敵か味方か
級長が、
「光秀、あんたも一緒に空に飛んで、蟹を百メートルぐらい上空に飛ばして来て
よ」
なるほど、それなら。
光秀はよしきた、と。蟹とともに上空に上がって行った。そして、待つこと、40
秒。先ほどの揺れとは比較にならない振動が。地震か? と思うほどのものだっ
た。
蟹を見ると至るところにひびが入っている。
「怜君!」
今度こそ、怜君は能力を纏った両木刀を使い、蟹を粉砕した。
その後、霧が嘘の様に晴れた。怜君が言うには霧は守護者の特性だったらしい
。
空はオーロラのようなものが輝いていて地面は滑るほどではないものの、凍って
いるようだ。他には何もなく、地平線が見える。この世界は今、夜のようだ。
怜君が天使界ネットワークで戒さんの場所を調べていると、僕達の後ろから足音
が。戒さんだった。それと知らない二人。
「戒!」
怜君は叫んだ。
知らない二人のうち、赤髪で髪を真上に伸ばし、バンドを頭につけている男が、
パチパチと拍手をしている。
「パチパチパチ、よくできました」
明らかに魔石が反応している。僕達は警戒していた。赤髪は、
「ハッ、しっかし、こいつら使えんのかねぇ、なあ、どう思う?条」
もう一人の条と呼ばれた180センチはありそうな、白髪の青年は、
「使えない、かな。戒の推薦だから、楽しみにしてたのに。正直、がっかりだよ
」
戒さんは
「悪い、条、晴美。見込み違いだったようだ」
と言うと、右手で銃の構えをとり、左手で支える仕草をした。
まさか、戒さん、僕達に攻撃する気?
「そして、悪い、怜、翔君、美智子ちゃん、そして、乱暴な光秀君。どうやら、
僕達は仲間にはなれないようだ。くらえ、アクアスプレッド!」
戒さんの攻撃速度は銃の速度と同じだと源さんは言っていた。しかし、外せばそ
この部位が15秒止まって、15秒たつまで攻撃は出来ないとも言っていた。
つまり、防御すれば、戒さんは少しの間、無効化できるわけだ。
級長はさっき、疲れたと言って弾を防ぐオートモードを解除してたから、つまり
、ここは僕が盾で防御するしかない!
と、思い、僕は瞬時に盾を出した。確か戒さんの弾は一センチだから、五ミリ四
方で構成されている僕の盾は戒さんの攻撃を防げるはずだ。
……はずなのだが、盾ごしに、にやりと笑う戒さんが見えた。
と、思えば、弾が盾に当たった瞬間、爆発がおき、その爆発は僕達四人を包んだ
。
気がつけば、動けなくなっていた。力は入るが、動けない。
話が違う。一センチで一発ずつしか打てないはずじゃあ。
「フフ、不思議な顔をしてるね。ま、簡単なことかな。彼は秘霊石を手に入れた
。以前とは違うよ」
条はそう言うと、じゃあ、僕はこれで。と溶けるようにこの世界から消えて行っ
た。
「僕も、止める力の本気を見せつけたかっただけだから」
と、戒さんも消え、残った晴美は、
「ハッ、俺は遊んでいくぜ」
と、動けるようになるまで15秒、外見とは裏腹に奴は律儀に待っていた。
そして、大声で、
「さあ、楽しもうぜ!」
怜君は両木刀を取り出すと、
「ふざけているのか? この四人を相手に勝てるとでも?」
「ハッ、蟹相手に四人でようやく勝てたような奴らに言われたくねぇなぁ。あれ
、一人でも抜けてたら、お前ら全滅だったろ?」
……確かに、そうだったかもしれない。
「ハッ、それにな、ありじごく戦。」
「いつから見ていたんだ?」
と、光秀。
「そこからさ。ありじごく戦や蟹戦は俺らが仕組んだ。守護者なんて俺らがとっ
くに倒してた」
「なっ……」
僕はそれ以上、言葉が続かなかった。つまり、僕達の戦闘力を見るために?
「ハッ、まあ、お前らは弱い。仲間にする価値もない。だが、このままじゃあ、
戒がかわいそうだ、だからな、だから、俺がはかってやる」
最近一話から最後まで読んでくれている方がいます。
筆者、何気に感動しております。
こういう人達が励みになるんだなあ、とつくづく思う
最近であります。