修行
はいっ。僕は手を挙げて、訊いてみた。
敵の能力者が能力を使ってない時に、能力者だと分かる方法はないんですか?
「いいとこつくのう。一般人だと思って先に攻撃されたらかなわんからな。……
それはじゃな、この魔石を持っていきなさい」
いつの間にか、おじいさんの手には直径二センチぐらいの小さく丸い石が二つ、
握られていた。
見た目、普通の石だ。
そのそれぞれを僕達にくれた。
「これは魔石と言って能力者が昔に作ったものらしい。これを持っていると、第
六感、つまり、勘が鋭くなる。一目で敵だと感じるはずじゃ」
僕と級長はお礼を言った。
話によると、級長は能力の出し入れの他に、もうひとつ、ゲンさんに縛っても
らったらしい。それは遠距離の攻撃が来たとき、オートで能力の封印をとき、敵
の弾を弾く、というもの。両手が能力の範囲の級長ならではの防御法だ。
ゲンさんが言うには二人で最強の防御陣だって言っていた。級長を見るとなんだ
か、嬉しそうに見えた。
でも、級長ばっかり縛ってもらってずるいな。
「では、これからリミットルームを使えるようにする、実技を受けてもらう」
級長は、
「私は昨日受けたから。それに宿題たまってるのよねぇ。じゃ、頑張ってね、翔
」
ということをさらー、と言うと帰って行ってしまった。
ゲンさんは修行用の天使界がある、といい、山の洞窟に入って行くと、天使界に
連れてこられた。
入るや否や、修行、スタートじゃ、と言って、ゲンさんは消えてしまった。
……え?僕、ここに取り残された訳?
見渡す限り、一本道だ。両脇には高い壁があるが、模様といったものはなく、
白一色で、どのくらい進んだのかもわからない。
発狂してしまうよ、マジで。
考えて見よう。
盾を出しても盾が見えるってことは、リミットルームは常時使えているってこと
。
じゃあ、なぜ異界の扉は見えないんだろう。
もしや、もう見えてる?
いや、ないな。白い壁が異界の扉のはずが……。
えーい、出てこんかーい!心の中でそう想うと、本当に淡い緑色の扉がでてきた
。外にでて、ゲンさんにどういうことか理由を訊いた。
「目的は、リミットルームを使えるようにすることではなく、意思の力を試すも
のだったということじゃ。」
ますますわからない。
「翔君はもともとリミットルームを使えてたじゃないか。異界の扉の出口は能力
に似たようなもの。能力は心に左右される。とくに天使界ではの。
心が強ければ、能力はそれに応じ、弱まれば、逆に能力も弱くなる。
まあ、ということを感じて欲しかったんじゃが……」
「そういうことだったんですか。僕はたまたま運が良かったんだ。」
「運も実力の内というし、まあ、合格じゃろ」
と言うことで、僕は晴れてゲンさんから卒業、ということになった。僕としては
ラッキーのうちに終わっちゃたのはすごく残念だけど、
「今までありがとうございました」
お礼を言って、帰ることにした。
「また遊びにおいで」
ゲンさんのその一言が嬉しかった。
光秀は能力を手に入れられただろうか? いや、まず、生きているだろうか?
不安になり、帰り道も早足になっていた。
帰るなり、光秀に電話した。
「光秀!」
「おお、翔か、どした? 息が荒いぜ」
「能力は手に入ったの?」
「モチ!」
話を聞くと、
冷君は始めからイラついていたらしい。そして、ケンカから始まって、天使界と
洞窟、どちらに行くか訊かれたから、簡単そうな天使界、と答えた。ところが、1
人で怪しいところの聞き込みをやらされ、天使界のモンスターも自分でなんとか
しろときた。