能力者―成樹、暴走、困惑、そして
「慎重にいかないといけないわね」
……そして、三十分悩んだが、わからなかった。光秀がわからないのならいいだろ、と言い出して、右の岩に触れようとしたその時、級長が、あっ、と声を出した。
その声にびくっ、と反応して光秀の手は止まっていた。
「なんだよ、美智子」
「懐中電灯」
「は?」
僕も一瞬解らなかった。
「ほら、あの砂は懐中電灯にあてるとキラキラ光ったじゃない。でも外にでて太陽にあてても光らなかった。つまり……」
「人工的な光に反応するってことかな」
「おっし、とにかくやってみようぜ」
そして、僕が懐中電灯をあててみる。まず、右。
「……光らないね」
「次よ、次!」
そして、左に懐中電灯をあてると、なんと、淡い緑色に光った。つまり、左が正解だったわけだ。
「良かった~。俺、触らなくて」
光秀は、は~、と溜め息をついている。
「と、こ、ろ、で!」
「何?級長」
「誰が能力者になるの?」
「そこだよな」
悩んだ末、じゃんけんで決めることにし、結果、級長が勝った。
級長が岩に触れると、今度は級長の体が、淡い緑色に発光した。大丈夫なのだろうか?聞くと、
「大丈夫よ」
と言っていたから無害なのだろう。
そして、光が消えた。
「わかった、これは、変える力ね。触れた物を変化させる力」
「へ~。あとで見せてよ、美智子」
僕は片手を上げて、
「はいっ、僕も見たいです。級長」
いつにもなく興奮していた。
「もちろん、早速、私も力を使いたいけど、お兄さんを待たせてるし、ここを出てからにしましょ」
と、いうことで、薫さんがいる場所まで戻った。
薫さんは律儀に同じ場所で待っていてくれた。
「それで、どっちなんだ?」
薫さんは僕達を順々に見、最後に級長を見た時、目を見開いた。
「驚いた。まさか、お前達だけで石の力を手にしてしまうとは。余程の強運の持ち主と見える」
「強運なんじゃなくって実力だっつーの」
チョップ、チョップ~、と、光秀は薫さんにチョップをくらわせている。世界広しといえど、薫さん程の能力者にチョップをくらわせられるのはこのバカくらいのものだろう。
「ははっ、そうかもしれないな」
薫さんが笑った。……かっこいい。どうして、怜君といい薫さんといい能力者というのはかっこいいんだろう。能力者に対する見方がひとつ変わった。
僕もなってみたい。あんな風にかっこよくなりたい。
「どうして私が能力者だってわかったんですか?」
「先程も言ったが、リミットルームだ」
「ああ、能力の範囲がわかるってやつか。能力者かそうでないかも分かるってわけ?」
「そうだ。訓練すれば、いづれ見えるようになろう。まあ、訓練した能力者は能力を使いたくない時は能力を使わないこともできる。その時は範囲も見えないがな」
「へぇ~」
そして、歩いているうちに、外に着いた。薫さんは、喋っているうち、気がつけば、いなくなっていた。僕達は船に乗り、三浦さんに能力を手に入れたことを話した。
「ところで、ワシに、その能力を見せてくんねぇかな」
「三浦さんの頼みじゃあ、断るわけにはいかないよね、級長」
「そうそう、外にでたら見せてくれるって言ったじゃん」
級長は、そうだったわね。というと、自分のリュックサックを下ろそうとしたその時、リュックサックが消え、級長が手にしていたのは十センチ四方の箱だった。
「お~」
皆、感嘆していたが、当の本人は錯乱していた。
「え?え?なんで?」
「どうしたんだよ、美智子。成功したじゃんか」
「私、箱にしようとはしてたんだけど、リュックサックの中のものを取り出して変化させようと思っていたんだ。でもリュックサックに触れた途端に……」