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ダンテ戦記  作者: ドンキー
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「やっ、久しぶりだね」

 ダンテ達の出迎えにカーラは笑って応えた。バルドと正式に盃を交わすべく、カーラ自ら陣地に訪れたのである。カーラはバルドは席を並べるとじっと互いを見つめ合った。やがて、軽い形式上のやりとりが行われた後に宴会となったが、その席でバルドは酔っ払いながら、ふと溜息を付いた。

「バルダロスの王が溜息なんて、どうしたんだい?」

 尋ねるカーラにバルドは、うなずき答えた。

「実は、私は今、ある悩みを抱いている」

「当てていいかい?」

 カーラは、少し考える仕草をして言った。

「キーロ島だね」

 驚いた仕草を見せるバルドにカーラは、ケラケラ笑って答えた。

「大丈夫だよ。バルド王、このあたいが何とかするよ」

「ほぉ」

 バルドは、カーラを見ている。その意を察した様にカーラは鋭い目のままで笑った。


 宴会の席の末席でダンテは、上座のバルドとカーラを見ながら、カルロに言った。

「これでバルダロスは、オケアニス海を使える様になったね」

「あぁ、でも依然、劣勢には変わりない」

 そう答えるカルロにダンテは、つぶやくように言った。

「ドリアニアのデニスは大軍だ。王様はどうするつもりなんだろう」

「さぁな。まぁ王様の事だ。何とかするんだろう」

 カルロが答え、ダンテもうなずいた。


 やがて、宴会を終え、カーラはバルドの元を引き上げて行った。その帰り道、カーラはニンマリ笑いながらバリーに言った。

「バルドは、思っていた通りの男だったよ」

「ほぉ、と言うと?」

「食えないねぇ」

 そう話し、ケラケラ笑った後、カーラはバリーに聞いた。

「ベネディクトの奴は、どうしてる?」

「監禁してるが、どうする?。そろそろ」

 手で首を切り落とす仕草をするバリーにカーラは、しばし考えた後、バリーに小声で囁いた。

「お頭、本気か?」

 バリーは思わず顔をしかめた。

「いいからいいから」

 カーラは笑って片目をつぶった。


「殺される……」

 ベネディクトは、監禁された牢で震えながら、毎日を過ごしていた。そんなあるとき、ふと鍵が緩んでいる事を見つけ、目を見開いた。

「逃げれる」

 ベネディクトは、扉を開けてこっそり牢から脱出した。辺りには、誰もいない。

「よし、気付かれていない」

 ベネディクトは、一目散に逃げて行った。向かう先はドリアニアのデニスが軍を展開するネロである。人目を忍んで辿り着いたネロでドリアニアに保護されたベネディクトは、洗いざらいカーラ水軍とバルダロスの状況を話した。

 デニスはベネディクトの情報で、気になるものを見つけた。何でもバルドがオケアニス海のあるキーロ島という小島に城を築いたものの、そこに手間取っており、しかもバルド本人がそこに城を築いた事をひどく後悔をしていると言うのだ。あんなところに城を築いたもののあっという間に落とされてしまうだろう。そうなればバルダロスは崩壊すると言う噂にデニスはほくそ笑んだ。

「面白い」

 早速、調べてみると確かにその様である。幸いそこはオケアニス海でもカーラ水軍が手薄なところでもある。デニスは、迷う事なくそのキーロ島を落とす事に決め、準備に取り掛かった。

 春、デニスは全軍を率いて一気にキーロ島へと進軍を開始した。艦隊に兵を満載したデニスの軍は、大した抵抗も受けずにキーロ島へ無事上陸した。

「いいぞ。報告通りだ」

 デニスは、立ち上がり兵に命じた。

「すぐさま城を落とせ。捻り潰してやれ」


 実はこのとき、バルドはキーロ島近辺まで来ていた。そしてデニスが自ら大軍を引き連れキーロ島に乗り込んだとの報告を受けたバルドは、思わず膝を打った。

「カーラの言う通りになった」

 デニスを相手にするには、大陸ではなく大軍が展開できない狭い島におびき寄せ、閉じ込めてしまう必要がある。大軍を小さな島に押し込めた上で出口となる海を包囲して袋の鼠にするーーその条件にかなうのまさにキーロ島だった。地形が峻険で島全体が原生林に覆われ大軍は自由な動きが取れないあの島の価値を自身と同じ戦略眼で見抜いたカーラは、お膳立てまでしてくれたのである。

「あの海賊娘は使える」

 バルドは、傍のアロルドに命じた。

「デニスを大軍ごとあの小島に閉じ込める。一網打尽にするんだ」

「城は持ちますでしょうか?」

 バルド、ふっと笑いながら答えた。

「あぁ、大丈夫だ」

 バルドの読み通り、城は持ち堪えた。やがて、バルドの元にカーラが水軍を引き連れてやって来た。だがその日は、あいにくの暴風雨である。当然、上陸は見送られるだろうと思っていた周囲に向かってバルドは言った。

「上陸は、今日だ」

 それを聞いたカーラは思わずバルドに聞き返した。

「この暴風雨の中を行くのかい?」

「そうだ」

 カーラは腕を組み考えている。

「確かにこの暴風雨の中をやって来るとは敵は思ってもみないだろう。奇襲するなら、絶好の機会だ。けど、危険だよ」

「あぁ、だがカーラ。お前なら出来るはずだ」

 それを聞いたカーラは、うなずいた。

「流石は、バルド王だね。分かったよ。この上陸任務、このカーラ水軍が命を懸けて引き受ける」

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