エピローグ
グレゴリーをやっつけ、エセルを連行させた後、ダンテはバルドが征服した東の大地の平定を終え、帰国の途につき始めた。途中、これまでの同盟の感謝の意を伝えるためにカーラの元に寄ることになっていた。
「何とかこのまま動乱も治まりそうだな」
カルロが、退屈そうに言った。
「まぁな。一度覇がなってしまえば、俺達は用済みだからな」
ダンテが肩をすくめて答えた。まさにダンテが初めて経験する平和だ。
「そう言えば、ダンテ、西の大地のある一国を与えられたんだってな」
「あぁ」
ダンテはうなずいた。
「そうか、俺達も一国一城の主になったんだな」
感慨深げにカルロもうなずく。逆に言えば、平和が来た以上、再び動乱が起きない限り、これを超える出世は望めそうもない。あの草原での誓い、バルドから我が意を継ぐべく諭された言付けをダンテはこの平和な世で成し遂げるつもりだった。
「フィオナとはどうだ? うまくいってるか?」
尋ねるカルロにダンテは笑って答えた。
「おかげさまで今、丁度五ヶ月だよ」
「そうか、楽しみだな」
カルロがニッと笑いダンテの肩を叩いた。
やがて、カーラの元に着いた二人は新しく出来た船に上がった。
「やぁ君達、久しぶりだね。ご活躍の様子はかねがね伺っているよ」
以前の怪我から回復したカーラが、笑顔でダンテとカルロを出迎えた。ふと、ダンテはカーラの傍にいる子供に気がついた。
「この子かい?」
カーラは、その子供を抱き抱えながら、言った。
「それが不思議なんだ。夢の中に草原が出て来てね。その草原にあのエセルがいたんだ。そして、そのエセルが『この子供は次のこの世界の覇者を競う子だから』とかお告げみたいな事を言ってね。でその夢から覚めて起きてみたら、何とその子供があたいの船に横たわっていたって訳さ。それでこの子を育てることにしたのさ」
カーラはケラケラ笑いながら、言った。
「そのお告げとやらにあやかって、あたいはこの子に帝王学でも教えてやるつもりだよ」
ダンテは、そのカーラの子供をマジマジと眺めた。どことなく自身に似たその子供に複雑な視線を落としながらダンテは、直感で全てを悟った。
ーー分かったよエセル。君の言う賭場とやらに付き合ってやろうじゃないか。
人知れず呟き、ダンテは黙ってうなずいた。そして、カーラの元を離れたダンテは、束の間の平和の中に消えて行くのだった。




