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ダンテ戦記  作者: ドンキー
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陥落

 海上でカーラ水軍とバルダロスの連合がドリアニア軍と睨み合いを続ける一方、陸上でも牽制合戦が行われている。だがその牽制の均衡を打ち破る驚くべき出来事が起こった。バルドが最も重要視する特別な地域においてバルダロス軍の精鋭が守る砦がドリアニア軍の前に一方的に敗北し、一夜にして陥落したのである。

「砦が陥落した? しかも我が軍の一方的な敗北だと!?」

 バルドは、その敗報に強烈な衝撃を受けた。曲がりなりにもバルダロス軍の精鋭が守る砦である。しかも前回の戦いでバルドはドリアニア軍に対し、自らの犠牲を引き換えにかなりの打撃を与えている。ドリアニア軍も弱体化しているはずなのだ。それにも関わらずバルダロス軍はなす術もなく一方的に敗れたのである。

「一体、どういう事だ? ブルーノか? それともグレゴリーの仕業か?」

 疑心暗鬼になるバルドは、敗報の内容を詳しく探らせた。

「それが……」

 生き残った敗走兵が震えながら話す内容によると、守っていた砦は突然、謎の轟音と共に次々に打ち破られ穴ぼこにされていったと言う事だった。

「どうやらドリアニアの新兵器の様です」

「新兵器だと?」

 その敗走兵によると戦場に革命を起こす程の新兵器をドリアニア軍は手にしている様だった。やがて、バルドはドリアニア軍に放っている間諜からその新兵器の事を探り出すことに成功した。その新兵器の名を浮遊石砲と言う。しかもバルダロス軍をなす術もなく敗北を喫しさせたその浮遊石砲は、ローチェ家によってもたらされたというのだ。

「またローチェ家か……」

 バルドは苦々しくほぞを噛んだ。

「あの小僧の出番だ」

 バルドはダンテを呼び、チコにすぐさまこの謎の新兵器の事を探らせる様に命じた。


「浮遊石砲?」

 聞き返すチコにダンテは言った。

「謎の新兵器の浮遊石砲に、うちの軍の精鋭がこっぴどくやられたらしいんだ」

 それを聞いたチコはうなずいた。どうやら心当たりがあるらしい。

「聞いた事がある。浮遊石は使い用によっては強烈な破壊力を生むんだ。多分、それを利用したものだと思う」

 子供ながらにして卓越した頭脳を持つらしいチコは早速、机に向かいこの浮遊石砲を自らの手で設計するや図面をダンテに渡した。

「これが浮遊石砲?」

 尋ねるダンテにチコは言った。

「そうだよ。至急、この図面のものを作ってよ」

 図面を受け取ったダンテは早速、知り合いの工兵の元に走った。やがて、しばらくしてチコの設計した浮遊石砲が工兵の手によって再現された。そこへ興味本位でカルロがやって来た。

「これが噂の浮遊石か、どうやって使うんだ?」

 チコは、砲に浮遊石を粉々に砕いた物をある順序に従って流し込むと蓋を閉め、砲の穴から鉄の弾を込めた。そして、ダンテとチコに目配せした後、浮遊石を作動させた。その途端、物凄い轟音がとともに浮遊石砲が後ろに跳ね、その砲身から中に込めた鉄の弾が飛び出し目の前の岩肌を木っ端微塵に吹き飛ばした。

 その破壊力を目の当たりにしたダンテとカルロは目をまん丸にしたまま声も出ない。やがて、ポツリと言った。

「凄ぇな……」

 これは確かに戦の形すら変えてしまう。ダンテとカルロは、そう実感せざるを得なかった。

 やがて、浮遊石砲は、直ちにバルドにお披露目された。轟音と共に砲から放たれる鉄の弾が標的を貫き破壊する様を目の当たりにしたバルドの反応は、ダンテやカルロのものと同様である。

「これは使える」

 浮遊石砲のデモストレーションからそう判断したバルドは、直ちに浮遊石砲の実戦配備を全軍に命じ、さらに来るべき海戦に備えてカーラ水軍にこの浮遊石砲の技術供与をすることとなった。

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