怜君の本気
源さんのその言葉で秘霊石よりもまず、戒さんの足どりを追うこととなった。
そして、僕達は例のごとく学校から天使界に入り、怜君が『通神閣』をキーワ
ードに検索していると、
「こ、これは?」
怜君を見ると、眉をひそめていた。
「どうしたの、怜君」
と、僕が訊くと、
「俺宛てにメッセージが残されている。待て、今、読んでみる」
『ハッ、おせぇ(遅い)、おせぇおせぇ。いつになったら来るんだ? あぁ? 待
たせんのが、上等かぁ? まあ、いい。通神閣を昇ってこい。五階で待ってる。
』
「それだけか?」
光秀が訊くと、怜君は、
五秒ぐらいしてから、ああ。と答えた。
級長は、閣というからにはタワーをイメージするわね、と言っていた。
僕、階段昇りは得意じゃないんだけどなぁ。
怜君が突然、
「ただし」
と言い始めた。何の事かわからずに、言葉の続きを待っていたが怜君はいきなり
、僕達に向かって両木刀を構え始めた。
「お前らを全員倒す事が招待の条件だそうだ」
そんな……。だったら、行かなきゃいいのに、怜君が何を考えているのかわから
ない。
級長が、
「だったら、行かなきゃいいだけでしょう?」
と言ってくれた。
……が、怜君は、
「俺は奴らに興味がある、残念ながら、な。さあ、全員構えろっ!」
光秀はフッフッフ、と笑うと、
「ちょうどいい。前からお前は気にくわないと思ってたんだ、今、ここで、倒し
てやる」
そんな光秀は無視して、怜君は僕に向かって、両木刀を振ってきた。左の木刀に
能力がついている、とわかっていた僕はまず、右手の木刀による左上から斜めに
くる攻撃をしゃがんでよけ、次にきた左手の木刀による右上からくる攻撃は能力
を纏っていたので盾で、ガード、能力を吸収した。
怜君はチッ、と言うと、後方へステップを踏み、四メートル程下がった。
チラッと級長を見ると、オロオロしているだけだ。そのよそ見をしている間に、
お前には打撃の方がいいようだな、と言い、怜君は間合いを詰めて、僕に打撃に
よる二連撃をあてようとしていた。まずい、避けられない、と思った瞬間、光秀
が、うーらーら、無視すんじゃねー、と言い、ギリギリでジェットパンチを横顔
に当てた。光秀の飛ぶ能力を纏ったパンチで、二十五メートル程、怜君は体制を
崩し、ふっ飛んだ。怜君は、
「なるほど、トンガリ、お前のはかなり、ふっ飛ぶ、だが、威力はない。必殺技
としては0点だ」
僕はもう止めようよ、と言ったが、怜君は嘲笑、ここで止めてどーする、と言う
と、両木刀をクロスして……。まずい、加重カウンターだ!怜君、本気だ。
光秀が飛んで向かって行き、ジェットパンチを正面からくらわそうとしたが、パ
ンチを能力を纏った左手の木刀で払われると、光秀は大きく体勢を崩し、加重カ
ウンターを背中にくらってしまった。光秀はそのまま地面に滑りこんで、倒れて
しまった。今の怜君の左手(の木刀)は大きな力の塊、弾かれて当然か。しかし大
丈夫か、光秀。級長が光秀の元に向かって行った。そして、
「もう止めて!」
と叫んだ。
……が、怜君は
「安心しろ、倍率は四倍ぐらいにしておいた。まあ、それでもトンガリは立てな
いだろうがな」
と言い、躊躇なく僕の元に向かって来た。僕は盾を構えていたが、怜君は打撃に
よる二連撃を繰り出した。あ……。怜君は物理と、非物理(能力)の両方の攻撃が
できるんだった。気づいた時には、僕も腹に二連撃をくらっていた。
「かはっ」
かなりの痛みだ、光秀は本当に大丈夫だろうか?僕も動けなかった、動きたくな
かった、これ以上、痛みを伴いたくなかった、だから、気絶したふりをした。
「結局、こんなもんか」
そう言うと怜君の声はしなくなった。代わりに級長の、大丈夫、大丈夫? とい
う声が聞こえてきた。
特別をつくると、それが特別でなくなってしまう、という話を聞いたことがあるでしょうか?
特別が普通になってしまう、ということですが、今、筆者は見事にそれにはまってしまいました。
ああ……いままでやったダイエットの成果が……。