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ダンテ戦記  作者: ドンキー
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 そのときバルドは、異国の使節団を招き祝宴を開いていた。剣の舞を披露する踊り子をバルドが酒を飲みながら眺めていたとき、ダンテが中に駆け込んで来た。

「王様、これは罠だ!」

 叫ぶダンテに周りの視線が集中する。

「ちっ」

 踊り子は舌打ちするや、突如、舞っていた剣でバルドに襲い掛かった。だが、その剣をダンテが寸でのところで自らの剣で持ってして防いだ。それを見た周りの使節団が隠していた武器を手にとり、バルドの兵に次々と襲い掛かった。周囲が壮絶な斬り合いへと発展する中、踊り子とダンテは互いの剣をぶつけ合った。

「強い……」

 ダンテが、相手の巧みな剣捌きに踏み込めずにいると踊り子はふっと笑い、窓から外へと逃げ始めた。

「待て!」

 ダンテは、その後を追った。月夜の街を屋根伝いに追うダンテに踊り子は、ひらりひらりと身を翻し逃げて行く。

「くそ」

 踊り子を逃すまいとダンテも必死に屋根伝いを走り、距離を詰めて行く。そして、意を決して踊り子に飛びついた。

 ダンテに絡みつかれた踊り子は、そのまま屋根に転がるや目にも止まらぬ早技で剣を引き抜いた。負けじとダンテも自らの剣を引き抜く。だが踊り子が一歩早かった。たちまちダンテの剣を自らの剣で振り払った。

「しまった……」

 ダンテは、転がる自身の剣を拾おうとしたところを踊り子に喉元に剣先を突きつけられた。

「くっ……」

 勝負あった二人を雲から現れた月の青い光が照らした。ダンテはそこで剣を突きつける踊り子の顔をマジマジと眺めた。

 相手は自身と同じくらいの歳の娘である。どことなく襲撃を知らせてくれたエセルと面影が似ている。

 その顔を悔しそうに睨みつけるダンテに踊り子は尋ねた。

「お前、名前は?」

「ダンテ」

 答えるダンテに踊り子は、不意に剣を鞘に収めた。

「ふっ、生かしといてやるよ。また会おう」

 そして、ダンテに背を向けるや月夜の街を走り去って行った。


 その後、その踊り子は完全に街から姿を消した。

「何者だったんだろう」

 ダンテは、気がつけばあの夜の事を思い出していた。面影がエセルと似ているのも気になる。そこでダンテはカルロとともにエセルにその旨を尋ねてみた。そこでエセルは衝撃の事実を述べた。

「姉なんです」

「姉?」

 聞き返すダンテにエセルはうなずき、続けた。

「フィオナと言います。私を育ててくれたたった一人の家族、でもフィオナ姉さんはある事件を機に過激な暗殺団に染まって行くことになって人が変わってしまった。私はフィオナ姉さんに元に戻って欲しいんです」

 そう訴えかけるエセルの瞳は真剣だった。

「でもなんでうちの王様を助けようとしたの?」

 尋ねるカルロにエセルは言った。

「私は、治世者は誰でもいいんです。ただ平和をもたらせてくれる人ならば。でも暗殺団はこの世界の秩序に混沌をもたらそうとしている」

「そんな危険な連中なのか」

 エセルは黙ってうなずいた。

「分かったよ」

 ダンテは言った。

「エセル、君の身は俺達が守る。君のお姉さんも助け出す。だから安心していい」

「あ、ありがとうございます」

 頭を下げるエセルにダンテはうなずき、カルロとともに去って行った。

「おい兄弟、あんな約束して大丈夫なのか?。そのフィオナって奴は女のくせにえらく強いんだろ」

 言い寄るカルロにダンテは答えた。

「でも結着をつけなきゃいけない相手だ」

「かもな。王様からもあの暗殺団の身元を突き止めるよう指示が出てるしな。黒幕はおそらく」

「あぁ、ドリアニアだろう」

 ダンテはうなずいた。近づきつつある決戦の気配を二人は、ひしひしと感じていた。

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