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11:渡りに泥舟



「なんか……もう手に負えなくないかこれ」



 ヴィムファロジカを撃退した後、私たちは今までに遭遇した情報を整理しようとして……匙を投げた。

 ユニークモンスターとかアステリズムクエストとか、そもそもそれがなんなのかを知らない状態で一気に情報をぶち込んでくるからどうにもならない。

 さっき表示された『精霊恢帰』とやらはクエストリストに載っていたけど……


――――――――

精霊恢帰

アステリズムクエスト


今は語られることのない物語

――――――――


 ……こんな感じだ。なにか前提クエストがあるのか、正式な受注条件があるのか。

 そもそもこれ以外にクエストを受注したことがないからその辺もよくわかってない。



「誰か経験者の力でも借りられたらいいんだけどな~。メアちゃん、アリフラやってる友達とかいない?」



 いない……と言いたいところだけど、実は一人いる。まあこれまでにいろんなゲームをやって来たのでお互いに名前を知ってるくらいの人間ならアリフラにもちらほらいるんだろうけど、安定して連絡が取れる中で確実にアリフラをやっている人間となるとその一人に絞られるという感じだ。

 一応あっちから連絡は来てたし会おうと思えば会える。メッセージ全部ゴミ箱に捨てたけど。


 四季森林でルナに返信したときについでにゴミ箱にぶち込んでおいたスパムメール……もとい、メッセージから適当に一つ選んで復元し、中身を見てみる。



――――――――

件名:高額配当!

差出:ヒメユリ


いまこのメッセージを受け取ったあなたは幸運です!

60秒で数百万円を稼ぐ私のメソッドを特別に大公開!

たった5万円の授業料で、数日後にはあなたも億万長者!

このチャンスを逃していいんですか?

申請の際にはアリスフィア・フラグメンツにてヒメユリにフレンド申請を!

――――――――



 閉じてすぐにゴミ箱にぶち込む。スパムメールじゃん。訂正する必要なかったわ。



「ど、どうかしたの?」


「何でもない。アリフラの経験者なら一応、私のリアフレに一人いる……けど、できれば借りを作りたくないんだよな……」



 でもまあ、背に腹は代えられないということで……いや、頑張って背に腹を代える方法を探したほうがマシなんじゃないか?

 なんて考えていると、ルナが私に意外なものを見るような目を向けていることに気付いた。



「どうかしたか?」


「いや、メアちゃんって私以外に友達いたんだなって」


「最短距離で心(えぐ)るのよくない」



 流石の私も傷つくぞ。まあ実際高校入ってからまともに喋ったのは小白くらいだけど。



「ちなみにその人って私も知ってる人だったりする?」


「高校同じだし同学年だから名前くらいは知ってるかもな。……まあその辺は本人の口から」



 話しつつ、今から何処かで話せるかというメッセージを送る。1分くらいで返信が来た。

 最初の街エアリーズから少し東に行ったところに月泉小湖(げっせんしょうこ)というランドマークがあるらしく、そこで話したいらしい。

 アイツにしてはまともなメッセージだ。一番最後に「ムラサキカガミ」って書いてあることを除けばな。

 本文に「イルカ島」とだけ書いて返信。ふと気がつくと、ルナがなんかニヤニヤしながらこっちを見ていた。



「んー……嫌がってる割には結構嬉しそうだよね?」


「ひっぱたくぞ」



――――――――



 地図を頼りに道をゆき、私たちは月泉小湖を訪れた。ここはエリアとかじゃなく、目印的に小さな湖があるだけだからか人はほとんどいない。

 ただ一人だけ、妙に派手な格好をしたプレイヤーがいた。


 ふわっとした半透明のベールと、金色をベースとした装飾。藍色の長髪を括ってポニーテールにしていて、その先には円形のアクセサリーのようなものが結び付けられている。なんというか、踊り子とイメージしてすぐに出てくるような見た目だ。

 というかベールが透けているので結構露出度が高い。ちゃんとした布地は水着程度の面積しかないし、あれを普段から着る勇気は私にはない……いや、性能次第では着るかもな。

 

 注視してみると、名前はヒメユリ。アレが件のフレンドというわけだ。

 ヒメユリはこちらに気づくと満面の笑みで駆け寄ってきた。



「やっほーロダメアちゃん! 久しぶりじゃんか~!! あ、その子が彼女ちゃん?」


「かのっ!?」


「もう既に帰りたい」


「釣れないこと言うなよ〜私と君の仲じゃん?」


「えっと、あなたがヒメユリさんですか?」


「その通り! 私はヒメユリ! 世界を愛し混沌を愛する美少女!」



 そう言って、ヒメユリは決めポーズをとる。それに合わせて背後で小さな爆発が起き、紙吹雪が舞う。なんなんだこいつ。



「あ、ちなみに敬語使わないでいいよ? 私も使わないし、多分同い年でしょ」


「そもそもこいつに敬意を払う必要ないしな」


「ロダメアちゃんにはご主人様って呼んでもらおうかな」


「ほざけ」


「やっぱ仲良いよね? 二人とも。なんか……妬けちゃうなぁ」



 ルナがボソッと呟いた言葉に、ヒメユリが目を輝かせる。



「おやおや? おやおやおやぁ? なるほどなるほど。ロダメアちゃんがあまりに不敬だったからどうしようか迷っていたけど、ここはルナちゃんに免じて君たち二人にこのゲームについて手取り足取り教えてあげよう!」



 めちゃくちゃ不安だけど、頼れる人間はこいつしかいない。観念して、私はヒメユリに色々と教えてもらうことにしたのだった。

ランドマーク

フィールドなどのエリアに内包される形で存在している目印的なもの。

訪れると経験値がもらえるものの、そこまで量は多くないのでわざわざ行く必要はない。

とはいえランドマークによってはそこにしか生息しないモンスターとかがいたりするので、常に人がたくさんいるランドマークも存在する。

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