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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
8くち「一人暮らし万歳!土に植えた家族愛!!」
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8くち 12

 

「全ての名前だ、パトリック・パトリオット!」

「はぇ?」

「私が全ての名前だ、パトリック・パトリオット!パート、ないしピーピーとして!」

「はぁ?」



 女子高生だけではなく、隣にいたマシューすら呆気に取られて、素っ頓狂な声を上げていた。

 黒髪と金髪の男女四人組の中で、くすんだ金髪の男一人だけが得意げだった。

 その中ですぐに行動を起こしたのはマシューだった。目をぱちくりさせている女子高生が可哀相で、バートの肩を人差し指で小突く。

 バートがこちらに耳を傾けるので、顔を近づけて耳打ちする。



「なにを言おうとしてんの?」

「俺の名前はパトリック・パトリオット。パート、もしくはピーピーと呼んでほしい。バートラントとは別人だって言うつもりだ」



 バートが女子高生に振り返る。


「パートしなさい。二名はどこを行きますか?私が二名がヘンタイアニメストアのっ」


 話し始めるバートの耳をひっつかんでまたこちらに顔を向かせる。



「なんで」

「巡り巡ってお前の迷惑に繋がる気がした。だから、彼女たちには悪いが、本人だと明かすつもりはない」



 顔を離して、眼前の女子高生らが「もしかして間違えたのかな。そっくりさん?」「間違うはずないもん。ドラマ何周したと思っているの?それに、バートラントは特徴的なアホ毛をしていて、ハミングバード賞を三回連続で受賞しているのよ!私、彼が受賞する姿を見る為に応募しまくって渡米して、親に三十万借金があるの!実際に彼を見たことがあるんだから!三十メートルくらい距離があったけど、バートラントの半径一キロに入ったことがあるのよ!この美丈夫は絶対バートラント!」と言い合いをしているところに、マシューは声をかけた。


 なんだか話しかけづらかったけれど、捲し立てている女子高生が言い終えるや否や、すかさず「あの」と割り込んだ。

 二人とも同時にこちらを向くと、マシューを真剣な面持ちで見つめる。

 二人の黒曜石ともブラックホールとも言える瞳は確信と好奇に満ち満ち、光を反射して煌めき、宝石のようでもあり、宇宙のようでもあった。

 しかし情熱的過ぎて、少々怖くもあり。

 隣で「あとはマシューが説明してくれるだろう」と期待して待機しているバートを横目で見て、



「本人です」



 と思わず言ってしまった。


 女子高生たちの顔はみるみる内に歓喜に染まり、飛び跳ねて悲鳴にも近い声を上げた。

 しかしあまりに興奮し過ぎている為か、大声にならずヒューヒューと虫の息になっていた。

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