9くち 25
没落貴族-ゾール-。
自らのオフィサーの体力と相手オフィサーの体力を削り続け、破壊されると、今まで削った体力を元通りにするか、削った全ての体力をゾール出陣オフィサーに献上するレアソルジャー。
出陣オフィサーの体力をも削るリスクがあるが、払うリスクに対して大きなリターンを齎す。
攻撃ソルジャーとしては決して強くはない。しかし、その内に秘める能力は莫大で、オフィサー次第で没落した貴族を最盛させることが出来る。
ダンケが名前を重ねて今の彼になったように、ゾールも変化を重ねて強くなるソルジャーだ。
マシューには扱い切れなくてコレクションに加えたカードを、バートは一番最初にデッキに加えた。
「そういえばさ、どうしてあいつの両親は、捨てた息子に"ありがとう"なんて名前をつけたんだろうな」
アメリカのプロテスタントバプテスト派の牧師である、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、通称・キング牧師曰く、「闇で闇を追い払うことはできない。光のみがそれを成し得る。憎しみで憎しみを追い払うことはできない。愛のみがそれを成し得る」
更に、フランスの皇帝、軍人、政治家である、ナポレオン・ボナパルト曰く、「死ぬよりも、苦しむほうが勇気を必要とする」
マシューは最後のカードを、デッキの一番上に積んだ。
最後に。
人間は"報酬系"と呼ばれる神経系に大きく支配されている。
報酬系とは、報酬を得た時や欲求を満たした時(褒められたり物品を貰ったり休暇を得たり)、または報酬が得られると分かった瞬間に活性化し、その人に快楽を与える脳の神経系のことで、これが人間の行動決定に重要な役割を果たす。
快楽を得られる行動に積極的になり、報酬を得ることで心身ともに良い影響が現れるのだ。
逆に、過度、長期的な苦痛を受けた時、脳はダメージを受け正常に機能しなくなり、萎縮する。
虐待や虐めを幼少期から受けてきた人々は、通常より一回りほど脳が小さい可能性がある。そのような人々は共感性に欠け、対人関係に問題を起こしやすく、社会に適応するのが難しくなる。
現代社会で言われる「心の病」とは、正確には「脳のダメージによる萎縮、機能不全」を指す。「脳の傷」なのである。
幼少期から脳に傷を負った人は、他人を傷つける方法を学び、それを反面教師にすることがあれば、心を完全に閉ざすこともある。
そして時に、"連鎖"の傾向もある。
"愛情"もまた然りである。