので威力が下がっているけど、それなりにMPを使ったので一撃で倒せた。


 MP消費量の指定はまだそこまでうまくできていない。現時点だと弱い、普通、強い、めちゃくちゃ強い(MP全消費)の四段階くらいで、全消費以外は結構ブレがある状態だ。無指定だとその魔法を使うのに必要な最低MPで魔法を撃てるので、それを入れると五段階。一桁単位で指定できるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。



「さて……そろそろ経験値も美味しくなくなってきたんだけど、全然ボス出てこないな」



 猪型モンスターを一定数倒すと出現するらしいけど、何体倒せばいいんだ?

 レアなモンスターではないから猪自体はすぐに見つかる。

 名前はブルームボア。身体に花が咲いている猪で、このエリアのボスと戦うために狩る必要のあるモンスターだ。

 身体に咲いている花の色が青色なのを見て杖を構える。青い花のブルームボアは突進攻撃が主体なので、一発魔法を入れてから突進してきたところを――


「いや速っ!?」


 予想以上の速度の突進に対し、私は咄嗟に地面を蹴って横に跳ぶ。地面を一度転がって姿勢を直し、猪をみる。その身体には青い花がいくつも咲いていて……その中に一輪、黒い花が咲いていた。


「パラサイテッドの方か……!」


 ブルームボアにはいくつかの種類があり、それぞれ体表に咲いた花の色から判別することができる。

 例えば赤い花の個体はかなりアグレッシブに攻撃を仕掛けてくるし、青い個体はすばしっこい。


 その辺は色が違っても全てブルームボアと表示されるけど……唯一、体表に咲いた花の中に黒い花が混ざっている個体は明確に別種として設定されていた。それがパラサイテッドボアだ。


 ブルームボアが花と猪の共生的存在なのに対し、こちらは猪が花に寄生されている状態。よく見ると目は虚ろだし、頭部に根っこが刺さっていたりする。



「完全に気抜いてたな……名前確認すればすぐに分かるのに」



 まあ、青色は魔法使い的にはそこまで苦労せずに倒せるので最初さえ回避できればどうにでもなる。

 《サンダーアロー》で動きを鈍らせつつ、《燃えよ(イース)》や《ファイアボール》でHPを削っていく。それを繰り返して撃破。簡単だった。


 青色は簡単に倒せたけど、攻撃がめちゃくちゃアグレッシブな赤色や体力の多いオレンジが相手だともっと苦戦する。まあ青色も近接攻撃しか持ってないプレイヤー的には結構厳しいと思うんだけど、遠距離攻撃手段さえあれば容易い。



「とりあえず回収っと」



 ドロップアイテムを拾っていると、不意に通知音が鳴った。メニューを開いてみると、小白からのメッセージだった。どうやら今からログインするらしい。

 キャラメイクとか色々あるからすぐに会えるわけではないだろうけど、とりあえず今いる場所を教えておく。


 ついでにあるフレンド(本体設定で通知が来ないようにしている)から連続で送られてきていた30件のスパムメール……もといメッセージをゴミ箱に放り込んでおいた。


 さて、もう少し猪狩りを続けるか……と考えたところで、奇妙な違和感が私を襲った。なにかがずれたような、一瞬思考が途切れたような独特の感覚。



「……ラグか?」



 他のゲームを基準に考えれば無いに等しいラグではあったけど、昔やったゲームに一瞬のラグで即死ギミックを判別して回避しないといけないものがあったので認識できてしまった。なんか嬉しくないな。


 ラグが起きる状況にはいくつかパターンがあるけど、通信環境でラグるならもっと早い段階で起きててもおかしくないし、周囲に人がいないから同期関連のラグでもない。


 イベントシーンか、モンスターか。とにかく何かが来る。

 そう身構えたのと同時に、森の奥から低く唸るような声が響いた。声は徐々に近づいてきて、更にズシンと重い足音が聞こえてくる。

 身構えてから十秒ほどで、音の主は木をへし折りながら姿を現した。

 陽の光を受けて煌めく長い牙と、光の宿った瞳。その身体は今までに倒した者とは比較にならない程に大きく、表皮を色とりどりの花が覆っていた。


 ボスモンスター、フラワリングボア。

 その咆哮は木々を揺らし――戦闘が始まった。

回復魔法はMNDを参照するのでティムシーカーはヒーラー適性そんなにないです。

とは言えこのゲームは職業に応じてステータスがプラスされるので、一部特殊な例を除いてどの職業でもまともに戦えるようになりますけど。ティムシーカーの戦士とかもあり得ます。

ちなみに《水よ滴れ(フーラー)》は例外的にMP消費量のみで効果量が変わるけど素の効果量が低いのでお察し……というか一撃でごっそり持ってかれる紙装甲にリジェネは相性が悪い。

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