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帰還

 すっかり夜になってしまったが、何とか街まで無事に戻って来れた。

 気絶から目覚めた頃にはもう陽も落ち始めていたが、グレスが俺を背負って凄まじい速さで走ってくれたおかげでその日の内に帰る事が出来た。

 俊足のスキル持ちとしては情けないが、俺が一人で走るよりずっと早かったのだ。


 何とか門番に多少の硬貨を渡して説得し、グレスを連れて街に入る事が出来た。

 採取依頼の違約金が発生するにはまだ日にちに余裕がある。

 今日はギルドに寄らずに真っ直ぐに宿へ向かう。

 ベッドは一つしかないが、俺が床で眠ればいいだろう。


「俺は床で眠るからグレスはベッドを使ってくれ。」


 部屋に着くなり疲れがどっと溢れ出し、床に倒れ込むように横になった。

 今日は俺の人生の中でも余りに密度の濃い一日だった。


「目の前にベッドがあるのに床で寝る必要があるか?」


 グレスはそう言うと、床に寝そべった俺をまるで子猫のようにひょいと持ち上げて、ベッドに優しく寝かせた。


「でも…ああもういいや、おやすみ…」


 ベッドに入った途端に重くなる瞼に抗えず、横に寝そべってくるグレスの気配を感じながらも、俺は夢の中へと落ちていった。



 翌日、ようやく目が覚めた頃には昼過ぎになっていた。

 既にグレスは目覚めていたようで、俺の魔剣を何やら弄っていた。


「…おはようグレス、俺の剣、拾っててくれたのか。」


「おはようリフ。この剣だが、昔私が人間に与えた玩具によく似ているんだ。しかし何やら見覚えの無いギミックが追加されているようでな。」


 グレスはそう言って剣の柄にある模様を何やら操作すると、カチリと音がなり、下の部分に小さな穴が開いた。


「恐らくここに何かを入れるのだろうが、もしかするとコイツかもしれないな。」


 グレスが取り出したのは親指程の魔石だ。

 恐らく例のロックボアのものだろう。

 それを剣の柄の小さな穴に宛てがうと、スポリと穴に魔石が吸い込まれ、剣の刃が紅く輝いた。


「俺の魔剣にそんな効果があったなんて…」


 あのザロクの丘を割った炎の原因はこれだ。

 あの大きな魔石を直接刃で貫いた為に、半ば暴発のような形で効果が発動したのだろう。


「知らなかったのか?よく土壇場で発動出来たな…本当に君は運がいい。」


 これは非常に嬉しい発見だ。

 強化型の魔剣と言えば、その殆どが大器晩成型ではあるが、最終的に従来の魔剣を上回る性能になる。

 売るとすれば金貨百枚を超えるかもしれない。


「というか、昨日からそれを玩具と言ってるけど、元はグレスが作った剣なのか?」


「その話だが、どうやら記憶の大部分が思い出せないんだ。残っている記憶は僅かだが、これには見覚えがある。」


 長い間氷漬けにされていれば無理もないのだろう。

 グレスの記憶は殆ど喪失してしまったらしい。


「直接作った訳ではないが、私が与えたのは確かだ。ほら、人間は好きだろう?炎や雷の噴き出す武器なんかが。」


 そう言われると頷かざるを得ない。

 魔剣は漢のロマンである。

 昔の人間が欲しがったのも無理はないだろう。

 というかそれは玩具どころか普通に武器じゃないのか?


「だが、丘を割る程の火力は出なかった筈だ。燃料代わりに石ころを使う機能なんかも付けた覚えはない。明らかに何者かが手を加えているな。」


「その剣はダンジョンで拾ったんだ、多分、ダンジョンの魔力で変質したんだと思うよ。」


「ダンジョン?それは一体どういう場所なんだ?」


「そうだね…とりあえずギルドで冒険者登録をしに行かない?そこでついでに教えて貰えるからさ。」


「分かった。そうと決まれば早速向かうぞ。」


 そう言い放つと、グレスは立ち上がりそそくさと部屋を出て行った。

 俺は慌ててベッドから起き上がる。


「ちょ、ちょっと待って!まだ起きたばかりなんだから準備くらいさせてくれ!」


 急いで身支度を終え、グレスを追って宿を飛び出した。




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