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ダンテ戦記  作者: ドンキー
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同盟

 カーラがバルダロスと同盟を結ぶと宣言したのを受け、船員達は皆、動揺を受けた。その中で最も危機感を持った者にベネディクトという男がいた。ドリアニアに内通しており、そのドリアニア本国から内密の指令を受け取るや、密かに配下を集めた。

「いいかお前ら、ドリアニアに逆らった俺達に未来はない。今なら間に合う」

「どうするんです?」

 尋ねる配下にベネディクトは、声を潜めて言った。

「お頭をやる」

 思わずギョッとする配下の男達にベネディクトは、金貨の詰まった袋を次々に手渡した。

「もし成功した暁には、この十倍の報酬がドリアニアから支払われることになってる」

「十倍……」

 その巨額の報酬に目が眩んだ男達は、一人、また一人と決意を固めて行った。

「で、いつやるんです?」

「今夜だ。宴会があるからな。皆でお頭を酔い潰すんだ。酒が入った後の寝込みを襲う。いいな」

 意気込むベネディクトに男達は、うなずいた。


「いやぁ、参ったね」

 宴会の場でカーラは、ゲラゲラ笑いながら酒を飲み干し、よろけてひっくり返った。

「あたいはすっかり酔っ払っちまったよ」

 すっかり寝込んでしまうカーラに配下の男達が困った様に顔を見合わせた。それを見たバリーが言った。

「お頭を運んでやれ」

 それを受け配下の男達がカーラを連れて行った。それを見ながらベネディクト達は、密かに目配せし合い黙ってうなずいた。やがて、宴会も終わり、周りの男達も一人、また一人と上機嫌で酔っ払いながら戻って行った後、皆が寝静まった夜更にベネディクト達は行動を開始した。

 ガバッと布団から跳ね起き、次々に迅速に動き出した。カーラが連れて行かれた船は既に手筈通り、鍵が外されている。

「よし、行くぞ」

 ベネディクト達は声を潜めながら船に乗り込み、中に潜り込むやカーラの部屋に入った。カーラはベッドで休んでいる。ベネディクトは配下の男達に周りを見張らせ、ベッドに近寄ると自ら刃を引き抜き、布団の上から思いっきり突き立てた。

「!?」

 その感触の異変に気づいたベネディクトは、布団を剥ぎ取り息を飲んだ。

「こ、これは……」

 そこにあるのはカーラの体ではなく、人形だったのだ。突如、船の外が明るくなった。

「な、何だ!?」

 驚くベネディクト達が外に出ると、いつの間にか船が大勢の小舟に取り囲まれている。その中心にいるバリーが合図をした。途端にベネディクト達にむけて一斉に物凄い数の矢が降り注ぎ、次々に討ち取られて行った。

「く、くそ……」

 仲間が死んでいく中、ベネディクトは必死に脱出を図るものの周りは完全に包囲されている。やがて、最後の一人になったベネディクトは、振り返ると目の前に迫るバリーに怖気付き後退りした。そんなベネディクトにバリーは、剣を引き抜くやベネディクトの足元に突き立てた。

「た、助けてくれ」

 完全に戦意を喪失したベネディクトにバリーは、言った。

「お前は殺さない。聞きたいことがあるからな」

 そして、配下の者に命じた。

「連れて行け」

 悲鳴を上げて連行されて行くベネディクトを見届けたバリーは、周りの配下全員に言い聞かせた。

「いいか、お頭を裏切る者、歯向かう者は、このおいらが一人残らず始末する。分かったな」


 かくしてベネディクト達の謀反は失敗に終わった。だが、その後もカーラ水軍に対するドリアニアの切り崩しは続いた。膨大な金が注ぎ込まれたその工作は凄まじいものがあったが、それを上回る締め上げで持ってしてカーラは、自らの水軍を統率して行った。その実働部隊はバリーが率いている。

「それでいい」

 バリーは、言った。

「表舞台はお頭が。汚れ仕事はすべて、このおいらがやる」

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