波乱の予感
怜君は、
「あんたの考えていることはわかっているぞ、源爺。翔を殺すつもりだろっ!」
そうはさせるかっ!と言い、僕の前に立ち、源さんに向かって両木刀を構えた。
え? え? どういうこと?
源さんは、フッフッフ、と笑うと、
「殺しはせん、法に触れるからの。だが、それに相応することは受けてもらう。
気づいてしまったのなら、仕方ない。怜、お前にも受けて貰うぞ」
源さんの目は本気だった。何が、どうなって?
源さんは、能力を発動、気づいた時には、
「奥義、時縛り」
という声とともに、目の前が暗くなった。
目を開いた時、家はなかった。それどころか山もだいぶ潰れ、山と呼べるのか
どうかも疑わしい。どこを見ても荒れ地で、木なんか一本もない。地面はひびが
入っているところが多数あり、もう少しで砂漠になるんじゃないか、と思わせら
れる。変わってないのは空だけだ。
何故、こんなところに僕がいるのかわからない。しばらく、ボケーっと、空を見
ていると、源さんに、何かされたのを思い出した。
その影響でこうなったのだろうか?
怜君も源さんの攻撃を食らったはずだが?
と、辺りを見回しても、怜君はいなかった。
仕方なく、歩きながら考えることにする。
まず、いつ、どこでというのは大事だ、と思ったが、この世界、人の気配が全く
ない。家すらないのだ。当然かもしれない。
僕は、いつかもどこかもわからないところでのたれ死ぬのか……。おじいちゃん
、しずかぁ。急に家族が恋しくなった。
しかし、怜君はどうなったのだろうか?
僕が生きてるってことは怜君も生きていたに違いない、と思う。じゃあ、何故い
ないのか?
考えられるのは、怜君は違う世界に行った、とか、おんなじ世界だけど、目覚め
る時間帯が違った、とか……しか思いつかないな。
どちらにせよ、絶望的だ。なぜ源さんは僕を殺そうとしたんだろう?
次から次へと疑問が浮かぶ。
いろいろ考えているうちに、遠くに薄緑色のものが見えた。
あれは!
近寄ってみると、天使界への扉、異界の扉だった。
ここは、地球なのか? と、思い、とりあえず、扉の中に入ってみることにした
。中に入ると、なんと、太古の植物が生い茂っていて、家がたくさんあった。
どうやら、集落みたいだ。集落の真ん中にでかい恐竜の骨らしきものがある。
周りで子供達が遊んでいる。付き添いの大人の女性がいたので、いろいろ訊いて
みようと、あの~、と話しかけたが、その女性は、
「え……」
と言うと、その後、女性は驚くべき言葉を口にした。
「翔?」
……、髪はロングだけど、あの顔立ち、まさか、級長?
「待ってたわ」
女性は何事もなかったかのように、そう言った。僕は、何がなんだかわからない
がとりあえず、わかっていることを説明した。
「そう。実は紺城君にすでに事情は聞いているの」
「怜君に!?」
級長は、説明してくれた。ここは僕からすれば未来の天使界だということ。
この天使界は僕達の小学校のあの、天使界だということ。
魔王によって、地球は滅ぼされたが、一部の能力者によって、一部の人は各地の
天使界に住んでいるということ。
僕は、一番重要なことを聞いた。
「って、ことは、みんなは?」
「そう、察しの通り、戦いに敗れ、死んだわ、みんな」
……。
級長の話は続く。
怜君は僕より先にここに来て、級長の話を聞き、力を求めて秘霊石の洞窟へ入っ
て行ったということ。
「私は彼に伝えたわ。この時代から出るにはこの時代の神聖石を手に入れるしか
ないってね。後、彼からの伝言、秘霊石の力を手に入れたお前を、神聖石の眠る
地で待ってる、ということらしいわ」
「級長」
「ねえ、美智子さんって言ってくれない?私、もう大人だし、級長でもないし」
「美智子さん、僕、頑張るよ」
その後、美智子さんに勾玉のようなネックレスをもらい、それをつけてもらった。
なにやら運命をかえる力を持つ石らしい。
かっこいいかな? へへっ。
僕は美智子さんに怜君とは別の秘霊石の洞窟への扉(異界の扉)を開いてもらい、
この地を後にした。ありがとう、と美智子さんに言い残して。この天使界を出る
間際に、
「頑張って。ゆう~であり、ま~でもある~あなたには無限の可能性~あるから
」
途中、よく聞きとれなかったが、気にすることもなかった。
クライマックスと見せかけて、まだ続く、みたいな、よくありがちな手ですね。
筆者、してやったり、と、にやついております。
まだもう少し続きます。最後までお付き合い、なにとぞよろしくお願いします。