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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死に至る椅子

作者: ぷーと

 僕の最寄駅のホームには、座ったら死ぬと言われている椅子があった。


 それは何の変哲もない良くあるプラスチック製の椅子なのだけれど、少しだけ変わったところがあって、3つか4つぐらい連なっているタイプの椅子なのにその椅子だけはホームの端っこに1つだけポツンと設置されていた。


 僕が子供の頃に聞いたこの噂は今でも受け継がれているようで、たまに子供達が「呪い攻撃」とか言いながら友達をその椅子に座らせようとする遊びも行われていたりした。


 もちろん誰もその椅子に座らないわけではなく、噂を信じない人や噂を知らない人達は普通にその椅子に座っていたし、僕が見てきた限りでは座ったところで苦しむような様子も特になかった。


「やっぱり座るだけで死ぬなんてありえないよな」


 いつからか僕もそんな噂は信じなくなったが、単純に怖がりの僕は今までその椅子に座ったことはなかった。


「せっかく置いてあるんだし、座ってみるか」


ちょうど仕事やプライベートに疲れていた僕は薄れた怖さを好奇心が上回り、生まれて初めてその椅子に座り込んだ。


「なんだ、やっぱり何も起きないじゃないか」


 僕は誰に言うでもなく悪態をつくと、深呼吸とも溜息ともとれる息を吐き出した。椅子に座ったまま何本かの電車を見送った後、僕は腹を括って到着する電車の前に飛び込んだ。


 手足が千切れ、薄暗くなる頭の中で僕は思考を巡らせた。


 そういえばこの駅は自殺が多かったな。利用客は多いけど、あの椅子があるホームの端っこはほとんど人が居ないし電車に飛び込むにはうってつけの場所だったってわけか。


 そうか、あれは「座ったら死ぬ」ではなく、「死ぬから座る」椅子だったんだ。ちっ、騙されたよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無駄な文章がなくて、短編としての質が高いと思いました。 たいやきうまいし文章もうまい。
[良い点] 新鮮でした! 発想がすごいなぁと思いました。 自殺するには勇気が要りますよね。 椅子に座るだけで死ねるなら……って自殺志願者達はほんの少しの期待を込めて座るのでしょうね。 でも死ねない。 …
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