旅の終わり、そして始まり〜希望
「じゃあ、これを持って早く帰ろうぜ」
僕は秘霊石と思われる砂を布の袋に入れた。
「え〜、せっかくの無人島なんだし、私はもっとゆっくりしていきたいけどなー」
「蛇とか巨大ゴキブリとかうようよ出るかもよ?」
「キャー、早く帰りましょ」
「アハハハハ」
僕は笑いながらも内心嬉しくて、たまらなかった。
こうして笑いあえる仲間がいることもそうだが、それ以上に妹の命を救えるということに。
そうして家に向かって出発した。三浦さんも一緒に喜んでくれ、僕達の旅は終わりになるかのようにみえた。しかし、この時僕達はまだ気づいていなかった。このことが終わりではなく、始まりに過ぎないということに。
家に着いて一週間がたった。その頃から僕はある異変に気がついた。
……おかしい。僕はじいちゃんのもとへ行った。
「じいちゃん、秘霊石を手に入れたのに、妹の体の調子が良くならないよ」
じいちゃんは焦りと不安でいっぱいの声でこう言った。
「お、おかしい。それが本当の秘霊石ならば静は良くなるはず。これは……一体?」
「僕、僕、どうすればいいの?」
「落ち着け、まだ希望はある。紺城さんの家へ行け、昔、伝説の石について語り合ったことがある。手掛かりになるはずじゃ」
「じいちゃんの希望は当てにならないよ」
僕は悲しみを押し込めることが出来ず、その場を逃げ出した。
そして翌朝、しばらくボーっとして何も考えることが出来なかった。少ししてから夏休みの宿題を終わすため、光秀を誘って学校に行くことに決めた。
そして、光秀の家。
「すみませーん、光秀君いますか?」
ダダダダダ、二階から急いで階段を降りてくる音が聞こえた。
「お〜、翔じゃないか、どうしたんだ?」
「宿題終わってないだろ?一緒に学校行かない?」
「おう、いいね。俺もそうしようと思ってたとこ。じゃあ、準備するから待ってろ」
そして、光秀がきて、学校へ向けて出発した。
「なあなあ、それでお前さぁ、静ちゃん、良くなったの?」
「ううん、全然」
「……、そうか、でもそのうちきっと良くなると思うぜ」
「…………、うん」
光秀は心配そうに僕のほうを見つめていた。バンッ。後ろから誰かが、僕と光秀の肩を叩いた。
「お二人さん」
いつもどうりの三つ編み姿で登場したのは、
「あっ、美智子じゃん。お前だけ妙に明るい奴」
「二人とも妙に元気ないよぉ〜。どうしたの? 特に翔」
「級長。別に……。何にもない」
「そう? ところで知ってる? こんな噂。最近私達の山蓙小で喧嘩を売りまくっている男子がいるのよねぇ」
僕は思わずゴリラのような怪力男を想像した。
「あ、翔笑った、良かった、元気取り戻せたみたいで。……あ、で、その子、紺城 怜君というらしいんだけど、あんた達も気をつけなさいよ」
「ああ。ん?どうした翔?」
紺城、怜?どこかで聞いたような……。
――まだ希望はある。紺城さんの家へ行け――
「あっ、もしかしてじいちゃんが言っていた……」
「心当たりがあるのか、翔」
「うん」