怜君〜怪物!?
「成る程。実は伝説の石は四種類あるのです」
「えっ、そんなこと、じいちゃんに聞いてない」
「今から話すことは与吉さんと語り合った後、私が独自に調べたものですから」
「そうなんですか、それで」
僕も湯飲みを口に近づけ、一口飲んだが、話しに夢中で、僕が、猫舌だということを忘れていた。
「熱っ」
紺城さんは麦茶の方が良かったかな、といいながら、テーブルを立ち、麦茶を持ってきてくれた。すみません、お手数かけます。
紺城さんはコホン、と軽く咳払いをすると、話し始めた。
「そう、伝説の石は、無結晶、劣聖石、秘霊石、神聖石とあります。昔々の話になりますが、遥か昔、宇宙が出来る前の話。神々は神を襲う強大な怪物、ダイオスにほとほと困り果てておった。そこで、北、南、東、西の四大神が集まり、その全ての力を使い尽くし、何でも願いの叶う一つの石を作った。それが、神聖石なのです。そして神達はその石でダイオスを倒そうと考えた。しかし、その時にはダイオスは神の勇者、マグカイルによって倒されていた。その後すぐに神聖石をめぐっての争いが始まった。無結晶はそんな争いを嘆いた女神達の悲し涙だと伝えられています。ちなみに秘霊石は、神が、劣聖石は天使が四大神の神聖石を真似て作ったものだと言われています」
「へ〜、そうなんですか」
「そして神聖石は一つ、秘霊石と劣聖石は各地に、無結晶は一ヵ所にたくさんあるそうです」
「へ〜、それで?それで?」
「申し訳ないが、こんなことぐらいです。私が知っているのは」
「いえ、とても役に立ちました。ありがとうございました」
「ホッ、ホッ、ホッ。こんな老人でも役に立ったと言われると、嬉しくなりますよ。すまないね。…孫の怜ならもっと知っているかもしれないなあ。あの子はさらに調べ上げていたからなあ」
「えっ、お孫さん、やっぱり怜君なんですか?」
「ええ、そうです」
「あっ、ありがとうございました」
そう言って、僕は怜君宅を後にした。
「あっ、これ、翔君、お茶もお菓子もまだまだ……、フフッ、せっかちなのは与吉さんに似てるな」
へへっ。また一歩進めた。怜君に早く会いたいな。期待を膨らませて今日は家へ帰った。
そして翌朝、学校に向かう途中、光秀に会った。
「よう、翔。今日は一段といきいきしてんな。」
「まあね。ところで、怜君についての情報はどうだった?」
「ああ。昨日学校で一日中調べた結果、重大なことがわかった」
光秀が真顔になった。つられて、僕も真顔になる。
「実は、あいつは……」
「うん」
僕は思わず唾を飲みこんだ。
「モテるんだ」
「は?」
そこで一種の沈黙が続いた。僕の聞き間違いじゃないか、と思ってもう一度聞いてみる。
「何だって?」
「だ、か、ら、モテるんだよ、怜の奴は」
「……それで」
「それだけだ」
フッ、思った以上に使えない男よの、会田光秀。とか思いながら、一応、つっこんでやった。
「……それ、重大でもなんでもないから」
「だってよ〜、悔しくねぇか、翔〜。俺達モテねぇ奴にとってはよ〜」
光秀は泣きそうな声で言った。
「君と一緒にするな。……他に情報はなかったの?」
少しキレぎみの僕なのであった。
「はうっ、疎外された。俺達は親友じゃなかったのか…………。……、まあいいか、いや、良くねえけど」
どっちだよ。だが、立ち直りが早いのは僕が唯一認めるコイツのいい所だ。
「それで?」
「ああ、他には相手が誰だろうと攻撃する、とか、相手の心を読む、とか」
「心を読む?」
それって、伝説の石に何か関係があるのかな?
「あとな〜、驚いたのが、口が裂けてて、どんな物でも食うらしい。そして耳が四つあって、一キロ先の話まで聞こえるとか、そして足が三本、手が八本、それで様々なことが出来るとか」
僕は額に手を当て、しばらくどう反応すべきか考えていたが、結局、
「妖怪か!」
奴の頭を力の限りどついてやった。