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ダンテ戦記  作者: ドンキー
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プロローグ

 焼け落ちた砦でバルドは、部下のアロルドから報告を受けていた。

「王様。砦の制圧は終わりました。これでこの国は滅びました。一帯は我々のものです」

 黙ってうなずくバルドはアロルドに尋ねた。

「アロルド、我々が遠征に出て、かれこれ何年になるかな」

「今年で三年です」

「三年か……」

 バルドは夕暮れの草原を眺めながら言った。

「思えば随分、遠くへ来たものだ」

 やがて、バルドは捕虜の前に現れた。次々に処刑されて行く捕虜を見ながらふと、バルドはある少年に目を止めた。その少年は処刑を前に怯えもせず、不屈の目で処刑官を眺めている。バルドはニヤリと笑いその少年に近づくや、その少年の首に繋がれた鎖を引き寄せ尋ねた。

「お前、いい面をしているな。名は?」

 少年は、しばし黙ったままバルドを睨んでいたが、やがて、吐き捨てる様に言った。

「ダンテ」

「ダンテか」

 バルドはダンテをじっと眺めた後、聞いた。

「お前、なぜ負けたか分かるか?」

 ダンテはふんっとそっぽ向き言った。

「どうでもいい。俺は生まれながらに奴隷の身だ。もともと勝ち負けに未練なんてない」

「では未練を与えてやろう」

 バルドは、ニヤリと笑い、傍の処刑官に言った。

「外してやれ」

 処刑官は黙ってダンテの鎖を外した。バルドは、アロルドに言った。

「アロルド、こいつはお前に任せる。面倒を見てやれ」

 拝礼するアロルドを横にしながら、バルドは暮れて行く空を眺め、一人、つぶやいた。

「夏が終わるな……」


 ダンテはアロルドに野営陣地に連れて行かれた。

「新入りだ」

 そう話すアロルドに隊のメンバーはうなずきダンテを見た。その目は歓迎するでもなく、いつか来た道を思い出すかの様な目だった。アロルドは焚き火の前に座るとダンテにも座る様に促し、食事を差し出した。

「食え」

 ダンテはそれを黙って見ていたが、やがて、かぶり付く様に食事にありつき始めた。その食いっぷりに感心しながらアロルドは言った。

「助かったな、坊主。ここは俺の隊だ。自由にしていい。と言っても明日にはすぐ行軍だがな」

 アロルドは、地図をダンテに見せながら続けた。

「この先はドリアニアの勢力下だ。すぐ戦になる。お前にはそこで斥候を務めてもらう」

「俺が逃げ出すとは考えないのか?」

 尋ねるダンテにアロルドは、かぶりを振った。

「お前がそんな奴なら王は、お前を助けたりはしない。この隊にいる奴は俺も含めて皆、一緒だ。あの王に力でねじ伏せられ、投降した者ばかりだ」

 アロルドは、ダンテを見ながら続けた。

「今にあの王は、この大陸全てを支配下に置くだろう。あの人こそ真の王だ」


 その夜、野営陣地で寝床を与えられたダンテは、横になりながら考えた。もともとダンテが奴隷として飼われていた国は決して弱い国ではなかった。だが、バルドの軍に負けた。それも呆気なく。

 アロルドは言った。バルドは今にこの大陸を全て支配下に置く真の王だと。それが本当なのかどうかは分からないが、かつて奴隷だったダンテに活躍の場を与えるとも言った。ダンテは生まれて初めて支えがいのある組織に出会えたと思った。

「俺はここで生き残ってのし上がる」

 そんな思いを胸に秘めながら、いつしかダンテは眠りについていた。

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