「選択肢をやる」
「つ、着いた……」
二人は前に行った小屋の前に辿り着く事が出来た。肩を上下に動かし、息を整える。後ろを確認するが誰も追いかけて来てはいない。林の途中で巻く事が出来た。
「中に入ろう!」
それでも静空は慌てて小屋のドアを勢いよく開けた。
「待ってよ、いきなりそんな──」
「急がないと男子達が来るかもしれないじゃん!!」
慌てながら彼女は小屋の中に入り周りを見回し、麗羅も戸惑いながらもおそるおそる周り見る。
小屋の中は静かで、前回出迎えてくれた男性、明人がいない。少年のカクリも姿を見せず、人の気配がない。
「もしかして、不在──とか? 嘘でしょ!?」
小屋の中を見回し静空は顔を青くし、麗羅もその場にしゃがんでしまった。静空が言った通り博打だったらしく、二人は賭けに負けた。
「そんな、なんで──」
麗羅はあんな事を言っていたが期待しており、この状況をどうにかしてくれると思っていた。
二人は絶望の表情を浮かべ、麗羅は涙をこぼす。もうどうすればいいのかわからない二人は、体から力が向け座り込んでしまった。
「このまま帰る訳にも――……」
静空が瞳を揺らしながら床を見つめていると、頭上から男性の声が聞こえた。
「おやおや、大丈夫ですか?」
二人は男性の落ち着いた声にバッと顔を上げる。そこには微笑みを浮かべ、手を差し伸べている明人の姿があった。
「随分お急ぎですね。申し訳ありません、お出迎えが遅くなりました」
「あ、いや……」
「さぁ、とりあえずこちらへ」
彼は二人を立たせ、ソファーへと座らせる。
「では、お話を──」
明人が話出そうとした時、麗羅が口を開いた。
「あの、手……、怪我ですか?」
「えっ?! 幽霊も怪我するの?!」
「こらっ!!!」
麗羅は彼の手を掴み立ち上がった時、巻かれていた包帯が目に入り質問した。それを聞いていた静空が、見当違いな事を口にしたため麗羅は慌てて怒り口を塞ぐ。
「幽霊、ですか?」
「えっ、いや。その……」
麗羅は何とかごまかせないか考えるが、何か思いつく前に静空が明人に目線を向け、麗華の撮った写メについて質問した。
「貴方は何者ですか? 幽霊? 吸血鬼?」
「なぜそのような事を?」
「貴方がカメラに映らなかったからです」
静空は迷う事なくキッパリと言い切った。
隣で麗羅がオロオロと二人を交互に見ていると、彼が優しい微笑みを消し顔を俯かせ。今度は妖しい笑みへと切り替え顔を上げた。
「なるほどな。なら、隠しても無駄らしい」
明人の言葉使いと表情に二人は何か、不気味なものを感じ取り目を見開き固まってしまった。
今まで感じた事のない空気。ぞわっと体が反応し、二人は冷や汗を流し、彼からは目を離せず、見続けていた。
「おい、いつまで固まってやがる。さっきまでの威勢はどうした」
彼の問いかけにやっと我に返り、二人はハッとする。気を取り直し、静空が口を開いた。
「えっと、猫かぶりさん。貴方何者?」
「猫かぶりは認めよう。だが、そんな呼び方される筋合いはねぇ」
静空の言葉にそれだけを返して、明人は不機嫌そうに足を組み眉間に皺を寄せる。その時に奥のドアが開き、そこからはカクリが平然とした表情で出てきた。
明人は横目で確認し、すぐに視線を二人に戻した。
「まず、お前らがここに来た経緯を話してもらおうか」
明人の言葉に二人は困惑しながらも、ここで答えなければどうする事も出来ない状況なため、話す他何も出来なかった。
☆
「はめられたってわけか。つーか、普通に気づけよ」
「すいません……」
麗羅はガクッと肩を落とし、静空は頭を撫でてあげる。だが、静空自身麗華を疑っていたところもあったため、彼の言葉を否定する事は無かった。
「なら、林の中でさっきからウザイ動きをしている人間四体は、その男子どもって訳か」
「人間……」
「四体って……。普通に四人って言ってあげて…………」
明人の言葉に呆れる二人だが、そんなのお構い無しに彼は考え事を進める。顎に手を当て真剣な表情をしている彼に見惚れ、目が離せない。麗羅の頬は薄くピンク色に染まてた。
「──顔だけはいいのね」
「俺だからな」
静空の独り言が耳に入り、彼は簡潔に返した。
二人は苦笑いを浮かべ明人の考えがまとまるのを待つ事に。そこからは沈黙の時間が流れ始めた。
カクリは明人の隣に立ち、二人を凝視している。
「えっと、前も思ったけど。なんで子供がここに?」
「明人以外ここにいるのは全員子供のはずなのだけれど。なぜそのような聞き方をする?」
カクリの冷たい言葉に、二人はこれ以上口を開く事が出来なかった。
そこからは待つ事しか出来ず、二人はじぃっと明人を見ていた。その視線がうるさく、明人は眉間に皺を寄せたかと思うと鋭い目を二人に向けた。
「うるせぇ」
「な、にも言っていないのですが……。すいません」
麗羅は素直に謝り、静空は握り拳を作っていた。さすがに明人の態度に怒りが芽生え、殴りたい感情を拳を握る事で抑え込んでいる様子だ。
「お前らに三つの選択肢をやる」
いきなり口を開いかと思うと、明人は自身の右手を上げ三本指を立て言い放った。
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