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ダンテ戦記  作者: ドンキー
24/66

本性

「……お頭!」

 肩を揺さぶられたカーラが目を覚ますと目の前にバリーがいた。カーラが辺りを見渡すと、白い砂浜の上で、何と船も破損した状態でその砂浜に乗り上げられている。

「ここは……?」

 尋ねるカーラにバリーは砂浜の先を指さした。カーラは、起き上がりその砂浜の端までゆっくり歩いて行って息を飲んだ。何と自身がいる大地が空に浮かんでいるのである。海原の上に雲が広がるその光景に思わず、カーラは声をあげた。

「ゼノスだ」

 遂にゼノスを目の当たりにする事になったのだ。言いようの無い興奮がカーラに沸き起こって来た。

「本当にあったんだ」

 悠然とした光景にカーラはしばし見惚れていたが、やがて、我に帰ると後ろからやって来たバリーに聞いた。

「バリー、皆は?」

「今、掻き集めてる。ただ……」

 バリーは表情を曇らせながら言った。

「ダンテとエセルがいないんだ」

「いない?」

 聞き返すカーラにバリーは、溜息をついた。

「あの嵐の中だからね。海に飲まれたか、あるいはこのゼノスのどこかに」

「そうかい……」

 カーラはうなずき、バリーに言った。

「とにかく辺り一帯を散策しよう。行動はそれからだ」


「ここは……?」

 目を覚ましたダンテは、砂浜の上に横たわっている事に気がつき、ガバッと起き上がった。

「起きたかい?」

 ふとかかる声に振り返るとそこには、エセルがいた。歩み寄ろうとしたダンテの首元にエセルは短剣を突きつけた。

「エ、エセル!?」

 驚くダンテにエセルは、これまで一切見せなかった退廃的な表情を向け、言った。

「ダンテ、お前なんかここでぶっ殺してやってもいいんだけどね。その前にちょっと手伝ってもらうよ」

 まるで人の変わった様なエセルにダンテが茫然としていると、エセルがそのダンテの尻を蹴り上げた。

「グズグズしてんじゃねぇよ。さっさと準備しろって言ってんだ」

 それまでひた隠しにしていた本性を剥き出しにしたエセルはダンテに怒鳴りつつ、辺りを見渡し言った。

「いいかい。ここはゼノスの端っこだ。これから中央へと向かう。だが油断すんじゃねぇぞ」

 言われるがままにダンテは、エセルの後に続きながら、聞いた。

「エセル、君は一体……」

「ふん、まぁいい機会だ。教えてやろう。あたしはね、このゼノスを追放された人間なんだよ。お前達下界の人間とは違うんだ。ここではここのルールに従ってもらうよ」

 そう言うや、エセルは浮遊石を手に取り、額に当てて瞳をつぶった。すると浮遊石は光を放ち砕け散るや否やその燃焼させたエネルギーでエセルとダンテを人混みの中へテレポートさせた。

「な、何だ!?」

 突然の出来事にダンテが戸惑っているとエセルが説明した。

「この浮遊石って言うのはね。物を浮かび上がらせたり、瞬間移動させたり出来る力があるんだよ」

「瞬間移動……」

 信じられない表情のダンテにエセルは、剣を差し出した。

「ほら、取れよ」

 促されるままに剣を受け取ったダンテにエセルは、ニヤリと笑うと言った。

「じゃ、あたしのオトリ、頼んだよ。まぁせいぜい頑張んな」

 エセルは、ダンテを通りに突き飛ばした。たちまち通りのあちこちから警備兵らしき人間が駆け寄って来た。

「一体、何なんだ!?」

 訳が分からないままダンテは通りの人混みと突き飛ばし走って行った。

「いいぞ、逃げろ逃げろ」

 エセルは追手を引き連れて走っていくダンテを眺めつつ、反対方向に歩み始めた。

「変わってねぇな、ここらも。相変わらずしけてやがる」

 市内を冷めた目で眺めながら、歩いていくエセルはやがて、街の外れにある人気のない教会へと足を踏み入れた。そこで出迎えたシスターにエセルは言った。

「神父に言ってくれ。このあたしが帰って来たってな」

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