通商
「ゼノスの民かい?」
目の前に現れた軍団にカーラは、名乗り出た。
「あたいらはカーラ水軍の者だ。エセルの手引きでここまでやって来た」
「話は聞いている。遠いところをご苦労だ」
軍団の長が前に出てカーラに頭を下げた。
「早速だが、あたい達はゼノスと通商がしたい」
「浮遊石、だな」
ニヤリと笑う軍団長にカーラはうなずいた。
その後、破損した船の修理と引き受けた大量の浮遊石が船に積み込まれていくのを眺めながらバリーがカーラに言った。
「こんなにすんなり交渉が行くとは、思っても見なかったな」
それを聞いたカーラはかぶりを振りながら答えた。
「全部、エセルの描いた絵なんだよ」
「エセルの?、どう言う事だ。お頭?」
聞き返すバリーにカーラは、エセルから聞いた全てを打ち明け始めた。そのあまりに突飛な話にバリーは、信じられない顔で目を見開いてカーラの話を聞いている。
「全てはゼノスの民の余興の為、その余興にあたい達は何も知らずに命を賭けて来たんだよ。バルドもブルーノも皆、ゼノスの民の掌の上で転がせれていたって訳さ」
そう話すカーラにバリーは、しばらく黙りこくった後、呟く様に言った。
「人をバカにするのにも程がある」
ふつふつと怒りが込み上げるバリーにカーラは、言った。
「だが、あたいにはまだ分からない事がある。ゼノスの進んだ文明についてさ。あたい達の世界を賭け事に興じて弄ぶだけの進んだ文明をどうやって持つ事が出来たのか。そこについては、エセルは遂に明かさなかった」
「と言う事は……」
考え込むバリーにカーラは、うなずき言った。
「どうやらまだこのゼノスについては、裏がありそうだね。ま、それが分かるまでは、エセルに付き合ってやるよ」
ダンテがチェスターに連れられ次に訪れたのは、ゼノスの歓楽街だった。
「会わせたい人間がいる」
そう話すチェスターが向かった先にいた人物にダンテは、目を見開いた。
「フィオナ!」
何とあのフィオナがこのゼノスの中にいたのである。
「久しぶりだね。ダンテ」
フィオナは、ダンテをじろっと見ている。そこへチェスターが説明を入れた。
「フィオナは、エセルを捕らえるため、我々の囮捜査に協力してくれる事になったのだ」
「囮捜査に?」
聞き返すダンテは、フィオナを見た。フィオナはうなずきダンテに言った。
「ダンテ、妹を止めてくれ」
フィオナの話によると、エセルはフィオナにはもはや止められないところまで来ており、助けてやりたくても助けてやれない以上、捜査に協力する事にした、との事だった。
「そうなのか……」
ダンテは、うなずいた。
「分かった。協力する。だが、どうすればいいんだ?」
チェスターは言った。
「エセルとこの世の創造主との関わりをとらえるんだ」
「この世の創造主?」
聞き返すダンテにチェスターは説明した。
「このゼノスに進んだ文明をもたらした神の様な存在がいるんだよ。どうやらその神様がエセルに入れ知恵しているらしいのだ」
「ふーん……で、その神様は、どこにいるんだ?」
「下界だ」
思わずダンテは、きょとんとなった。
「つまり、俺達のいる下界をこの天空のゼノスから弄んでいる肝心の神様は下界にいるって事か?」
「そう言う事になる」
うなずくチェスターにダンテは、思わず唸った。もはや誰が敵で誰が味方なのか、そして、誰が誰を操っているのか分からなくなってしまった。




