怜君〜登場!
「いったぁ〜、お前のチョップは殺人的なんだよ、翔」
光秀は涙目で頭を抱えている。大げさな。
「いや、でも俺の情報収集能力は確かだぜ」
「噂よりも君の情報収集能力の方が怪しいよ」
僕はため息をはき、空を見上げた。今日は雲のない快晴だ。目を閉じると、車が近づいたり、遠ざかったり、それと、さっきから光秀が網ごしに蹴っているサッカーボールの音が聞こえた。そして、目を開く。
「こっちも伝説の石についてわかったことがあるんだ」
「え〜、何だよ」
僕は紺城さんに聞いたことを全て光秀に話した。
「伝説の石が四種類も?へ〜、じゃあ俺達が手に入れた石って何だったんだろうな?」
「何って、秘霊石でしょ?……あっ!」
「そうだよ、地図には伝説の石としか書いていなかっただろ?」
今、思い出した。紺城さんは神聖石が願いの叶う石だと言っていた。秘霊石ではおそらく、願いは叶わないのかもしれない。そして、僕の持っている石、それは、秘霊石ですらないのかも知れない、ということ。
少し、わかった気がする。
「でもまだわからないことが多いな。僕の持っている石には何の力があるんだ?伝説の石っていうくらいだから、何かありそうだけど。とにかく、怜君に会えばもっとわかるはずだ」
「そうだな、推測してても始まらねぇもんな」
……そして学校へ着いた。
僕は光秀とまず、怜君のクラス、六年C組に行くことにした。
行ってみると、クラスの中には、数人残って勉強している人達がいた。
「すみませーん、怜君知りませんか?」
すると、怜君は図書室に行ったという。お礼を言い、図書室へ行くと、図書室委員がカウンターで本を読んでいた。辺りをキョロキョロ探しても、怪物らしき人は見当たらない。みんな本好きの読書っ子ばかりだ。
「お〜い、そこのポッチャリメガネの図書委員、怜の奴知らないか?」
と光秀が聞くと、今度は音楽室に行ったという。
早速行ってみると、
「誰もいねぇ。」
「どうなっているんだろう?」
「全くだ、こーゆうの、タライ回しっていうんじゃないっけ?」
僕と光秀は少々疲労ぎみだ。
その後、学校中を探してみたが、とうとう会えず、C組に行くと、帰った、と言っていたので、僕達も帰ることにした。
そして、帰り道でのこと、
「あ〜、何で会えねぇんだよ。怜の奴、俺らを避けてんじゃねぇか?」
「まさか」
この時、背後に視線を感じて、僕と光秀は振り向いた。
「誰が逃げてるって?」
「まさか、お前が……」
「そうだ、俺が紺城怜だ。俺のことを探し回っている二人組がいるって聞いてどんなゴツイ不良かと思えば、こんな優等生とトンガリとはな」
初めて怜君を見た印象は僕が想像していた筋肉ゴリラとは全く違っていた。きっしゃな体で髪は胴まで長く、ゴムでひとくくりに束ねていた。
身長も高校生ぐらいあるんじゃないかって程で、声も声変わりしてないのか、驚く程綺麗だった。
モテるのも頷ける。
「誰がトンガリだ!」
光秀は反発した。
「お前しかいないだろ。ところでお前ら、俺の噂を聞いて俺を探していたんだろ?だったら、腕にそうとうの自信があるってことだよな、ボーッとしてないでかかってこいよ!」
まずい、臨戦態勢だ。完全に誤解している。
「いや、違うんだ、怜君」
「こないんだったらこっちから行くぜ!」
話を聞く耳もたない、といった感じだ。
怜君は真っ直ぐこっちに向かってくる。僕があたふたしていても向かってくるのは止めなかったが、光秀の、
「やめろっ、怜!」
という言葉に逆上したのか、僕から光秀の方に攻撃対象を変えた。
「気安く、俺の名を呼ぶな!」
怜君のパンチが光秀に炸裂するかって時に僕はある言葉を発した。