俺、どうすんの?
お前は慎重が行き過ぎて、石橋を叩いて叩いてぶち壊す性格だ。
家族や親しい友人達に、そう言われ続けて来た俺の人生。
だけど、そんな性格で良かったと今は自負している。
俺、四条竹流。
先月末に二年ほど勤めたブラック企業を退職して、今は気ままな一人暮らし生活満喫中・・・のはずだった。
巨大掲示板やSNSで何月何日に大地震が起こるとか、大災害が起こるとか。そんな書き込みを見るたびに、1LDKの部屋に水やら缶詰め、即席麺類を増やし続けた結果、収納からはみ出した備蓄物。
それを横目に、まぁ、多少は減ったかと思いながら、殆ど機能しなくなったスマホ。当然パソコンからも、もう情報は得られない状況だ。
だけど一日最低一度は電源を入れているのは、諦め切っていないからだろう。
二階のベランダから、階下を見下ろした。
目視出来る数は、この前より減っている。
・・・歩く屍。
映画やゲームの世界で存在した、所謂ゾンビの姿。
信憑性のある噂は、ゾンビが現れ出した最初の頃に確認された。
とある製薬会社が、勤勉な日本人向けに二十四時間どころか、寝なくても奮起できるくらいの栄養ドリンクを開発した、と。
発売直後は、効果も相まって馬鹿売れしたのは記憶に新しい。
ブラックに勤めていたとは言え、さすがにそこまでは手を出したりしなかったけれど、先輩も同僚も後輩も、その栄養ドリンクを大絶賛して飲んでいた。
・・・それが、引き金だった、らしい。
らしいってのは、真実の原因が未だに解明されていないからだ。
大量に愛飲していた人間が、本当に寝なくても良い身体を手に入れた、なんて。
・・・皮肉にもほどがある。
飲んだ経験が一度でもある、人だった彼らが多かった都内はパンデミック後、ほぼ壊滅状態。
二週間が経過し、関東圏でも端の方にある、この市内にも出現し増殖を続けている。
奴らは人間における三大欲求、睡眠欲と性欲を忘れたのか排除したのか、その分食欲が半端ない存在へと変貌した。
一度噛まれると体液から感染し、健康な人間も数分から一時間もかからずにゾンビへと変貌する。
その様子を、最初の頃はライブカメラの映像から、嫌という程見ていた。
ここに居れば大丈夫。
きっと助けが来る。
自衛隊と思われる車が襲撃されている映像を見たとき、それは諦めた。
映画だと避難所的な物が用意されていて、そこに行けば何とかなる流れだけれども、そんな情報すら入らない現在。
備蓄されている食料は、まだある。
ここで、朽ちる人生になるのかも知れないけれど、俺はやっぱり人として死にたい。




