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1話 スイーツってなんだ

三人称で、視点がころころ変わることがあるので読み辛いと思いますが、全10話の予定ですので、最後まで読んでいたただけると幸いです。

 コツコツと石畳の上を歩く足音が響く。

 時折、馬車が通り過ぎる。石造りの建物が街を構成し、まるで中世の世界にでも迷い込んだのではないかと思わせる。でも、ここは現代、五百年以上も遅れた魔女が住む魔法界なのだ。

 昔ながらの営みを良しとするあまり、近代化に乗り遅れる。もちろん、電気やガスは通っていない。当然、夜になると真っ暗になり、月明かりだけが頼りだ。

 時代に取り残される一方で、自身が進歩し、人間には無い魔力を蓄えてきていたのだった。

 そんな魔法界に、百年に一度という未曽有の大災害が起こる。そして多くの犠牲者を出した……。

 


 とある養護施設内にある学校の教室の中、授業中にもかかわらず、スヤスヤと夢見心地の女の子。人間界でいうところの中学三年生。名前はアズと言う。

 短い栗色のパサ付いた髪質で、ふっくらとした顔立ち、興味のあることにしか関心を示さない。彼女の特技は食べることと寝ること。いわいる学校の問題児である。

 おっとりとした見た目だが、魔力が学校一、ただ、不器用で使いこなせないのが難点ではあるが……。


「人間とは、強欲で危険な存在。人間とは、弱い生き物。だから、集団で寄ってたかって弱い者に襲い掛かる。その一方で、弱いが故に物作りに長けている」

 と女性教師は言って、さらに続けた。

「私達は、決して忘れてはいけない。私達の先祖は、魔女狩りに遭いハリツケにされた揚句、そのしかばねは三日三晩晒されたのだ。また、生きたまま火あぶりにされた者までいるという。魔女裁判に掛けられ、残虐極まりのない拷問を与えて殺害されたのだ。人間の犯した仕打ちを、私達は決して忘れてはいけない」

 先生が、人間が魔女に犯した魔女狩りのむごたらしさを生徒に教えていた。

 赤色の髪をしたサリナ先生は、ふちの尖ったメガネを掛け、見るからに厳しそうな先生。スラッとした高身長で、口元には大きなホクロがある。それも先生の特徴のひとつだ。


「また、この話……先生はよっぽど人間が嫌いなんだね」

 とひそひそと生徒達が話した。

「人間は、私達魔女と祖先は同じ。生物が植物と動物とに枝分かれしたように、魔女は、人間より優れた生物として枝分かれしたのだ」

 サリナ先生は、人間より魔女の方が優れているという説明で話を締めくくった。

 新任のサリナ先生は若く、見た目とは違ってとても優しい。だから生徒達にも人気があった。一方でサリナ先生は天候を操る魔法を得意とし、強力な雷を発生させることが出来る。そのせいもあってか、怒ると雷のように怖い。

 やたらと人間を敵視する言動が目立ち、過去に何があったのか、誰にも知らない秘密がありそうだ。


「ねえアズ、スイーツって知ってる?」

 仲良し三人組のルイとレナ。眼鏡を掛けた物知りのルイが、ウトウトと居眠りをしているアズに聞いた。

「うぅ~ん」と大きくアクビをしたアズが、

「スイーツ? なんだそれ、オレ初めて聞いたぞ」

 眠い目をこすりながら言った。

 自分のことをオレと言うが、子供扱いされるのが嫌な女の子。

 自由奔放で自己中心な性格のアズ。問題児のアズにさしものサリナ先生も手を焼いていた。


「人間界には、この世のものとは思えない、あっまぁ~いお菓子があるんだって。それをスィーツと呼ぶそうよ」

 ルイが言うと、

「スィーツ、かぁ……」

 自分の頭な中で妄想が膨らみ、半開きの口から今にもヨダレが出てきそう。

「そう、一口食べてだけで、頬っぺたが落ちるんだって」

 レナも拍車を掛ける。

 その話を聞き、人一倍食欲旺盛のアズがゴクリと生唾を飲み込んだ。


 ルイの説明では、人間界に行くのは10月31日のお祭りの日の時だけ。その日だけは、私達と同じ格好の人間がいて、私達が行っても気付かれないという。

 その日が、今日。ならば、と好奇心旺盛のアズは行動を起こす。



 人間界へと繋がっているだろうと噂されている大きな井戸。

 その井戸はとても古く、苔が生えていた。

 アズが身を乗り出してのぞき込むと、スーッと黒い影が動いた――。

「あ、ゲジゲジだ!」

 ゲジゲジとは百足ムカデのこと。アズが覗き込んだため、驚いたムカデが逃げ込んだようだ。


 底の見えない真っ暗で不気味な空間。でも、不思議とアズには恐怖は無かった。

 そして、アズは勇気を出して井戸の中に飛び込んだ――。 

「わぁーーーーーーーーー!」

 アズの悲鳴を残して、古井戸から消えた。

 アズは人間界へ、アズだけではない、紛れ込んでいたムカデも一緒に……。


1話が短いので、2時間後ぐらいに、2話も投稿します。

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