目覚め
いきなり顔に水を浴びせられたダンテが目を覚ますと、そこは暗い牢獄の中で両手を鎖で繋がれ磔にされていた。傍にはエセルが怯えた顔で座り込んでいる。
「よぉ、バルダロスの犬のダンテ君、歓迎するよ」
コリンは、ニヤニヤしながらダンテの胸ぐらを掴み、自らの顔をまだあどけなさが残るダンテの顔の前に突きつけるとその頬を掌で掴んで言った。
「いいから知ってることを全部吐くんだ」
「ふん、お前に話すことなんて何もない」
「ほぉ、そうかい」
吐き捨てるように言うダンテにコリンはニヤりと笑うと、ダンテの体を軽く後ろへ突き飛ばした。そして、壁にぶつかって跳ね返って来たダンテの顔面を思いっきり殴り飛ばした。
「くっ……」
繋がれた鎖の中で吹き飛ばされ、よろめくダンテにコリンはほくそ笑み、今度はその無防備に晒されたダンテの腹に強烈な拳を叩き込んだ。腹筋を貫通し内臓にえぐり込むような一撃がモロにダンテの腹に突き刺さり、堪らずダンテは背中を丸め、口から「うっ」と言う呻き声とともに唾液を飛び散らせた。
ダンテの表情は苦悶に歪み、見開いた目から涙が溢れ出し、息も出来ず固まっている。
「ほら苦しいかい?」
鎖の中で崩れ落ちるダンテをコリンは、間近で心底楽しそうに眺めた。
「もうやめて!」
顔を両手で多い泣き叫ぶエセルの悲痛な叫びが牢獄に虚しく響いた。その後もコリンの拷問は永遠と続いた。
「ほら苦しめ。バルダロスの犬め!」
まだ子供のダンテの体を存分に痛めつけいたぶるコリンの拷問にダンテは吊るされた鎖の中で身をよじり、呻き声を絞り出して苦しみ続けた。
「どうだ?、何か口を割ったか?」
尋ねるフィオナにダンテを散々に苦しめ牢獄から戻って来たコリンは、かぶりを振った。
「いや、何も喋りやがらねぇ。頑固なガキだ」
「肝心な事は知らないのかもな」
「あぁ、それならいい」
うなずくコリンは、フィオナに聞いた。
「それでギルの奴は見つかったか?」
「駄目だ。バルダロスの一派とロキから脱出したらしい」
答えるフィオナにコリンは顔をしかめた。
「厄介な事になったな」
「まぁいい。とにかくこのロキは抑えた。もうすぐドリアニアから本軍が来る。それでこのシノギは終わりだ。とにかく連絡を待とう」
「あぁ」
フィオナとコリンは、そううなずき合った。
「ダンテ……」
エセルは牢の中で無残に転がされたダンテに近寄ると側に座り込み、俯き加減に傷だらけの体をひくつかせるダンテを見下ろし声を殺して嗚咽し始めた。
「ゴメンなさい。姉の一味にこんな目に……」
エセルの涙がポタポタとダンテの頬に滴り落ちた。
「……エセル……」
満身創痍のダンテは、コリンから受けた拳の痛みと苦しみにもがきながら、虫の息で聞いた。
「なぜ……君は……戻って来たの?」
エセルはそれに答えず、ダンテを抱き抱えると含んだ水を口移しでダンテに飲ませた。そして、その柔らかい体でボロボロのダンテの体を包み込んだ。ダンテはエセルの弾力のある体に抱擁されながら、身体中の傷の手当てを受け、やがて、その温もりの中で眠りについた。




