伝説の石〜洞窟
「こ、これって」
「そう、そうだよ翔。これは全ての伝説の石、そのありかだ」
雨で濡れて何故地図が変化したのかはわからないが、(特殊なインクなのかもしれない。)とにかく、ここからが本当の始まりだ。
「やったな翔、ヘーイ」
雨の中、僕らは手のひらを合わせ、叩きあった。
「太陽と四角ってなんだろう」
「さあ?でも三点リーダーは俺たちが行ったところだから、無結晶だよな」
「ってことは山は神聖石だね」
「ああ、一つしかないからな」
僕らは着替え、(光秀には僕のを貸した)濡れた体を拭きながら話していた。 結局、太陽と四角はわからなかったので、怜君と連絡をとることにした。
じいちゃんに紺城さん家の電話番号を聞き、電話をかけると、真っ先に怜くんが出てくれた。
そして、地図のことを話した。
「成る程、太陽と四角について教えて欲しいと。……甘ったれるな!」
光秀にも聞こえるのではないかと言うほどの大声だった。やはり聞こえたのか、光秀は俺にも聞こえるようにしろ、と勝手に電話のボタンをひとつ押した。
「え?」
「俺はな、ほとんど自分で調べた。危険なこともあったさ。だが、それを乗り越えて能力者になったんだ。俺はお前らに聞きたい。所詮、そのレベルなのか、と」
「なんだと怜っ。こっちの事情も知らないくせに!」
光秀が割り込んできた。話をややこしくしないで欲しいなあ、もう。
「なんだ、トンガリもいたのか。お前らの事情なんて知らないが、俺を仲間にしたくば、最低限、能力者になってみせろ」
僕はその言葉に身震いした。……怜君はかっこいい。
「わかったよ。怜君。まず、僕らの力でなんとかする」
「フッ、そうか。勝手にするといい」
僕には怜君が嬉しそうに微笑する姿が頭に浮かんできた。
明日、一番近い太陽のマークのある島に向かう事にした。島の名前を本物の日本地図と照らし合わせたからバッチリ!
何故太陽のマークかというと、どうせ劣聖石か秘霊石なのだから、光秀が、太陽に行こう、と決めたからだ。
そのうち能力が手に入るのは劣聖石のみ。
はたしてどちらが手に入るやら。
そして、翌日。
僕は光秀ん家に向かった。
「旅費もおじいちゃんに貰ったし、よし、出発だ」
「……と、言いたいところだが」
僕はノリ気だったのだが、光秀の一言で一気にテンションが下がってしまった。
「何だよ〜、光秀〜」
「実は美智子が以前に、冒険するときは私も連れてって、って言っていたんだけど、どうする?」
「いいんじゃない。二人より三人の方が心強いし」
「またそれか、お前。……まあ、俺はいいけどよ」
そうして級長も連れて行くことになった。
「よし、今度こそ、出発だ」
「お〜」
「イエーイ」
級長は冒険に行くとき、やけにテンションが高い。……いや、いつもか。
ところで、級長の格好だが、ハイキングウェアに大きめのリュックサックという、何か少し勘違いしているんじゃないか、といえる格好だったが、まあ、あえてつっこまなかった。以前もそうだったしね。
……そして。
「たぶん、この洞窟だと思う。ほら、ここに太陽のマークが」
その洞窟の上には微かだが、太陽のマークが刻まれていた。しっかりと刻まれていないところが年月の経過を思わせる。
「でっけ〜」
「広そうね……」
洞窟の中に入るとバサバサと何か黒いものが飛んできた。とっさにみんなしゃがんだ。
「キャア、何?」
「見てよ、ただのコウモリだよ」
僕は懐中電灯を上に当てた。
「しかし、あれはマジビビるな」
「無結晶の時の洞窟と違ってまだ先は長そうだ。注意して進もう」
「ああ」
「そうね」