表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/192

「ごめん」

 悪陣魔蛭おじんまひるは今、ある病室の前に立っていた。ドアの隣にあるプレートには〈神霧音禰しんむおとね〉と書かれている。

 魔蛭はそのドアに手を添え、静かに開いた。


 中は個室なようでベットは中心に一つしかない。そのベットで寝ているのは、綺麗な女性だった。


 腰まで長い茶髪がベットの横からはらりと落ち、透き通るような白い肌が可憐で美しい。目を閉じてしまっていても分かるほど綺麗な顔立ちをしており、触れてしまえば散ってしまうのではないかと思うほど儚い。


 魔蛭はベット付近にある小さな椅子に座り、音禰の頭を優しく撫でる。悲しげで、今にも泣いてしまいそうな表情を浮かべながら。


「……音禰、巻き込んでごめん。でも、俺はもう戻る事が出来ない。だから、まだ()()()()()くれ」


 懺悔のように呟き、魔蛭は抜き取った匣をポケットから取り出した。小瓶の蓋をキュッと開け、音禰の方に体を乗り出し、口元目掛けて液体を垂らす。


 黒くなってしまっている液体は真っ直ぐに口の中へと入っていき、条件反射なのか音禰は喉を鳴らし飲み込んだ。


 その後、少し苦しげに眉を顰め息を荒くしたが、また直ぐに落ち着きを取り戻し、寝息を立て始める。


「俺の復讐が終わったら必ず助ける。お前に預けている()()の記憶を返してもらう。それまで、まだ耐えてくれ」


 音禰の頭を優しく無でたあと、魔蛭は悲しげな表情を浮かべながら病室を出て行った。


 魔蛭が居なくなった病室は酷く静かで、換気するために開けていた窓の隙間から入ってくる風の音だけが、心地よく部屋の中に流れていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます

次回は新章です。読んでいただけると嬉しいです!


出来れば評価などよろしくお願いします(❁´ω`❁)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ