表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンテ戦記  作者: ドンキー
12/66

カーラ

 カーラ水軍、それは近年、突如力をつけバルダロスとドリアニアの合間を縫って新星の如く現れた勢力である。その実態は謎に包まれている。だが、何らかの手段で巨大な富を得て、海の将軍としてオケアニス海の覇者となったのは事実だった。ダンテ達は、港に赴くと運よく停泊中のカーラの船に乗り込む事が出来た。

「へぇ、お前達があのバルドの寄越した使者かい?」

 海賊の頭であるカーラは、目の前に現れたダンテ達にニンマリ笑った。そんなカーラをダンテも見ている。自分達から見てやや目上の年頃の女性だ。その年で既に海賊の頭を任されている様だった。

「船長には、一考頂きたい」

 そう話すダンテにカーラは手を振り言った。

「カーラでいいよ。なぁ伯父貴、どうするよ?、バルドと手を結ぶかい?」

 カーラは上座のエルマーに尋ねた。

「頭はお前だ。お前が決めろ」

 そう話すエルマーは既に身を引いているらしく、全ての指揮をカーラに任せていた。カーラはニヤリと笑うと指をパチンと鳴らした。突如、周囲の海賊達が刀を引き抜きダンテ達に突きつけた。

「ちょっと遅かったね。実はドリアニアと手を結ぶ約束をした後だったんだよ」

 カーラはニンマリ笑みを浮かべながら言った。

「悪いけどお前達には死んでもらうよ」

「それでいいのか?」

 ダンテが言った。

「俺達を殺したら、うちの王様は間違いなくお前達を真っ先に叩き潰しに来る。戦術云々の話じゃない。あの人はそう言う人だ」

 カルロも続いた。

「カーラ、うちの王様はそのうちこの遠征で全ての大陸を支配する。手を結ぶなら今を置いてない。それはわかっている筈だ」

 そして、エセルがバルドが同盟の取り分を書き記した書状を見せた。そんな三人をじっと見ていたカーラは、突然、大声を上げて笑い出し、言った。

「いいね、お前達、その年でいい度胸をしてるじゃないか。気に入ったよ」

 カーラは周りの海賊達に刀を元の鞘に戻させた。

「さっきのドリアニアの話は冗談だよ。さ、固い話はやめだ。折角の陸地からのお客さんだ。おもてなしと行こうじゃないか」

 カーラが手を叩くとたちまち料理と酒が運ばれ、宴会の運びとなった。ダンテは目の前に並べられる品々に目を丸くした。どれも見たことのない品ばかりだ。

「珍しいかい?。みんな海の交易で得た遠方の品ばかりだよ」

 そう話しつつ、カーラはダンテ達と酒を酌み交わした。その酒を一口飲んだダンテは、そのあまりのキツさに目を回した。

「何だ、お前、下戸なのかい?」

 ゲラゲラ笑うカーラは、一口でその酒を飲み干すとお代わりを入れていく。そして、興味深げにダンテ達に内陸の話を聞いた。特にバルドに対しては異様に関心を示し、どんな事を考え、どんなものを好み、どんな生活をしているのか目を輝かせて盛んに聞き入っていた。

「あたしゃ、男に目がなくてね。バルドの事はずっと興味を持っていたんだよ。バルドとは何だか同じ匂いがするよ」

「あの人は、見てる場所も景色も俺達とは違う。王の中の王だよ」

 そう答えるダンテにカーラは言った。

「けどドリアニアは帝国だよ。新王のブルーノも切れ者だしね」

「いや、あの人が上だ。いずれこの大陸を制するだろう」

 言い切るダンテにカーラは、ふっと笑った。

「何だ、カーラ?」

「いや、ちょっとね。ダンテはさっき、バルドは見てる景色が違う。いずれこの大陸を制するって言ったね」

「あぁ、言った」

「じゃぁこの大陸の外の景色は知ってるのかい?」

「大陸の外?」

 キョトンとするダンテにカーラは、立ち上がり言った。

「ついて来なよ。いいものを見せてあげる」

 ダンテ達は、先導するカーラについて行くと部屋の中にある球体のものを見せた。

「これ、何だかわかるかい?」

 尋ねるカーラにダンテとカルロは首を振った。

「これはね。この星の地図だよ」

「この星の地図?」

 聞き返すダンテにカーラはうなずき続けた。

「知ってたかい?。この世界は丸いんだよ。あたいはね、外の世界を見たくてこの船で伯父貴に連れられて世界一周の旅に出たんだ。途中、色々あったけどね。そこでこの星の裏側にある場所で安値の香辛料を買い込んでこっちで売り捌いてこの海域を支配できるだけの一財を成したって訳さ」

 そう話すカーラをダンテとカルロは食い入る様に見ている。そこへ不意にエセルが言った。

「じゃ、じゃぁゼノスにも行った事がありますか?」

「ゼノス?。あぁ、聞いた頃がある。空に浮かぶ島の伝説だね。あたいは行った事がないけど、行ったって人に会った事はあるよ」

「本当ですか!?」

 身を乗り出すエセルにダンテが聞いた。

「どうしたのエセル?」

「いや……何でもないです」

 エセルは、我に帰った様に首を振ったが、その目は何かを見つけたかの様な目だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ