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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
8くち「一人暮らし万歳!土に植えた家族愛!!」
63/270

8くち 10


 バートがカードスリーブに収められたレアカードをフックから取ろうとする。

 しかしマシューは、その手を掴んで下げた。



「どうした?」



 こちらを不思議そうに見つめるバートに、しばらく黙り込んで、マシューは小さな声で言った。

 本当に欲しいものがあるなら、申告が恥ずかしくても、何が何でも、手に入れる。

 それがマシューにとっての"好き"だった。

 決して申告するのが恥ずかしいカードなのではなくて、自分とこのカードが似つかわしくない気がして恥ずかしいのだ。



「そっちじゃなくて、こっちのにして」



 マシューが指差したのは、可愛らしくて目つきの鋭い魔法使いの女の子が描かれたカードだった。バートが取ろうとしたカードより印字された数字は低かったけれど、愛嬌はこちらの方がありそうだ。

 しかも先ほどのカードと比べたら少し安い。ならもう一枚買ってやると言うと、マシューは目を丸くして、喜んでいるのか困っているのか判別のつかない顔をして、その魔女のキャラクターの隣にある、魔女と似たような外見ではあるものの、儚げな雰囲気を纏う女性のカードを指差した。

 やはりバートが取ろうとしたカードよりも数字は低かったし安いけれど、マシューが欲しいものがこちらなら、先ほどのカードはもうバートにとってはどうでもよい存在だ。



ウィッチ(魔女)メイデン(処女)と、手に持っているパックも買おうか?」



 マシューが両手に持っているパックをバートが指差す。マシューも自分の手にある商品を見下ろして、しかしそれを自分の方に寄せてバートを睨んだ。



「いい。これは自分で買う。生活費はバートが持っても、趣味代は個人で持つって話だったし。例外なのはその二枚だけ」


「そっか」


「うん。……ありがとう、バート」



 とても久しぶりに、弟に、心からの「ありがとう」を言われた。


 マシューはこの店の店主とも知り合いらしく、挨拶と雑談を少しばかり楽しんで会計を済ませた。

 袋に入れてもらわずに、買ったばかりのレアカードを渡すと、マシューはそれを両手で受け取って、バートが今まで見たことがないような顔をして喜んだ。


挿絵(By みてみん)


 夕食に大好物が並んだか、起きたら靴下にプレゼントが入っていたか、サプライズの誕生日パーティーを仕掛けられたか。

 とにかく、幸せそうな顔をしていた。

 その顔が見たかったバートも幸せだった。

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