3.初めまして私の両親となる人達
おぎゃぁぁぁぁああ
赤ん坊の泣き声で意識が覚醒した。ざわざわと話す声が聞こえる。煩い。鬱陶しい。私の家の近くに赤ん坊はいなかったはずだ。それに、こんなにも大きな声で話す人はいなかった。不愉快だ。何が起きたんだ?
……ああ、そうだ。私はジョルジュによって転生させられたんだ。世界が消えてしまわぬ様に第一王子として。ならばこの泣き声の主は私か。
「王妃様、おめでとうございます。元気な男児でございます。」
「そう。私は王子を産めたのね。良かった。」
なるほど、生まれたばかりなのか。まあ、泣いている王子を前に話し続ける召使など存在しないか。
「さあ目を開けて、私の子。あなたの属性を私に教えて?」
そんな事を言われても目が開かないんだよ。明日にでもなれば開く様になるだろうからちょっと待ってよ。
ばたんと大きな音がした。おそらく誰かが入って来たんだろう。状況からして王様かな。今まで父親らしき男の人の声聞こえなかったからね。
「ソフィ、どちらが生まれたのだ。男児か?女児か?いずれにせよ、ご苦労であった。」
「喜んでくださいまし、ダイロ。男児ですわ。私達の可愛い第一王子です。」
「そうか!第一子にして男児か。喜ばしい事だ。して、属性は分かったか。」
「いいえ。私が抱き上げた時に泣き止んではくれたのですが、まだ目を開けてはくれないのです。」
そういえば、目の色で属性が分かるんだっけ。親なら子の属性は早く知りたいよね。しっかりと開けるのは無理だけど、うっすらとなら出来そう。第一王子は黒目だから、それでも判別できるよね。
「おお、闇属性か。そして、色もとても濃い。一級の魔法使いになれるかもしれんな。」
「剣士の才能もあれば魔法剣士にもなれますね。この子の将来が楽しみですわ。」
王であり、有能な戦力ともなる。ゲームから見ただけでもこの世界は平和とは言い難いし、他国へ行く際に魔物に襲われる危険性もある。そのため、襲われ時になす術なく殺される者よりも自身の身を守れる者が優遇される。……この世界の住人強くないですか?
「この子の名前どういたしますの。今までの王や英雄から選んでくださるのでしょう?」
「リシャールだ。昔、魔物に町が襲われた時に一人で全てを倒した英雄の名だ。……近年、他国との軋轢が広がっている。この子には他国に滅ばされぬ強い国を担ってもらわねば。」
出来れば私が即位する前には解消していただきたいですね。ただの一市民だった私の胃は、そこまでのストレスに耐えられる気がしないです。
「他国だけでなく、この子の弟にも勝っていただかないと。最近側近となった人、怪しいですわよ。」
「分かってはいるが叔父の子だ。無下にはできない。……しかし、その者達に王位を継がせる気は無いと周囲に認識してもらわねば。とりあえず、この子の幼少教育に携わる者は全て一流にしよう。国一番の者達だ。リシャールの能力は著しく伸びるだろう。」
さては、第一王子と第二、第三王子との仲が悪かった事の要因は第一王子の性格だけではないな?親から施される教育の質に大きな差がある事も要因になっていたな?
あ、駄目だ。赤ん坊の体だから体力がもう持たない。おやすみなさい……。
「あら、リシャールは眠ってしまったのね。」
「そのようだな。可愛らしい寝顔だ。」